2020年6月30日火曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題9の解説

問1 「移住後の生活」のメンタル・ヘルスに関する記述として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚カルチャーショック〛P248~


この問題はカルチャーショックに関わるものだと思われますが、正直言って、正解の根拠がどこにあるのか分かりませんでした。


1 一般的に思春期の人と高齢者は異文化不適応を起こしやすいとされています。このことについては、以下の通り赤本にもしっかり記載してあります。


(赤本P324からの引用)
異文化に接触する人の中には、適応がうまくいかずに異文化に拒絶反応を示す人も多い。カナダ移住者の異文化適応を調べた研究報告では、「適応の遅い老年層、文化的自己同一性の危機から非行などに走りやすい思春期世代、主婦」が最も異文化不適応を起こしやすいとしている。このようなグループをハイリスクグループと呼ぶ。
よって、選択肢1の内容は適当ではありません。


2 正解は2とのことですが、この内容を正解とする根拠、データの出所がどこにあるのか分かりません。きっと、日本語教育に携わる者は目を通しておかなければならないと考えられている出版物やウェブサイトに掲載されているものなんでしょうけど・・・・。

ちなみに赤本では、カルチャーショックに関する記述の中で「ショック期がいつ始まるかは個人や状況によって異なる。ハネムーン期がどのくらい続き、いつショック期に移行するかは個人差がある。また、安定期に達しても、再びショック期に戻ることもある」(赤本P249)としか言及されていません。

3 この選択肢もビミョーな内容だと思います。「(移住後の生活に)適応しにくい」という内容はメンタルヘルスに関係する内容なのかどうか・・・・。たとえば、「自分と同じ文化のコミュニティに接触できる環境にある人は、地域のコミュニティには適応しにくいが、精神面では危機に陥りにくい」という言い方もできる気がするので、そういう理解でいいのかどうか・・・・

4 たとえば、その国の歴史とか宗教とか社会体制とか言語とか物価とか価値観など、事前に調べられるものは調べてから行った方が、何も準備しないで行く人より、移住後に受けるショックや精神的ストレスも少なく、挫折しにくくなるのではないかと思いますが、

移住後に対応すればいいと考える人は細かいことを気にしない楽観的な性格であって、事前に入念に準備する神経質で心配性の人より、問題に直面してもフレキシブルに対応できるから挫折しにくい、と考えることもできるのではないかと・・・・


ということで、正解は2ということです。


検定試験の問題になっているということは、選択肢2が正解となる科学的な根拠があるのだと思いますが、それがどこにあるのか(載っているのか)分かりませんでした。


誰か分かる人がいたら、教えてください。


☞超重要絶対暗記 《カルチャーショック》
⦿カルチャーショック:異文化と接触したとき、自文化との違いに衝撃を受けること。衝撃を受けたあと4つの段階を経て、新しい習慣が受け入れられるようになるとする。
 ハネムーン期:異文化接触の初期段階。景色や食べ物など何もかもが新鮮で、高い期待感と希望に満ち溢れている心理状態の時期。
 ・ショック期:ハネムーン期の興奮状態がおさまってくると、新しい文化や習慣に敵対心を持ったり、期待感が失望感に変わり焦燥感などにかられる状態の時期。
 ・回復期:ショック期の落ち込みを克服し、新しい文化や習慣に順応していく時期。
 ・安定期:新しい文化や習慣を受け入れ、精神的にも安定し異文化理解が進む時期。




問2 (マズローによる)「最も高次の欲求」として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P326「図4-1-3 マズローの欲求5段階説」


マズローの欲求五段階説についての問題です。欲求五段階説は、日本語教育のみならず、アカデミックのあらゆる分野において頻出する超重要事項なので、ご存知でなかった方はこれを機会に覚えておくといいと思います。


問題文にある通り、マズローは、人間の欲求について階層を持つものとして理論化し、下位の欲求が満たされると高次の欲求につながるとしました。その階層数は5つで、下から「生理的欲求」、「安全欲求」、「所属・愛情欲求(社会的欲求)」、「尊敬・承認欲求」となり、最も高次の欲求が「自己実現の欲求」であるとしています。

もう少し具体的に説明すると、人間にはまず人が生きていくうえで欠かせない「食べたい」「飲みたい」「寝たい」などの生理的欲求があって、それが十分に満たされると、「健康でいたい」「安全・安心な暮らしがしたい」という安全欲求が生じ、安全欲求が満たされると今度は、人との繋がりによって得られる仲間意識、帰属意識からくる精神的な安心感(社会的欲求)を求め、そうすると他者から認められたいという尊敬・承認欲求が芽生え、最終的には、あるべき自分になりたいという自己実現欲求につながっていくというものです。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《マズローの欲求五段階説》
⦿マズローの欲求五段階説:マズローは、人間の欲求について階層を持つものとして理論化し、下位の欲求が満たされると高次の欲求につながるとした。その階層数は5つで、下から「生理的欲求」、「安全欲求」、「所属・愛情欲求(社会的欲求)」、「尊敬・承認欲求」となり、最も高次の欲求が「自己実現の欲求」であるとした。




問3 「防衛機制」の一つである「合理化」の例として適当なものを選ぶ問題


防衛機制」という難しい用語が出てきますが焦る必要はありません。こういう難しい用語に関する問題は文脈から論理的に考えれば解けるようになっています。「『防衛機制』という言葉を知っていないとダメ」というように、ただ単に知識があるかないかだけを問う問題にしていないところが、日本語教育能力検定試験のいいところだと思います。


問題文を読んでみると「現実世界と欲求の間には『葛藤』が生じやすい。それに対して心の安定を保とうとする働きが『防衛機制』である」と記載されてあります。

つまり、防衛機制とは、「現実世界と欲求の間に生じた葛藤に対して、心の安定を保とうとする働き」です。

で、問3の設問によれば、その一つが「合理化」ということですから、設問を以下のように読みかえれば分かりやすいのではないでしょうか。

「現実世界と欲求の間に生じた葛藤に対して、合理的に心の安定を保とうとする例ととして最も適当なものを選べ」


 1 日本語には漢字がある(「現実世界」)から、漢字を読みたい(「欲求」)けど、漢字が読めないという「葛藤」に対して、「会話において漢字は関係ないから大した問題ではない」と合理的に考える(「合理化」)ことで、納得する(=心の安定を保とうとする)。合理化の例として適当だと思います。

2 好きなアニメキャラクターと同じ格好がしたいからした、というだけで、そこには「葛藤」も「合理化」も見出せません。

3 理想の先生像(「欲求」)と実際の先生(「現実世界」)との間の「葛藤」は見られますが、その不満を母親にぶつけたところで、「現実」と「欲求」の間のギャップが埋まるわけではないので、合理化とは言えません。この場合における合理化とは、たとえば、「でも、前の先生よりはマシだな」とか「ルールに関しては厳しいけど、宿題は少ないからいいか」とか、心の葛藤を軽減するための理由付けということになると思います。

4 日本語で良い点数を取りたいという「欲求」と、良い点数が取れないという「現実」との間に生じた「葛藤」に対して、英語で良い成績を取るという行為は、日本語の葛藤から目を背けるものであり、日本語について心の安定をもたらす「合理的」な行動とは言えません。


 したがって、正解は1になります。


💡解法のポイント
⦿赤本にも出てこないような超難用語に関する問題は、文脈から論理的に考えれば解けるように作られています。冷静に考えれば文脈から正解することができる問題がほとんどです。ですから、そのような超難用語を問う問題は、その用語を知らないがゆえに考えるのを諦めてしまった多くの受験者と差をつける絶好のチャンスなのです。




 問4 「(日本語教師は)留学生の心理的な混乱と不適応に対応する」ことの例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚指導と支援〛P186、〚学習者援助〛P254


 近年求められる教師のあり方は、「教える(教え込む)」という立場ではなく、学習者の学習活動を「支援する」という立場です。そしてさらに、「共に学ぶ」という考え方にシフトしてきています。

(赤本P186から抜粋)
具体的に必要な支援には、以下のものがある。
①学習支援
学習支援とは、学習者が満足できる授業を提供することである。学習者のニーズやレティネスを分析し、学習者の状況に合わせて授業内容をアレンジすることが必要である。
②生活支援
学習者が日本語学習により、自己実現できるような環境を提供することが必要である。
③教師の人間性がもたらす支援
教師と学習者が良い関係を築くことが学習者へ良い効果をもたらす。

1 睡眠薬をもらったとしても、根本的な解決にはなりません。まずは悩み事や困っていることがないかなど留学生と話をして、睡眠不足を引き起こしている心理的な混乱や不適応の原因を軽減してやることが大事なことでしょう。それでも解決しなければ精神科の受診を勧めるべきなのではないかとと思います。

2 なぜ病的な行動をとってしまうのか、その原因を究明し取り除いてやることが必要です。

3 心理的なトラブルは非常にデリケートな問題なので、まずは当たり障りのない基本的な質問などからその学生に心理的な混乱や不適応を来している原因を探る、という選択肢3の内容は適当だと思います。

4 国の両親に連絡しても、心配させるだけで両親がすぐにどうこうできる話ではないですよね。症状が軽ければ、その学生と話をするなどしてその原因を探り、症状が重ければ、精神科等に診てもらうべきなのではないかと思います。


したがって、正解は3になります。


☞超重要絶対暗記 《日本語教師の役割》
⦿近年の言語教育における教授者と学習者の関係は、「教える/教わる」という一方的な関係ではなく、教授者は学習者の学習活動を「支援する」、さらには教授者と学習者が「共に学ぶ」という関係にシフトしている。

教授者による学習者への支援には以下のものがある。
⦿学習支援:学習者が満足できる授業を提供すること。
⦿生活支援:学習者が日本語学習により、自己実現できるような環境を提供すること。
⦿教師の人間性がもたらす支援:学習者が教授者を信頼することによって(教授者と学習者が良い関係を築くことによって)、学習者の学習に良い効果をもたらすこと。




問5 「異文化カウンセリング」に関して、留学生から相談を受ける際の留意点として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚文化相対主義〛P255、P322


1 相談者の体験や異文化的な背景を、その相談者特有の事象として見なければ、その相談者が抱えている問題(の原因)に気付くことができないのではないでしょうか。

2 相談者は、その文化に馴染めず心理的な混乱を来している状態なので、相談者の発言や行動を共感的に受け入れる姿勢が必要だと思います。

3 留学生は日本語でうまく表現できていないことを想定し、言語化された言葉だけでなく、非言語的な印象にも注意を払うべきでしょう。

4 自身の持つ価値観を認識していなければ、相談者が抱える、価値観の違いから来る精神的な葛藤やストレスに気付くことはできないのではないでしょうか。しかし、自身の持つ価値観にこだわってその価値観を相談者に押し付けるようでは、相談者の精神的な苦痛を軽減させることはできません。相談者が苦しんでいる価値観の違いを認識したうえで、どの文化にも同じように価値があると考える(文化相対主義)姿勢が必要です。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《文化相対主義(カルチュラル・レラティビズム)》
⦿文化相対主義(カルチュラル・レラティビズム):文化には多様性があって、そこに優劣はないとする考え方。よって、他の文化の行動様式を自分の文化の基準で判断するのではなく、その文化の問題や機会などを考慮に入れて判断しなければならない。

⦿自文化中心主義(自民族中心主義、エスノセントリズム):自分の文化が最も優れているとする考え方。文化相対主義とは相反し、自分の文化の尺度で、他の文化を判断する立場。

2020年6月29日月曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題8の解説

問1 「内容言語統合型学習(CLIL)」の指導に関する記述として適当なものを選ぶ問題


内容言語統合型学習(CLIL)」について、赤本には記載がないので、日本CLIL教育学会ウェブサイトからの引用を以下に掲載します。

https://www.j-clil.com/clil

教科科目やテーマの内容(content)の学習と外国語(language)の学習を組み合わせた学習(指導)の総称で、日本では、「クリル」あるいは「内容言語統合型学習」として呼ばれ定着しつつあります。
​主に英語を通して、何かのテーマや教科科目(数学(算数)、理科、社会、音楽、体育、家庭など)を学ぶ学習形態をCLILと呼ぶ傾向があります。
CLILの主な特徴は、学習内容(content)の理解に重きを置き、学習者の思考や学習スキル(cognition)に焦点を当て、学習者のコミュニケーション能力(communication)の育成や、学習者の文化(culture)あるいは相互文化(Interculture)の意識を高める点にあと言えるでしょう。


また、東洋英和女子学院大学の笹島茂教授はCLILの授業に関して、以下のように述べています。非常に参考になるので一読することをおすすめします。

幼児の英語学習にCLILの考え方を取り入れる方法~東洋英和女子学院大学・笹島茂教授インタビュー~|【公式】「ディズニー英語システム」(DWE)|子供・幼児英語教材|ワールド・ファミリー

例えそれ(先生の英語)が訛りのある英語だったとしても、英語そのものを学ぶわけではなく、算数や生物など、それぞれの教科の知識が培われるならいいという考えです。
 
オーストラリアの日本語のイマ―ジョンクラスを見学すると、先生は日本語で話していて、子供たちは日本語も英語も話しながら算数の学習をしたり絵を描いたりしています。子供たちのなかでは日本語も英語も関係ないようでした。

イマージョンプログラムとCLILとの明確な境目はありません。
CLIL独自のプログラムというようなものも特にはありませんので、イマージョンプログラムはCLILの方法の一つと言えると思います。
ただ、CLILには、イマージョンプログラムのような「プログラムの何%以上英語でなければならない」「日本語は禁止」のような言語的に考えられた厳密さはありません。つまり、複数の言語が自然に交差していく場での学習がCLILと言えます。


CLILの考え方は違いのある言語や文化にどう対応し、共存するかということにも結びついています。人によって、あるいはシーンによって、自然と出てくる言葉を使えば、その言語が身につくだけでなく、言語の背景にある文化の理解や共感も進みます。CLILの大きなねらいはそこにあるのです。

決して無理や強制をせず、英語を学習言語だというふうに考えさせないということが大事です。英語は無理やり学習させられるものだという固定概念が子供の中にできてしまうと、英語が嫌いになってしまうリスクがあります。
幼児期に、ままごとやサッカーなど、遊びやスポーツを英語で行うのもとてもよいですね。英語は「学ぶもの」ではなく、コンテンツを楽しむために「使うもの」だという意識を刷り込んであげると、子供の英語力を伸ばすことにつながります。


1 CLILには、イマージョンプログラムのような「プログラムの何%以上英語でなければならない」「日本語は禁止」のような言語的に考えられた厳密さはないので、「学習者に母語や媒介語を使用させず」という部分が誤りです。

2 選択肢2は完全に語学の授業内容だと思います。CLILは、第二言語そのものを学ぶわけではなく、教科科目の知識が培われればいい、というものです。よって、選択肢2の内容は誤りです。

3 CLILには、イマージョンプログラムのような「プログラムの何%以上第二言語でなければならない」「母語は禁止」のような言語的に考えられた厳密さはなく、決して無理や強制をせず、第二言語を学習言語だというふうに考えさせないということが大事なので、選択肢3は適切な内容です。

4  決して無理や強制をせず、第二言語を学習言語だというふうに考えさせないということが大事です。第二言語は無理やり学習させられるものだという固定概念が子供の中にできてしまうと、英語が嫌いになってしまうリスクがあるので、CLILにおいて、学習者の言語的な間違いを、教師が一つ一つ訂正するという選択肢4の内容は適切ではありません。


したがって、正解は3になります。


☞超重要絶対暗記 《内容言語統合型学習(CLIL)》
内容言語統合型学習(CLIL)
⦿教科科目やテーマの内容(content)の学習と外国語(language)の学習を組み合わせた学習(指導)方法。
⦿CLILの主な特徴は、学習内容(content)の理解に重きを置き、学習者の思考や学習スキル(cognition)に焦点を当て、学習者のコミュニケーション能力(communication)の育成や、学習者の文化(culture)あるいは相互文化(Interculture)の意識を高める点にある。
⦿CLILには、イマージョンプログラムのような「プログラムの何%以上英語でなければならない」「日本語は禁止」のような言語的に考えられた厳密さはない。つまり、複数の言語が自然に交差していく場での学習がCLILと言える。
⦿CLILの考え方は違いのある言語や文化にどう対応し、共存するかということにも結びついており、CLILの大きなねらいは、言語の背景にある文化の理解や共感にある。
⦿決して無理や強制をせず、英語を学習言語だというふうに考えさせないということが大切。




問2 「ゴミとリサイクル」についての活動で用いる資料を選ぶ際の留意点として適当なものを選ぶ問題


1 「内容言語統合型学習(CLIL)」の目的は、第二言語の学習にあるのではなく、あくまでもその科目(この問題の場合は環境問題)を学ぶことにあります。誤解を恐れずに言えば、通常の科目の授業で、言語を第二言語に変えただけ、とイメージするのがいいのではないかと思います。あくまで外国語を第一目的とした授業ではないため、学習済みの語や文法云々は、CLILで用いる資料を選ぶ際の留意点としては適当ではありません。

2 学習者の興味が高まれば、学習内容の習得も促進されます。

3 環境問題が自分の身近に感じることができれば、学習者の興味や集中力も増すことでしょう。

4 リアルな状況を理解できれば、内容に対する学習者の関心は高まることでしょう。


したがって、正解は1になります。




問3 「スキミングのスキルを使って読む」例として最も適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P225


「スキミング」と合わせて覚えておかなければならないものに「スキャンニング」があります。
赤本には「スキャンニング」と「スキミング」について次のように書かれています。

(赤本P225から抜粋)
速読には、知りたい情報を探すスキャンニングと、おおよその内容や要旨をつかむスキミングがある。また、黙読の際に語順は変えずに、文章の端から意味的なかたまりごと意味を把握していくフレーズ・リーディングもある。速読は、多読(エクステンシブ・リーディング)につながる。

つまり、
スキャンニングとは、読解や聴解で、不要な部分を読み飛ばして/聴き飛ばして、知りたい情報、必要な情報をつかむ読み方/聴き方で、
スキミングとは、読解や聴解で、全体をざっと把握して大意をつかむ読み方/聴き方。


したがって、正解は2になります。


1 スキミングは「使われている文法や文構造を理解する」ためのスキルではありません。
3 スキミングは「意見文を事実と意見に分類する」ためのスキルではありません。
4 「必要な情報をできるだけ速く探す」のはスキャンニングです。


☞超重要絶対暗記 《スキャンニングとスキミング》
⦿スキャンニング:読解や聴解で、不要な部分を読み飛ばして/聴き飛ばして、知りたい情報、必要な情報をつかむ読み方/聴き方。
⦿スキミング:読解や聴解で、全体をざっと把握して大意をつかむ読み方/聴き方。




問4 「問題の要因を細分化して整理」するために使う思考ツールとして適当なものを選ぶ問題


この問題は、どちらかと言えば日本語教育というより、品質管理などの分析ツールに関する問題だと思います。


1 問題に対して影響を及ぼしていると思われる要因との関係を、魚の骨のような図に整理する手法がボーン図です。品質管理的には「特性要因図」という言い方の方が一般的です。また、蛇足になりますが、品質管理の世界では日本人の石川馨が発明したことでも有名です。海外では「フィッシュボーンチャート」や「Ishikawa Diagram」とも呼ばれているツールです。

2 同心円チャートの輪の広がりは、時間・距離・世代などを表わし、それらの広がりや経過、違いによる変化をとらえる手法です。

3 ベン図は、複数の事実、考え、意見などについて、共通点と相違点を整理する手法です。円の重なり合った部分が共通点となります。

4 ピラミッドチャートは、何かについて調べて発表するときに、集めた情報の中から大事な情報を抽出し、自分が主張すべきことを焦点化する手法です。最下段に集めたすべての情報を書き入れ、その中から大事な情報を2段目に書き入れ、最後に主張すべき内容をまとめて最上段に書き入れます。


したがって、正解は1になります。




問5 「問題や解決方法に関する自分の意見を書かせ」る活動における指導の留意点として適当なものを選ぶ問題


1 グループで話し合いを行ったことで、他の学習者の考え方にも触れることができます。それらの意見も踏まえたうえで、自分の意見をまとめれば、より説得力を持った内容にすることができるでしょう。

2 ⑧の活動の目的は、自分自身の意見を自由に書くことなので、「これまで出た様々な意見を整理させる」とする選択肢2の内容は適切とは言えません。

3 新しく学んだ言語形式を使えるようになることがこの授業の目的ではありません。言語形式に合わせた表現しかできなければ、それはもはや「自分の意見」とは言えないでしょう。

4 選択肢2と同様、⑧の活動の目的は、グループの意見(⑦の内容)を各自でまとめることではありません。グループとしてまとめた意見に縛られる必要はなく、自分の意見を自由に書くように指導する必要があります。


したがって、正解は1になります。

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題7の解説

問1 「プレゼンテーションを行う際の留意点」として適当なものを選ぶ問題


この問題はプレゼンのテクニックに関するものなので、日本語教育というよりも、大学や仕事でプレゼンをすることに慣れている人にはそんなに難しくない問題だと思います。


1 制限時間を超過しそうな場合は、スピードを上げて全てを伝えようとするのではなく、重要度の低い箇所をとばし、主張したい大事な部分の時間を確保するようにすることが大切です。

2 プレゼンテーションの大まかな内容や話の展開が分からなければ、聞き手は落ち着いて聞くことが出来ません。最初に概要や構成を伝えることは、聞き手の理解を助けるためのプレゼンテーションの重要なテクニックと言えます。

3 強く主張したい部分は、声のボリュームを上げる、ゆっくり話すなど声のトーンやテンポを変え、抑揚をつけて話すことが大切です。

4 プレゼンテーションの内容が聞き手に伝わらなければ意味がありません。できるだけ分かりやすい言葉を使用することが大切です。


したがって、正解は2になります。




問2 「ルーブリック」に関する記述として適当なものを選ぶ問題


ルーブリックに関して赤本には記載されていませんが、重要ワードなのでインターネット検索などで、その内容を把握しておきましょう。




1 ルーブリックは、評価の項目ごとに達成度レベルをチェックする配点表であり、ルーブリックを用いた評価をパフォーマンス評価とも言います。よって、選択肢1の内容は適当と言えます。

2 これは項目応答理論に基づくテスト形式のことを言っているものと思われます。

3 ルーブリックは、評価の項目ごとに達成度レベルをチェックする配点表であり、各項目にコメントを書く欄はありません。

4 ルーブリックは、自由記述による評価方法ではありません。


 したがって、正解は1になります。


☞超重要絶対暗記 《ルーブリック》
(参考)ルーブリックとは?新しい学習評価の実態と評価表の作り方│Ritori

⦿ルーブリック:学習の達成度を表を用いて測定する評価方法。これまでのペーパーテストは、学習者が主体となって能動的に学習するアクティブラーニングの評価に適していないため、アクティブラーニングに適した新たな評価方法として近年注目されている。

ルーブリックの特徴
⦿ディスカッションやグループワークなどで学習する「技能」「表現力」「思考力」「判断力」といった実演でのパフォーマンスを評価できる。
⦿「興味・関心」「意欲」「態度」などの課題への取り組み姿勢を評価できる。
⦿評価する対象や内容に合わせて、評価基準と評価の項目数を調整することができるため、様々な学習の場に適した評価基準を設定することができる。
⦿学習者の評価基準を開示することで、学習者が「いま自分がどの項目をどれくらいできているのか?」という自己評価を実施しやすくなる。など




問3 「情報の示し方」として不適当なものを選ぶ問題


 この問題も、パワーポイントなどでプレゼン用の資料を作成するときのテクニックに関するものですが、板書などにも共通するところが多い内容です。


1 一つの文に多くの情報を盛り込んでも、聞き手が一度ですべての情報を把握することは困難です。よって、情報ごとに文を分けるということは「情報の示し方」として適当と言えます。

2 アニメーションや効果音には確かに聴衆を引き付ける効果がありますが、それらの多用は内容に対する聞き手の注意力を散漫にさせます。アニメーションや効果音を使用する場合は、強調すべき大事なところのみに使用するのが効果的と言えるでしょう。よって、選択肢2の内容は適当とは言えません。

3 出典の情報を示さずに、スライドの中で図や表を引用すれば、著作権法の侵害になります。よって、選択肢3の内容は適当と言えます。

4 スライドの文字数が多いと、聞き手は読むことに集中してしまい、発表者の声が耳に入らなくなってしまいます。スライドの文字数を減らし、読まなくても見てわかるスライドが理想的と言えます。よって、選択肢4の内容は適当と言えます。


したがって、正解は2になります。




問4 「プレゼンテーションの練習」の際に、学生が用いた表現とその言語現象の組み合わせとして適当なものを選ぶ問題

 📖赤本(第4版)関連箇所:〚「ら抜き言葉とさ入れ言葉」〛P71


1 「分かんない」は「分からない」の「ら」が撥音化したものであるため、この言語現象は「ら抜き言葉の使用」ではありません。

2 「いかれません」はもともとは正しい表現です。しかし、「れる/られる」には、自発、可能、尊敬、受身の意味があり、どの意味で使っているのか紛らわしいため、可能の意味を表わすときには、一般的には可能動詞の「いける(行ける)」を使用します。この可能動詞は五段活用の動詞から作ることができます。

一方、「ら抜き言葉」というのは、「食べられる」を「食べれる」、「着られる」を「着れる」としたものです。下一段活用の「食べる」や上一段活用の「着る」からは可能動詞をつくることはできないにも関わらず、可能動詞のように「食べれる」「着れる」と使ってしまうことが少なくありません。このように下一段活用や上一段活用の動詞を可能動詞のように使ってしまっている言語現象を「ら抜き言葉(の使用)」といいます。

よって、選択肢2は「ら抜き言葉の使用」ではないため、適当ではありません。

3 正しくは「終わらせようと・・・」であり、「終わらせようと・・・」と言う言語現象は「さ入れ言葉の使用」と言えます。

4 「分析させていただきました」が「さ入れ言葉の使用」だとすれば、正しくは「分析せていただきました」になってしまいます。


 したがって、正解は3になります。




問5 「質疑応答」に関して、発表者に対する指導として不適当なものを選ぶ問題


これもプレゼンテーションにおける質疑応答のテクニックに関する問題ですが、授業にのぞむ教師の姿勢にも共通する部分が少なくありません。


1 質問が出た際に、その質問に関するスライドをすぐに表示し、その内容を全員で共有できるできるようにする必要があります。よって、スライドの画面は消さずにつけておくことが適切と言えるでしょう。

2 分からないことを適当に答えてはいけません。よって、選択肢2は「質疑応答」に関する発表者への指導として適切と言えます。

3 考察が及んでいる内容に関する質問に対しては、簡潔に分かりやすく応答できるように、質問事項をあらかじめ予想し、回答や資料を準備しておくことが必要です。

4 どのような内容であれ、プレゼンテーションを初めて聞く聞き手が、その内容を一度で完璧に理解することは簡単なことではありませんし、聞き手はあらかじめ質問内容を準備しているわけでもありません。選択肢4の内容の通り、発表者には質問者の意図を読み取る謙虚な姿勢が求められます。


したがって、正解は1になります。

2020年6月28日日曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題6の解説

問1 「持っていきます」の「~ていく」と同じ用法の例として適当なものを選ぶ問題 


赤本には、細かい文法事項についてひとつひとつ載っているわけではないので、普段から日本語の意味や用法に関心をもつことが大切です。


(参照:松岡弘監修、庵功雄・高梨信乃・中西久美子・山田敏弘著『初級を教える人のための 日本語文法ハンドブック』(スリーエーネットワーク)P116-118)
「~ていく」の空間的用法:主体の移動
◆基本的に「(~て)いく」は話し手の発話時の位置から離れている遠心的方向性を持つ動作・出来事に対して使います。
◆「~ていく」は前に来る動詞の性質によっていくつかの用法に分けられます。
①「歩く、走る、泳ぐ、飛ぶ」などに「~ていく」が付いた「歩いていく」などの場合、「歩く」などは移動の様式を表します。
 (例)道が混んでいるから、バスを降りて駅まで走っていった。
②「着る、(靴を)はく、(眼鏡を)かける」など、特に身に着けることを表す動詞の場合、「~ていく」はこれらの動作の結果の状態を伴って移動することを表します。「持っていく」「連れていく」もこの用法であると考えられます。
 (例)今日のパーティーはどの服を着ていこうかしら。
③「食べる、買う」など一般的な動作を表す動詞の場合、「~ていく」は「食べる、買う」などの動作の後に生じた移動を表します。
 (例)昨日はパーティーに行く途中でワインを買っていった。

「~ていく」の時間的用法
◆「増える、変わる、(雪が)解ける」など変化動詞と共に「~ていく」を用いると、段階的な意味が出てきます。

下線部Aの「持っていきます」の「~ていく」は、「持つ」という動作の結果を伴って移動することを表しています。(空間的用法の②)


1 「散っていく」の「~ていく」は、「散る」という変化の段階的な様子を表わす、時間的用法と判断できます。(時間的用法)

2 「増えていく」の「~ていく」は、「増える」という変化の段階的な様子を表わす、時間的用法と判断できます。(時間的用法)

3 「連れていく」の「~ていく」は、「連れる」という動作の結果を伴って移動することを表しています。(空間的用法の②)

4 「食べていく」の「~ていく」は、「食べる」という動作の後に生じた移動を表わしています。(空間的用法の③)


したがって、正解は3になります。




問2 「自己評価をする」ことによって期待される効果として不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P238中段(ポートフォリオの目的としては・・・・)


自己評価に関して、赤本にはあまり記載されていないので、国際交流基金『日本語教授法シリーズ』ひつじ書房からいくつか引用しておきます。


(『日本語教授法シリーズ10 中・上級を教える』P117)
<活動のふり返り>
学習者自身に主体的に学習に取り組ませるには、活動の後で、活動に自分がどう関わり、それによって何を得たか、学習の過程を学習者自身にふり返らせることが重要になります。

(『日本語教授法シリーズ12 学習を評価する』P13)
自己評価チェックリストは「指導目的」を設定することです。同時に、チェックリストの項目は、学習者にとっては「学習目的」です。コースの始めに学習者がこのような自己評価チェックリストを記入することで、教師と学習者が目的を共有することができます。学習者がこのようなチェックリストにそって、「いまの自分には何ができて、何ができないか」「目標を達成するためには何が必要か」で自分で考える習慣をつけることは非常に大事です。

(『日本語教授法シリーズ12 学習を評価する』P117)
ポートフォリオ評価を導入することで、学習者は(いつも評価されるのではなく)自分が評価の主体であることを学びます。ポートフォリオ評価を長く続けることで、学習者は自分の能力や学習を客観的に見られるようになり、学習の結果に自分で責任を持つ態度も生まれることと思います。つまり、ポートフォリオ評価は、学習者の成長を測る「ものさし」を学習者自身の中に育てることだと言えます。

1 自己評価で重要なのは、学習者が自分自身の学習をふり返ることであり、他者との比較ではありません。よって、「他者との達成度の違いを認識できる」とする選択肢1の内容は不適当と言えます。

2 学習者が自己評価を行い、活動をふり返ることで自分の苦手なところを自覚できれば、それを学習目標にすることができるでしょう。よって、選択肢2の内容は適当と言えます。

3 学習者が自己評価を行い、活動をふり返ることで自分ができるようになったことを自覚できれば、次の学習への意欲を高めることができるでしょう。よって、選択肢3の内容は適当と言えます。

4 学習者が自己評価を行い、どれだけ学習目標を達成できたか活動のふり返りを行うことで、目標に対する意識が高まり、目標に向かって頑張ることができるようになるでしょう。よって、選択肢4の内容は適当と言えます。


したがって、正解は1になります。




問3 「教案」作成上の留意点として不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P214~


1 授業時間内で授業目標が達成できるようにするためには、目標から逆算して、各活動の時間を分単位で決めておくことが大切です。赤本P215の「図2-1-12 教案の冒頭部分の例」の「経過時間」を見ても、「30秒」「2分」「5分」と分(もしくはそれ未満)の単位で作成されていることが確認できます。

2 活動が、授業目標とつながりのないものだったら、授業目標を設定する意味がありません。まず、授業目標を設定し、その目標を達成するためにはどのような活動にすればいいかを考えて、授業を組み立てることが重要です。

3 自由な発話といっても、授業の内容と全然関係のない話をしていたのでは授業目標の到達はできません。教師は、学習者から、授業内容・テーマに沿った自由な発話を引き出せるように、学習者の発話を事前に想定しておくことが必要です。したがって、「学習者の発話は事前に想定しないようにする」という選択肢3の内容は、教案作成上の留意点として不適当と言えます。

4 これまでの授業の学習内容と関連性を持たせ、既習知識に新しい知識を加えることにより、学習者が、自身の表現の幅の広がりを実感できるようにすることが大切だと思います。


したがって、正解は3になります。




問4 「こうした活動(<資料>の活動)では目標の達成が難しい」理由として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚スキーマ(背景知識)〛P213「図2-1-11 中級レベル授業例」、P224「聞く技能の指導(受容)」、P274「2 言語理解の過程」、〚自動化〛P273欄外※9、〚インターアクション仮説〛P294


1 「スキーマ」とは、言語処理の方法のひとつであるトップダウン処理において、予測や推測を行う上で必要とされる、理解対象の周辺的な情報や背景知識のことを言います。


(赤本P224から抜粋)
聴解のプロセスには、(中略)背景知識や文脈・場面・挿絵などを手がかりに予測や推測をして仮説検証をする聞き方のトップダウン処理(中略)がある。 

(赤本P274から抜粋)
トップダウン処理では、理解対象の周辺的な情報(文章のタイトルや挿絵、会話の相手の表情や場の状況など)から、予測や推測を行い、次の理解過程でその仮説検証を行い、それが正しかったかどうかの照合(マッチング)を行う。

会話の聴解であってもスキーマの活性化は可能ですので、選択肢1の内容は適当ではありません。

2 「~てきます」は課題の遂行には必要ない文型であるため、この授業では取り上げる必要はないと思います。授業内容とは関係のない事項を教えることは、学習者を混乱させる原因となるため、教える内容は授業目標を達成させるために必要な最低限度の事項にとどめることが望ましいと言えます。

3 「言語処理の自動化」に関して赤本には以下の記述があります。


(赤本P273から抜粋)
第二言語を流暢に使うために、記憶の中の情報を努力なしに思い出せるようにすること。

言語の自動化を促すためには、言語を実際に運用する必要があり(手続き的記憶)、モデル会話の記憶(宣言的記憶)では、言語処理の自動化は促進されません。よって、選択肢3の内容は適当ではありません。

4 「インターアクション」とは、“言語を用いた他者とのやりとり”のことで、近年では、言語習得はインターアクションを通じて促進されるという考え方が一般的です(ロングのインターアクション仮説)。したがって、発表のあとに、学習者同士でペアになって授業の振り返りを行うなど、やりとりの機会を多く作ることが重要と言えます。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《スキーマ(背景知識)》
⦿スキーマ:言語処理の方法のひとつであるトップダウン処理において、予測や推測を行う上で必要とされる、理解対象の周辺的な情報や背景知識のこと。


☞超重要絶対暗記 《言語処理の自動化》
⦿言語処理の自動化:第二言語を流暢に使うために、記憶の中の情報を努力なしに思い出せるようにすること。


☞超重要絶対暗記 《インターアクション》
⦿インターアクション:、言語を用いた他者とのやりとりのことで、近年では、言語習得はインターアクションを通じて、お互いに意味交渉することで促進されるという考え方が一般的となっている。




問5 「改善方法」を考える際の留意点として適当なものを選ぶ問題


1 授業がうまくいかない原因がどこにあるのか分からないのであれば、問題解決のための観点を一つに絞るべきではないと思います。考えられるあらゆる観点から検討することが必要です。

2 自分が取り組めないほど多くの課題を設定しても意味がありません。重要なことは量ではなく、重要性や緊急性がより高い課題を設定し優先的に取り組むことです。

3 学習者の多様化が進む近年において、すべての学習者に共通する改善・解決方法を見つけることは困難と言えます。社会や言語教育観はもとより、学習者のニーズレディネス、学習者の人数等に合わせた解決を試みる必要があります。

4 問題がどこにあるのか特定できなければ適切な解決策を講じることはできません。よって、どこに問題があるのか具体的に考えることは解決方法を見つけるための第一歩と言えます。


したがって、正解は4になります。

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題5の解説

問1 「ウォームアップ」の方法とその目的として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P210


赤本には、ウォーミングアップ(ウォームアップ)に関して、「出席状況」「雰囲気作り」「前回の復習」という記載しかされていませんが、これだけでもウォーミングアップが本格的に授業に入る前の段階であることが分かると思います。

選択肢1の「新出の語彙」や選択肢2の「目標の学習文型」はウォーミングアップの内容として適当ではありません。

また、ウォーミングアップは「雰囲気作り」でもあるため、選択肢3の「誤用を引き出」したり「明示的な訂正」や「注意」することも適当ではありません。

選択肢4の「復習」「練習」「緊張を和らげる」という内容はウォーミングアップとして適当だと言えます。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《ウォーミングアップのポイント》
⦿出席状況:その日の学習者やクラス全体の状況を把握し、スムーズに学習に入って行けるように、学習環境を快適な状態に整えること。
⦿雰囲気作り:挨拶や日常に関する簡単なやりとりなどで学習者をリラックスさせる。
⦿前回の復習:前回までの復習を兼ねたQ&Aやその日の学習内容に関連した話題の提供などにより、指導項目の導入に繋げていく。


なお、選択肢2に関しては、問題文を読むと「ウォームアップを行い」の後に、「文型導入に移る。続いて、反復練習拡張練習などの基本練習を行う」とあります。「目標の学習文型を使った文を復唱させ」ることは、基本練習である反復練習に当たります。よって、選択肢2はウォームアップの後の活動内容であり、ウォーミングアップの内容として適当ではないことが分かります。

💡解法のポイント
⦿問題文に答えやヒントが書いてあることが少なくありません。選択肢で迷ったら問題文に戻ってみることはとても有効です。




問2 「文型導入」を行う際の留意点として不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚指導と支援〛P186


1 選択肢1の考え方、教師の姿勢は、「文型導入」だけに限ったことではありません。近年の外国語教育は、「やりとり」を通じて「共に学ぶ」ことが重視されており、教師には「教える」から「支援する」側面が強く求められます。よって、選択肢1の内容は適切と言えます。

2 選択肢1とは全く逆の内容と言えます。教師が一方的に答えを「教える」のではなく、学習者が「やりとり」を通じて、答えを推測し、気付きを得ながら「共に学ぶ」ことが大切なので、選択肢2の内容は不適切と言えます。

3 語彙の意味がわからなければ、文型の意味や機能を理解することも困難です。「文型導入」の際は既習語彙を使用し、新しい文型だけに集中できるようにすることが大切です。よって、選択肢3の内容は適切と言えます。

4 新しい文型を覚えても、生活の中で使えなければ意味がありません。選択肢4の内容の通り、学習者が実際の生活の中で遭遇する場面を想定し、使えるようになることが重要です。よって、選択肢4の内容は適当と言えます。


したがって、正解は2になります。




問3 「拡張練習」の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P212「表2-1-7 パターン・プラクティス」


1  不完全な文を完全な文にする練習を「完成練習」と言います。また、「~ます」の形から「~てもらいました」の形に変えるような練習は「変形練習」と言います。よって、選択肢1は「完成練習」と「変形練習」を合わせた練習と言えます。

2 教師の質問に答える形の練習の仕方を「応答練習」と言います。

3 「買ってくれました」という文に、教師が指示した目的語や主語、修飾語などを徐々に加えて文を長くしていく練習の仕方を「拡張練習(拡大練習)」と言います。

4 教師が言った文を「~てくれます」の形に変えているので、「変形練習」です。


したがって、正解は3になります。


☞超重要絶対暗記 《パターン・プラクティスの練習方法》
⦿模倣練習:モデルの文をそのまま繰り返す練習。
 例)教師「お茶を飲みます」→学習者「お茶を飲みます」
⦿変形練習:語句や文を指示された方法で変化させる練習。
 例)教師「お茶を飲みます」→学習者「お茶を飲みました」
⦿代入練習:文中の語句を入れ替える練習。
 例)教師「お茶を飲みます。コーヒー」→学習者「コーヒーを飲みます」
⦿拡張練習(拡大練習):文を徐々に長くしていく練習。
 例)①教師「飲みます」→学習者「飲みます」
         ②教師「お茶」→学習者「お茶を飲みます」
         ③教師「朝」→学習者「朝、お茶を飲みます」
⦿結合練習:複数の文を1つにまとめる練習。
 例)教師「お茶をいれました」「お茶を飲みました」→学習者「お茶をいれて、飲みました」
⦿完成練習:不完全な文を完全な文にする練習。
 例)教師「お茶を入れて・・・・」→学習者「お茶をいれて、飲みました」
⦿応答練習:指示された文型を使って質問に答える練習。
 例)教師「朝、何を飲みましたか?」→学習者「お茶を飲みました」


📡関連する過去問
2018年度(平成30年度) 試験Ⅰ問題6 問3
https://kenteigoukaku.blogspot.com/2020/07/2018306.html





問4 「応用練習」を行う際の指導上の留意点として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚ロールプレイ〛P192、P223、〚情報差〛P192、P223


1 導入した文型だけで日常会話を成り立たせることは難しいので、「運用能力を高める」ための応用練習では、既習文型も組み合わせた一連の会話の(流れの)中で運用できるようにすることが大切です。よって、選択肢1の内容は適切と言えます。

2 「モデル会話を繰り返し復唱させ」るのは、反復練習であり基本練習です(問題文4-5行目)。「運用能力を高める」ための応用練習の指導内容として適切とは言えません。

3 「役割や場面を設定して行う活動」(=ロールプレイ)は、言語をどのように使うかという運用能力を身に付けるためには有効な練習方法とされ、コミュニケーションを重視した教授法である「コミュニカティブ・アプローチ」にはロールプレイが取り入れられています。

そもそも、「本物のやり取り」でなければダメなのであれば、教室の外に出て、実際に見知らぬ人に道を尋ねたり、家電量販店に行って店員と値段交渉するなどしなければならないことになってしまい現実的ではありません。よって、選択肢3の内容は適切とは言えません。

4 「情報差(インフォメーション・ギャップ)」とは以下の通りです。

(赤本P223からの抜粋)
情報差(インフォメーションギャップ)
 自分は知らないが相手は知っている、ないし相手は知らないが自分がしっていることを伝えたいときは、互いに情報差がある。

簡単に言うと、情報差とは、自分が知らない相手のこと、もしくは、相手が知らない自分のことです。たとえば、「〇〇についてどう思うか」などのように人の考えとか気持ちとか。

現実のコミュニケーションには「情報差」が存在しています。ですから言語の運用能力の向上のためには情報差を埋めるタスクが必要です。「コミュニカティブ・アプローチ」でロールプレイを取り入れているのは、ロールプレイが「情報差」を利用した活動だからです。


したがって、正解は1になります。


☞超重要絶対暗記 《情報差(インフォメーション・ギャップ)》
⦿情報差(インフォメーション・ギャップ):自分は知っているが、相手は知らない情報があるとき、情報差があるという。


☞超重要絶対暗記 《ロールプレイの重要要素》
モロウが挙げるロールプレイの重要要素は以下の通り。
⦿情報差(インフォメーション・ギャップ)
⦿選択権:言いたいことをどのように言うか(語彙、表現、機能など)を自分で決められること。
⦿反応




問5 授受表現の誤用の記述として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚授受表現〛P69~


授受表現」というのは、「あげる(やる)」「くれる」「もらう」を使った表現のことです。立場や視点の違いによって、適切な動詞が決まります。

授受表現の誤用というのは、3つの動詞の用法が理解できておらず、「あげる」と言うべきところを「くれる」と言ってしまったり、「もらう」と言うべきところを「くれる」と言ってしまうような間違いのことを言います。


で、正解は2ということですが、正直、私にはなぜ正解が2になるのか分かりません。


ヒューマンアカデミーやアルクなども選択肢2を正解としているため、私が間違っているんだとは思いますが・・・・誰か分かる人がいたら教えてください。


ちなみに、私は以下のような理由で正解は4だと考えています。


まず、選択肢1の「東京にもやっと春が来てもらった」を正しい文に直すとすれば、「東京にもやっと春がきてもらったきた」となるでしょう。授受表現を使った文に直すとすれば、「東京にもやっと春がきもらったくれた」となるでしょうか。しかし、このように直すと、発話者の言いたいこととはまったく違う内容になってしまうので適切な直し方とは言えないでしょう。

いずれにしても、授受動詞が補助動詞として使われる場合、恩恵の授受を表わし、ガ格ではなく二格に用いられる語が人間である必要があります。


(赤本P70からの抜粋)
授受動詞が補助動詞として使われる時は、テ形に使われる動詞の動作が厚意をもって二格の人に行われたことを表す。「あげる」と「くれる」の制約は単独で使われる場合と同じで、「~てくれる」の視点も二格にある。

よって、「ガ格に用いられる語が人間ではないことによる誤り」という選択肢1は、誤用の記述として適当ではありません。


正解とされている選択肢2について。
正しくは「先生にお土産をおあげました差し上げました」と言うべきだと思います。「あげました」を謙譲語にする際に、一般的な謙譲語の作り方のルールを適用したことによる誤りと言えます。しかし、これはあくまでも、謙譲語の作り方の間違いであって、授受表現の文型に関する誤用とは言えない、というのが私が選択肢2を不正解とした理由です。

選択肢3については、正しくは「先生、明日休ませていただませんか」となるでしょう。これは、許可を求める際に使役形を用いたことによる間違いであり、授受表現の誤用ではありません。


選択肢4について。
正しくは「タクシーを呼んだらすぐに来てもらったくれた」となるでしょう。よって、「もらう」と「くれる」の授受表現の誤用と言えます。この正しい文は、「(私が)タクシーを呼んだら、(タクシーが)すぐに来てくれた」というように、前件と後件で主語が異なる文です。しかし、学習者は、後件の主語も前件と同じ「私」と思ったから、後件の動詞を、受け手が主語になる「もらった」にしたものと考えられます。よって、「前件と後件の主語が異なることによる誤り」という選択肢4は、誤用の記述として適当だと考えられます。


したがって、正解は4だと思うのですが、なぜ4が間違いで2が正解になるのか分かる人がいたら教えてください。


📡関連する過去問 (授受表現)2018年度(平成30年度) 試験Ⅰ 問題3D (19)
https://kenteigoukaku.blogspot.com/2020/07/2018303d.html

2020年6月27日土曜日

赤本P375最新データ 「国別状況」

赤本P375~ 国別状況(中国、インドネシア、韓国、オーストラリア、台湾、アメリカ)


 2015年度2018年度の調査で学習者数を国別で見ると、学習者数は1位が中国、2位インドネシア、3位韓国で変化はない。


中国
(P376)2015年度2018年度の調査では学習者数は95万人強100万人強で、2012年度2015年度に比べ8.9%減少5.4%増加している。

インドネシア
(P377)2015年度2018年度の調査では、学習者数は74.5万人70.6万人2012年度2015年度に比べ、14.6%減少5.2%減少している。

韓国
(P377)2015年度2018年度の日本語学習者数は、55.6万人53.1万人で前回の調査から33.8%減4.4%減大きく数を減らしている。

オーストラリア
(P378)2015年度2018年度の調査では、学習者数は2012年度2015年度から約20%増加13.4%増加して、35.7万人40.5万人となった。

台湾
(P378)2015年度2018年度調査では、学習者数は22万人17万人2012年度2015年度より5.7%減少22.7%減少している。

アメリカ合衆国
 2018年度の調査では、学習者数は2015年度から2.6%減少して、16.6万人となっている。


参考データ

国際交流基金「海外日本語教育機関調査」
https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2019/dl/2019-029.pdf

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題4の解説

問1 「述語の否定形の作り方」に関して、同じように活用する語の組み合わせとして適当なものを選ぶ問題


1 「知る」の否定形は「知らない」、「作る」の否定形は「作らない」ですが、「ある」の否定形は「ない」です。「あらない」とはなりません。よって、選択肢1は同じように活用する語の組み合わせとして適当ではありません。

2 「明るい」の否定形は「明るくない」、「悪い」の否定形は「悪くない」ですが、「いい」の否定形は「よくない」です。「いいくない」とはなりません。よって、選択肢2は同じように活用する語の組み合わせとして適当ではありません。

3 「楽しい」の否定形は「楽しくない」、「難しい」の否定形は「難しくない」ですが、「きれい」の否定形は「きれいじゃない」です。「きれいくない」とはなりません。よって、選択肢3は同じように活用する語の組み合わせとして適当ではありません。

4 「見る」の否定形は「見ない」、「出掛ける」の否定形は「出掛けない」、「できる」の否定形は「できない」です。いずれも「語幹+ない」で同じ活用となります。


したがって、正解は4になります。




問2 「応答表現『いいえ』の用法」に関する記述として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P226


1 真偽疑問文は「はい/いいえ」で答えられる疑問文のことですが、疑問詞疑問文は「~は何ですか」「~は誰ですか」「~はいつですか」「~はどこですか」「~はなぜですか」のように「はい/いいえ」で答えられない疑問文のことを言います。よって、選択肢1の記述は誤りです。


なお、真偽疑問文が「はい/いいえ」で答えられる疑問文ということは、真偽疑問文はクローズド・クエスチョンのイエス・ノー・クエスチョンで使われる疑問文ということです。ちなみに疑問詞疑問文はクローズド・クエスチョン以外の質問、つまり、オープン・クエスチョン、ディスプレイ・クエスチョン、レファレンシャル・クエスチョンで使われる疑問文となります。

せっかくなので、質問の分類についても確認しておきましょう。




☞超重要絶対暗記 《教師が発する質問(発問)の分類》
⦿クローズド・クエスチョン:答えの内容や答え方が限定される質問
 ・イエス・ノー・クエスチョン:はい/いいえで答えられる質問
 ・オータナティブ・クエスチョン:二者択一で問う質問
⦿オープン・クエスチョン:「どうしてか」「どう思ったか」など答えを自由に考えることができる質問
⦿ディスプレイ・クエスチョン:質問者があらかじめ答えが分かっている質問
⦿レファレンシャル・クエスチョン:質問者が答えを知らない質問


2 「行きますか?」「いいえ、行きません」や「行きませんよね?」「いいえ、行きます」のように、応答表現の「いいえ」は後続の応答が肯定文でも否定文でも使用できます。よって、選択肢2の記述は正しいです。

3 相手の質問に対する話題転換に使用するのは、「そんなことより」「それはそうと」などであり、「いいえ」は使いません。よって、選択肢3の記述は誤りです。

4 「いいえ」は、相手の質問に対する応答には使いますが、相づちには使わいません。よって、選択肢4の記述は誤りです。


したがって、正解は2になります。




問3 「否定の焦点」に関して、否定の焦点になっていないものを選ぶ問題


1 選択肢の文の後に続く文を考えてみましょう。「人は一人で生きているんじゃありません。多くの人と支えあって生きているんです」。つまり、否定の焦点となっているのは「人は」ではなく「一人で」の部分であることが分かります。

2 同様に後に続く文を考えてみると、「電車で大学まで通っているんじゃありません。バスで通ってるんです」。よって、否定の焦点が、通学手段である「電車で」の部分にあることが分かります。

3 後に続く文を考えてみると、「わざと間違えたわけじゃありません。わざとじゃないんです。信じてください」というように、否定の焦点が、否定の焦点が「わざと」にあることが分かります。決して「間違えた」ことを否定しているわけではありません。

4 後に続く文を考えてみると、「お金が欲しくて働いているわけじゃありません。困ってる人を助けたくて働いているんです」。よって、否定の焦点が、働く理由である「お金が欲しくて」の部分にあることが分かります。


したがって、正解は1になります。




問4 「二重否定の構文が持つ意味やニュアンス」に関する記述として適当なものを選ぶ問題


1 二重否定は、否定の否定なので、もはやそこに否定の意味はありません。よって「否定のニュアンスが強い」とする選択肢1の記述は誤りになります。

2 二重否定は、否定の意味を否定するものであり、強い肯定を表現するものではありません。
たとえば、問題文にある「楽しくなくはない」が「めちゃくちゃ楽しい」という意味にはならないことが分かると思います。よって、選択肢2の記述は誤りになります。

3 二重否定は、否定の否定なので、もはやそこに否定の意味はありません。よって、否定文よりも肯定文の意味に近いとする選択肢3の記述は適当と言えます。

4 二重否定は、否定の否定なので、もはやそこに否定の意味はありません。よって「否定の意味に近い」とする選択肢4の記述は誤りになります。


 したがって、正解は3になります。




問5 「導入した文型の否定文で単純に応答させると、返答が語用論的に適切でなくなることがある」例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚語用論〛P133~ 


1 この質問に否定文で単純に応答させると、「いいえ、ダメです」となります。文法的には間違いではありませんが、会話においては決して適切な応答とは言えません。実際の会話の中では「ちょっといま使ってるんで・・・・」とか「もう少し待ってもらえますか」とか「こっちのペンでもいいですか」などが適切な答え方なのではないでしょうか。よって、選択肢1は「返答が語用論的に適切でなくなる質問の例」として適切と言えます。

2 「(いいえ)大学生ではありません。高校生です」と単純な否定表現の応答でまったく問題ありません。よって、選択肢2は「語用論的に適切ではない」例とは言えません。

3 「(いいえ)ないです」と単純な否定表現の応答でまったく問題ありません。よって、選択肢3は「語用論的に適切ではない」例とは言えません。

4 「(いいえ)できません」と単純な否定表現の応答でまったく問題ありません。よって、選択肢4は「語用論的に適切ではない」例とは言えません。


したがって、正解は1になります。

赤本P375最新データ 「学習者・機関・教師の概況」

赤本P375 (※48)学習者・機関・教師の概況

  
 2015年度2018年度の調査では、海外の日本語学習者は365万人384万人に達した。日本語教育機関は約16,000機関18,000機関(正確には18,604)、教師は6.4万人強7.7万人強で、2012年度の調査に比べて、日本語教育機関数、教師数は増加しているが、日本語学習者は、やや減少している2015年度の調査に比べて、日本語学習者数、日本語教育機関数、教師数とも増加している。

 ※地域別の、機関数、教師数、学習者数の状況については、2018年度の調査結果にはまだ掲載されていない(2020年6月現在)ため、詳細は不明です。



参考データ

国際交流基金「海外日本語教育機関調査」
https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2019/dl/2019-029.pdf

2020年6月26日金曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題3の解説

この問題3は良くない問題だと思います。

なぜならば、




問題文のなかで様態副詞を、「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表す」と説明しています。


これは、「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表わさないものは様態副詞ではない」と言っていることと同じです。


しかし、三省堂の大辞林(第3版)には、様態副詞には「ぬるぬる」や「しばらく」、「わざと」、赤本(第4版)には「キンキン」、「つるつる」なども含まれると記載されています。

「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表す」ものではない、「ぬるぬる」や「しばらく」、「わざと」、「キンキン」、「つるつる」などが様態副詞だとすれば、

問題文の「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表す」という説明は間違いということになると思うからです。


問1 「事態の開始とともに発生し、修了とともに消えるさまを表わす」様態副詞の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚情態副詞〛P35


情態副詞(赤本P35からの抜粋)
主として動詞にかかり、動作や作用の様子を説明するものである。その様子を感覚的に音声化した擬態語や、音をまねた擬声語や擬音語、同じ音を繰り返す畳語に多く見られる。文法書によって、状態副詞様態副詞とも呼ばれる。

「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさま」というのは、「ぱちぱち」は、「手を叩く」という事態(動作)の開始とともに発生し、「手を叩く」という事態(動作)が終了するとともに消える(なくなる/終わる)ということであり、

選択肢の中でそれと同じような副詞は・・・・


1 「びしょびしょに濡れた」の「びしょびしょに」は、それがかかる動詞「濡れた」がある程度継続的な状態を表わすことからも分かるように、「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表わす」ものではありません。

2 「からからに乾いた」の「からからに」は、それがかかる動詞「乾いた」がある程度継続的な状態を表わすことからも分かるように、「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表わす」ものではありません。

3 「まるまると太った」の「まるまると」は、それがかかる動詞「太った」がある程度継続的な状態を表わすことからも分かるように、「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表わす」ものではありません。

4 「ちらちらと舞った」の「ちらちら」は、舞っている間だけの状態で、舞い終わると同時に「ちらちら」という状態は修了してしまうので、選択肢4は適切な例と言えます。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《情態副詞》
⦿情態副詞:主として動詞を修飾し、動作の変化の仕方、出来事の在り方を表す。状態副詞、様態副詞とも言われる。その様子を感覚的に表わす擬態語や、音をまねた擬声語や擬音語、同じ音を繰り返す畳語などに多く見られる。




問2 「漸次的な変化を表す動詞」の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚程度副詞〛P35


程度副詞(赤本P35からの抜粋)
述語が表す動作や状態の程度を表わす。程度副詞は、動詞や形容詞だけでなく、名詞や副詞を修飾するものがある。「きわめて」「とても」「たいへん」「ずいぶん」「かなり」「すこぶる」「多少」「わりと」「けっこう」「ずっと」など。

「漸次」とは、しだいに、だんだんとという意味なので、「漸次的な変化」とは、“時間をかけてゆっくり変化すること”なので、選択肢4の「痩せる」が最も適当と考えられます。

選択肢の1、2、3は、動詞の後ろに「瞬間」という語を付けることができる(「喜ぶ瞬間」「眠る瞬間」「生まれる瞬間」)ことからも、それぞれの動詞が「漸次的な変化」を表わすものではないことが分かります。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《程度副詞》
⦿程度副詞:述語が表す動作や状態の程度を表す。動詞や形容詞だけでなく名詞や副詞を修飾するものもある。「たいへん」「すごく」「とても」「きわめて」「ずいぶん」「かなり」「けっこう」「そうとう」「だいぶ」「もっと」「ずっと」「はるかに」「ますます」「いよいよ」「わりと」「多少」「すこぶる」「よけいに」など。




問3 「程度副詞様態副詞と共起する」例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P36「陳述副詞」


1 「どうか」は文末の「~してください」と呼応する陳述副詞です。

陳述副詞(赤本P36からの抜粋)
述語の陳述(文のまとまり)を表す。「肯定」「打ち消し」「推量」「仮定」「疑問」「比況」などの表現で、文末と呼応するのが特徴である。「きっと」「たぶん」「なぜ」「もし」「まるで」など。

なお、「ゆっくり」は、動詞「進む」と結びつく様態副詞だと思います。よって、選択肢1は程度副詞と様態副詞が共起した例ではありません。

2 「かなり」は「きっぱりと」を修飾する程度副詞だと思います。「きっぱりと」は「断る」にかかる様態副詞だと思います。よって、選択肢2は程度副詞と様態副詞が共起した例として適当だと思います。 

3 「けっこう」は「すぐに」を修飾する程度副詞だと思います。「すぐに」は様態副詞だと思いますが、問題文の説明(「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」)に沿って考えれば、「すぐに」は「事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」ものではないので様態副詞とは言えないことになります。よって、選択肢3は程度副詞と様態副詞が共起した例ではないということになります。

4 「だんだん」は様態副詞だと思いますが、問題文の説明(「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」)に沿って考えれば、「だんだん」は「事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」ものではないので様態副詞とは言えないことになります。

「ぽかぽか」も様態副詞だと思いますが、問題文の説明(「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」)に沿って考えれば、「ぽかぽか」は「事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」ものではないので様態副詞とは言えないことになります。

いずれにせよ、問題文の説明に従えば、両方とも様態副詞ではないことになるので、選択肢4は程度副詞と様態副詞が共起した例ではないということになります。


 したがって、正解は2になります。


☞超重要絶対暗記 《陳述副詞》
⦿陳述副詞:述語の陳述の仕方を表す副詞。「推量」「打ち消し(否定)」「仮定」「疑問」「比況」などの表現で、文末と呼応するのが特徴。たとえば、推量を表す「きっと(~だろう)」、打ち消し(否定)を表す「全然(~ない)」、仮定を表す「もし(~なら)」、疑問を表す「なぜ(~か)」、比況を表す「まるで(~ようだ)」など。




問4 「他の品詞から転成した副詞」に関する記述として適当なものを選ぶ問題


普段からどれだけ語彙の品詞や意味に関心を払っているかという問題ですね。


1 「図らずも」は選択肢1の記述の通り、動詞から転成した副詞のようです。
2 「さん然と」は、ナ形容詞「さん然」の活用形だと思います。
3 「とも」には接尾辞の用法はありますが、接頭辞の用法はなさそうです。
4 「たやすく」は、イ形容詞「たやすい」の活用形だと思います。


 したがって、正解は1になります。




問5 「雨が急遽降りだした」の「急遽」の誤用の要因として適当なものを選ぶ問題


1 マイナスのイメージの「雨」で使ったから間違えているというのならば、プラスのイメージの「晴れ」の文なら間違いではないということになります。しかし、「空が急遽晴れた」というのも正しい使い方とは言えません。つまり、誤用の要因はプラスマイナスのイメージとは関係ありません。

2 「急遽」は、硬い書き言葉だけでなく、普段の会話の中でも使う言葉だと思います。

3 この説明の通り、「急遽」は突然の事態に対応する様子を表わすので、「雨が降る」という文には使うことができません。

4 「急遽」は、突発的な様子を表わすもので、漸次的な変化を表わすものではありません。


したがって、正解は3になります。

2020年6月25日木曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題2の解説

問1 「東京方言」に見られる音韻現象として不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚複合語〛P113、〚連濁〛P109、〚音便〛P162、〚狭(母音)〛P418、〚母音の無声化〛P423


1 連濁とは、複合語の第二(後部)要素の先頭の無声子音が有声子音(濁音)に変化する現象をいいます。具体的には、「酒(さけ)」→「甘酒(あまけ)」、「紙(かみ)」→「厚紙(あつみ)」、「机(つくえ)」→「勉強机(べんきょうくえ)」など。

では「箱(はこ)」の場合はどうでしょう。筆箱(ふでばこ)、弁当箱(べんとうばこ)、空箱(からばこ)など、複合語の後部要素になったときいずれも連濁を起こしていることが分かります。よって、選択肢1の内容は適当と言えそうです。

2 「白くなる」が「白うなる」ということでしょうか。ならないので選択肢2の内容はは不適当だと思います。

3 狭母音とは、舌の位置が上あごに近い位置で出す音です。日本語ではイ[i]とウ[ɯ]が狭母音にあたります。「北(kita)」の無声音「k」と「t」に挟まれた「i」は無声音になる傾向があるため、選択肢3は適当と言えます。

参考までに。
(赤本P423からの抜粋)
音韻論的に見て母音があるところで、実際には(音声的には)声が出ていない(声帯振動がない)とき、その母音は「無声化された」という。ほぼ規則的に無声化されるのは、狭母音イ[i]、ウ[ɯ]を含む拍がアクセント核ではなく、以下の環境のときである。

・無声子音に挟まれている場合
 例:~ました[maɕita
・無声子音の後ろで、語末/文末(ポーズの直前)の場合
 例:お菓子[okaɕi]、~です[desɯ

 
 4 若い(wakai)→若けー(wake:)、あったかい(attakai)→あったけー(attake:)、ださい(dasai)→だせー(dase:)、くさい(kusai)→くせー(kuse:)、など選択肢4は適当と言えそうです。


したがって、正解は2になります。


☞超重要絶対暗記 《連濁》
⦿連濁:複合語の第二(後部)要素の先頭の無声子音が有声子音(濁音)に変化する現象。たとえば、「酒(さけ)」→「甘酒(あまざけ)」、「紙(かみ)」→「厚紙(あつがみ)」、「机(つくえ)」→「勉強机(べんきょうづくえ)」、「箱(はこ)」→「筆箱(ふでばこ)」など。




問2 「現在も進行中である長期的な歴史的変化」の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚日本語史〛P162,163、〚ハ行子音の変化〛P407中段※11、〚ラ抜き言葉〛P68,71


1 中古(平安時代)から動詞の活用は未然形連用形終止形連体形已然形命令形の6つで現在と変わらないので、「活用の型数の増加」を「現在も進行中の歴史的変化」とする選択肢1の内容は適当とは言えません。

2 ハ行子音は、ファ、フィ、フェ、フォという[Φ]音から[h]音に変化したと考えられていますが(唇音退化)、同様の変化が現在も進行中という事実はないのではないでしょうか。選択肢2の内容は適切ではないと思われます。

3 「られる」には、受身と可能と尊敬の3つの使い方がありますが、どの使い方をしているのか分かりづらいころがあります。しかし、ラ抜きの「見れる」にすると可能でしか使えなくなるので、区別がしやすくなります。受身形と可能形を分けるラ抜き言葉は一般的になりつつある現状を鑑みれば、選択肢3の内容は適当だと判断できるのではないでしょうか。

4 「イ列における二種の仮名の使い分け」とは「い」と「ゐ」のことを言っているのでしょうか。それとも「じ」と「ぢ」などのことを言っているのでしょうか。いずれにしても「現在も進行中である」という認識はないように思われます。


したがって、正解は3になると思います。


☞超重要絶対暗記 《ラ抜き言葉》
⦿ラ抜き言葉:Ⅱ型動詞と「来る」の可能形において、「ら」が抜けて使われること。たとえば、[生魚を食べられる]→[生魚を食べれる]、[昨晩はよく寝られた]→[昨晩はよく寝れた]、[今朝は早く起きられた]→[今朝は早く起きれた]、[来週は用事があって来られない]→[来週は用事があって来れない]など。




問3 「調音時の各部位の働き」に関して、子音の調音動作の説明として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚調音点〛P405~407、〚調音法〛P407~410


この問題は、五十音図のすべての音の調音点と調音法を把握していないと正解するのが難しい問題です。


1 「ひ」は、硬口蓋で狭めを作り、そこを呼気が通る時に摩擦が起き、気流が乱れて出る音(硬口蓋摩擦音)です。よって、選択肢1の説明は適当と言えます。

2 「や」は、硬口蓋に向かって舌を盛り上げ、硬口蓋と舌の間が、摩擦が起きない程度に狭めて出す音(硬口蓋半母音)です。よって、選択肢2の説明は適当ではありません。

3 「く」は、軟口蓋に後舌を接触させて閉鎖を作り、完全に呼気の流れを止めたあと、閉鎖を解放して息を一気に放出する音(軟口蓋破裂音)です。よって、選択肢3の説明は適当ではありません。

4 「ち」は、硬口蓋の前の方に舌を接触させて、そこで破裂と摩擦を同時に起こす音(硬口蓋破擦音)です。よって、選択肢4の説明は適当ではありません。


したがって、正解は1になります。


赤本のP407~「2.7 調音法」をよく読んで、それぞれの発音の仕方を理解しておきましょう。




問4 「負の転移」の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚転移〛P280、〚誤用/発音上の問題点〛P103、P414


負の転移」とは、第二言語の学習過程で第一言語や母語が影響を及ぼすことによって、第二言語習得の妨げになることを負の転移(干渉)と言います。
逆に、第一言語や母語が影響を及ぼすことによって、第二言語習得が促進されることを「正の転移」と言います。


1  この内容の通り、英語では[]の発音が語頭にくることはないようです。よって、英語母語話者が語頭の[]を[s]で発音してしまうのは「負の転移」と言うことができそうです。

2 シ[ɕi]は歯茎硬口蓋摩擦音、チ[t͡ɕ]は歯茎硬口蓋破擦音です。一方[ʃ]は硬口蓋歯茎摩擦音だそうです。なので、[ɕi]と[ʃ]は調音点の違い、[t͡ɕ]と[ʃ]は調音点と調音法の違いだと言えます。よって、「摩擦音と破擦音が弁別されない」(→調音法だけの問題)とする選択肢2の内容は適当ではないと思います。

3 スペイン語の母音は数も音も日本語と同じで「あえいおう」です。よって、「スペイン語には母音が三つしかない」とする選択肢3の内容は適当ではありません。

4 セ[se]は歯茎摩擦音、[ʃe]は硬口蓋歯茎(後部歯茎)摩擦音だそうです。よって、歯茎音と硬口蓋(後部歯茎)音の弁別がされないとする記述は適当と思われますが、これは中国語母語話者のことではなく、米国語母語話者についてのことなのではないかと思います。 


したがって、正解は1になります。


☞超重要絶対暗記 《転移》
⦿負の転移:第二言語の学習過程で第一言語や母語が影響を及ぼすことによって、第二言語習得の妨げになること。
⦿正の転移:負の転移とは逆で、第一言語や母語が影響を及ぼすことによって、第二言語習得が促進されること。




問5 「学習者が自ら発音の違いに気づけるように発音の区別の手がかりを示す」例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P411「図6-1-6 口腔内断面図での子音の調音点・調音法」


1 手で拍子を取って分かるのは拍の違いであって、発音の違いではないと思います。よって、選択肢1の内容は適当ではありません。ちなみに、「摂氏(せっし)」も「設置(せっち)」も3拍になります。

2 「ヒョー」も「ヒヨウ」の「ヒ」も両方とも有声音で、声帯の振動開始のタイミングも同じなので、選択肢2の内容は適当ではありません。

3 軟口蓋摩擦音である[x]に対し、両唇摩擦音である[Φ]は唇を小さく狭めて発音することから、「鏡で学習者の唇を観察させる」とする選択肢3の内容は適当だと言えます。

4 [u]と[ɯ]の違いは、円唇と非円唇の違いなので、鼻をつまむつままないは、[u]と[ɯ]の発音とはまったく関係がありません。よって、選択肢4の内容は適当ではありません。


したがって、正解は3になります。

赤本P369最新データ 「在留外国人の数」

赤本P369 (※30)在留外国人の数

日本における在留外国人の数は、1970年代は80万人前後で落ち着いていたが、80年代に入ると次第に上昇し、1990年には100万人を突破し、2005年には200万人の大台に乗った。2015年2019年には223万人293万人になっており、これは日本の総人口の1.7%強2.3%強に相当するもので、日本において外国人の存在はすでに大きな存在となっている。


法務省「令和元年末現在における在留外国人数について」のデータを元に作成


法務省「令和元年末現在における在留外国人数について」のデータを元に作成



参考データ

法務省「令和元年末現在における在留外国人数について」
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00003.html

2020年6月24日水曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題1の解説

問1 「他動詞」の典型的な特徴として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚自動詞と他動詞〛P58~、〚補語〛P47中段欄外※27


それぞれの選択肢がどういうことを言っているのか、いまいちピンと来ない人は、実際に自分で他動詞文を作ってみて確認してみるのがいいと思います。


1 たとえば[トランプさんが 炉端焼きを 食べた]という他動詞文を考えてみましょう。この場合、動作主は「トランプさん」で、動作対象は「炉端焼き」になります。動作主である「トランプさん」が、「炉端焼き」を食べることによって変化を加えるわけですから、選択肢1の内容は適切と判断できます。

2 動作主の「トランプさん」が、対象の「炉端焼き」に働きかけるのであって、「炉端焼き」が「トランプさん」に働きかけることはありません。よって、選択肢2の内容は不適切と判断できます。

3 選択肢3の内容が適当かどうか判断するためには、「補語」をきちんと理解しておく必要があります。


まず、文型とは、「述語」と「その述語に必要不可欠な成分(必須成分)」との組み合わせのことを言います。

たとえば、[トランプさんが 安倍さんと 六本木で 炉端焼きを 食べた]という文の場合、
「食べた」が述語、述語に必要不可欠な成分である「トランプさんが」と「炉端焼きを」が必須成分となります。

そして、必須成分のうち、ガ格成分の「トランプさん」が主語、その他の成分の「炉端焼き」が補語となります。

選択肢の内容「補語にヲ格ではなく二格名詞をとる」が適切だとすると、[トランプさんが 安倍さんと 六本木で 炉端焼き 食べた]というおかしな文になってしまうので、選択肢3は不適切と判断できます。

なお、文の構造において、必ずしも必要とされるわけではない成分を付随成分と言います。先の例文でいうと「安倍さんと」「六本木で」などの修飾語状況語がそれに当たります。

4 これは普通に名詞文名詞述語文)の説明なのではないでしょうか。「トランプさんは大統領だ」など。


したがって、正解は1になります。


☞超重要絶対暗記 《必須成分と随意成分》
⦿必須成分:文の基本的構造において、述語とともに必要不可欠な成分。たとえば、[今日 安倍さんが 国会で 布マスクを つけていた]という文の場合、「安倍さんが 布マスクを つけていた」が必須成分となる。そして、必須成分の中で、ガ格成分を「主語」、その他の成分を「補語」という。
⦿随意成分:文の基本的構造において、必ずしも必要とされるわけではない成分。[今日 安倍さんが 国会で 布マスクを つけていた]という文の場合、「今日」「国会で」が随意成分に当たる。随意成分の中で、時(「今日」)」や場所(「国会で」)などを表す成分を「状況語」、副詞などの成分を「修飾語」という。




問2 「迷惑受身(間接受身)」の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚受身〛P62


受身文には、直接受身文間接受身文(迷惑受身文)持ち主の受け身文の3種類があります。

直接受身文
 [トランプさんが キムさんを 挑発した]を受身文にすると、[キムさんは トランプさんに 挑発された]となります。

主語と目的語を入れ替え、動詞を受身形にすることで能動文を受身文(受動文)にすることができます。逆の作業をすれば受身文から能動文への言い換えも可能です。

この文では「トランプさん」の「挑発する」という動作の対象は「キムさん」です。トランプさんが、キムさんに対して、キムさんをターゲットに、キムさんに狙いを定めて、「挑発する」という動作を行うわけです。このように、動作主が対象に対して直接的に影響を及ぼしている受身文を「直接受身文」といいます。


・間接受身文(迷惑受身文)
しかし、対応する能動文がない、つまり受身文から能動文へ言い換えられない受身文が存在します。

たとえば、[(私は) 雨に 降られた]です。この文の能動文は存在しません。なぜなら、「降る」は目的語をとらない自動詞であり、[雨が 私に 降った]などとはならないからです。

キムさんを挑発するトランプさんとは違って、「雨」は、私に対して降ってきているわけでも、私に向けて、私を狙って、私めがけて降ってきたわけでもありません。つまり、動作主の動作と対象との間に直接的な関係はないわけです。このような受身文を「間接受身文」といいます。

間接受身文は、「雨に降られた」「赤ちゃんに泣かれた」「妻に先立たれた(死なれた)」など、迷惑を被る場合が多いため、「迷惑受身文」ともいわれます。個人的には、「自意識過剰受身文」と思っています。


1 直接受身文。能動文は「先生が私に掃除を頼んだ」になります。
2 直接受身文。能動文は「知人が夫を批判した」になります。
3 間接受身文。能動文を作ることはできません。
4 直接受身文。能動文は「若者が私に席を譲った」になります。


したがって、正解は3になります。


☞超重要絶対暗記 《迷惑受身(間接受身)》
⦿迷惑受身(間接受身:能動文の出来事から間接的に影響を受ける人を主語にする受身文。直接受身のように、能動文の対象(目的語)を主語にするわけではないので、自動詞文からも受身を作ることができる。多くの場合、マイナスの影響を受けるため、迷惑受身文とも呼ばれる。


なお、受身文のもうひとつの種類である「持ち主の受身文」については、赤本P63で確認しておきましょう。




問3 「自動詞」に関する記述として不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚意志動詞と無意志動詞〛P75、P78「表1-1-32 日本語の動詞分類」

 
1 問2で問題となった「迷惑受身(間接受身)」のことを言っているのだと思います。「雨に降られた」「赤ちゃんに泣かれた」「妻に先立たれた/死なれた」など迷惑受身(間接受身)文は、対応する能動文がないため、「降られる」「泣かれる」「先立たれる(死なれる)」などは、動詞の受身形というより自動詞として機能していることが分かります。

2 動詞の分類のひとつに「意志動詞」と「無意志動詞」の分け方があります。自動詞についても、意志的な意味を持つものに「遊ぶ」「歩く」「泣く」「眠る」など、非(無)意志的な意味を持つものに「落ちる」「燃える」「倒れる」「壊れる」などがあります。よって、選択肢2の記述は適当と言えます。

3 選択肢を読んでもピンと来ない人は、実際に対応する他動詞をもつ自動詞を考えてみましょう。
(自動詞)-(他動詞)
 落ちる - 落とす
 燃える - 燃やす
 倒れる - 倒す
 壊れる - 壊す
 消える - 消す
 曲がる - 曲げる など。

「落ちる」「燃える」「倒れる」「壊れる」「消える」「曲がる」のいずれも、主体の変化を表わすものと言えるので、選択肢3の内容は適当と言えそうです。

 4 3で挙げた自動詞を見てみると、語末の形態が「-asu」となるものはひとつもないことが分かります。逆に他動詞には、「燃やす」や「壊す」など、語末の形態が「-asu」になるものが散見されます。いずれにしても、選択肢4の記述が適当ではないことが分かると思います。


 したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《意志動詞と無意志動詞》
⦿意志動詞:意志的な動作を表す動詞。命令形と意向形を持つ。たとえば、「遊ぶ」であれば「遊べ」(命令形)、「遊ぼう」(意向形)、「見る」であれば「見ろ」、「見よう」など。
⦿無意志動詞:意志のない動作を表す動詞。命令形と意向形を持たない。たとえば、「光る」、「飽きる」など。




 問4 「文法カテゴリー」に関する記述として適当なものを選ぶ問題
 
📖赤本(第4版)関連箇所:P116最下段「格とは、名詞や代名詞が・・・」
               P62~「5 ヴォイス(態)」
               P72~「6 アスペクト」
               P78~「7 テンス」
               P84~「8 モダリティ」
 

文法カテゴリー」とは、述語にくっついて文法的な意味を付加するもので、「ヴォイス」「アスペクト」「テンス」「モダリティ」の4つの種類があります。文に現れる順番は、必ず「ヴォイス」→「アスペクト」→「テンス」→「モダリティ」の順で述語に続いていきます。

それぞれの文法カテゴリーについて簡単に説明すると以下の通りです。


☞超重要絶対暗記 《文法カテゴリー》

⦿ヴォイス受身、使役、使役受身、可能、自発などの「態」を表わしている部分。
⦿アスペクト動き始めなのか(開始)、動きが進行している最中なのか(継続)、動き終わったのか(完了)など、動作のどの局面かを表わしている部分。
⦿テンス過去、未来などの「時制」を表わしている部分。
⦿モダリティ「(明日は寒い)みたい/ようだ/そうだ/に違いない/はずだ」など、話し手の主観を表わしている部分。


1 条件を表わすレバ節には、「読み始めれば」「読み続ければ」「読み終われば」のように、ヴォイスだけでなく、アスペクトも出現させることができるので、選択肢1の記述は適当とは言えません。

2 [昨日は一日中怒られながら、仕事したよ]などのように付帯状況のナガラ節にヴォイス(例文では受身)は出現させることができます。しかし、✕読み終わりながら、✕読み続けながら、などのようにアスペクトを出現させることはできません。✕読んだながら、✕読むながら、などテンスも不可、✕読むはずながら、✕読むだろうながら、のようにモダリティも出現させることはできません。よって、選択肢2の記述は適当と言えます。

3 文法カテゴリーは、必ずヴォイス→アスペクト→テンス→モダリティの順番で現れるので、モダリティがヴォイスに先行することはありません。よって選択肢3の記述は適当ではありません。

なお、「読ませていただろう」を文法カテゴリーに分けると、「読ま」(語幹)+「せ」(モダリティ)+「てい」(アスペクト)+「た」(テンス)+「だろう」(モダリティ)となります。

4 選択肢3同様、文法カテゴリーの順番において、テンスがヴォイスに先行することはないので、選択肢4の記述も適当ではありません。


したがって、正解は2になります。


☞超重要絶対暗記 《文法カテゴリーの文に現れる順番》
⦿文法カテゴリーが文に現れる順番は、必ず「ヴォイス」→「アスペクト」→「テンス」→「モダリティ」の順。




問5 「話し手が何を主語にするかは談話の中での視点の統一にも関わっている」に関する記述として適当なものを選ぶ問題


この問題も、自分で例文を作ってみて、それぞれの選択肢の内容が適当かどうか検証していくのがいいと思います。


1 たとえば、[2020年6月19日にジャニーズ事務所を退所した元NEWSの手越祐也(32)が会見を開いた。手越は、冒頭で「これまで事実と違う報道が多すぎた。自分の口から真実を伝えたい」とコメントした]というように、1文目で既に出てきている情報であっても、2文目で「手越」を主語にできるので、選択肢1の記述内容が適当でないことが分かる思います。

 2 たとえば、無生物の名詞である地震が津波を引き起こした場合、地震を主語にして「地震が津波を発生させた」という言い方よりも、津波を主語にした「地震によって津波が発生した」という方が自然だと思います。よって、選択肢2の記述は適当でないと思います。

3 迷惑受身(間接受身)の「雨に降られた」「赤ちゃんに泣かれた」「妻に先立たれた(死なれた)」を考えてみれば、「聞き手に視点から述べられている」とする選択肢3の内容が適当ではないことが分かります。

4 たとえば、「勝った/負けた」の表現をする場合、伝統の巨人阪神戦で、巨人ファンは「巨人が阪神に勝った」「巨人が阪神に負けた」と表現しますが、巨人ファンが「阪神が巨人に負けた」とか「阪神が巨人に勝った」ということはありません。
「結婚する」などの場合も同様です。世間的には「山里亮太と蒼井優が結婚した」となりますが、芸人仲間であれば「山ちゃんが蒼井優と結婚した」。蒼井優の友だちであれば「優ちゃんが山里と結婚した」となるでしょう。

このように、巨人ファンなら巨人側の視点、芸人なら山ちゃん側の視点、蒼井優の友だちなら優ちゃん側の視点で語られるので、選択肢4の記述内容は適当であると言えます。


したがって、正解は4になります。

2020年6月23日火曜日

赤本P363最新データ 「外国人児童生徒の学習状況」

赤本P362 (※8)外国人児童生徒の学習状況


 2016年2018年の調査では、日本語指導が必要な外国人生徒数は3.4万人4.0万人で、公立学校に在籍している児童数は8万人9.3万人であった。また、日本国籍の児童生徒で日本語指導が必要な者も1万人弱1万人強おり、合わせると4万人を超える5万人を超える

 自治体別の外国人児童生徒数は、愛知県(9,100人)が突出している。2位以下は年度によって順位に違いはあるが、神奈川(4,453人)、東京(3,645人)、静岡(3,035人)、大阪(2,619人)が多い。地域としては東海地方(愛知、静岡、三重、岐阜)と、関東・首都圏(神奈川、東京、埼玉、千葉、群馬、茨城、栃木)が多くなっている。これら地域に児童数が多いのは、そこに彼らの親の職場(主として工場)が多いからである。母語別に外国人児童生徒の内訳を見ると、ポルトガル語が最も多く、中国語、フィリピノ語、スペイン語と続く(赤本(第4版から変化なし)。これら4つの言語で全体の8割程度(78%)を占める。


参考データ

文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度)」の結界について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/1421569.htm

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題15の解説

問1 「法務省告示日本語教育機関」の2018年8月現在の数として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P363


この問題に関しても、赤本(第4版)(2017年発行)の情報は最新のものではないので、赤本の特設サイト(赤本P21参照)や関係省庁のウェブサイトにより、情報を最新のものにしておく必要があります。

平成30年度国内の日本語教育の概要 | 文化庁


文化庁が発表している「平成30年度国内の日本語教育の概要」によると、平成30年11月時点での「法務省告示機関」の数は506となっています。


したがって、正解は2になると思いますが、日本語教育能力検定試験のウェブサイトでは正解は3となっています。2018年8月現在の数として「約700」が正解であるのならば、3か月の間に約200の機関が閉鎖されてなくなった、ということなのでしょうか?よく分かりません。


それに個人的には「2018年8月現在の数」という問題もちょっとどうかと思います。この問題を作成したときは「2018年8月」が最新かもしれませんが、試験が実施された2019年10月でもこの数字が最新のデータだったのかどうか・・・・


いずれにしても、なぜ正解が「約700」となるのか、その根拠も含めよく分からない問題でした。




問2 法務省による「日本語教育機関の告示基準」における「教員等の基準」に関する記述として適当なものを選ぶ問題


この問題はかなり難しい問題ではないでしょうか。

日本語教育能力検定試験の合格ラインは7割ぐらいですので、逆に考えれば3割は間違えてもいいわけですから、難しい1つの問題に拘りすぎることがないようにしましょう。


文化庁のホームページの「日本語教育機関の法務省告示基準第1条第1項第13号に定める日本語教員の要件について」の中の、「日本語教育機関の告示基準」(PDF)には「主任教員」と「校長」に関して次のように記載されてあります。

日本語教育機関の法務省告示基準第1条第1項第13号に定める日本語教員の要件について | 文化庁


(主任教員に関して)
十五 次のいずれにも該当する専任教員の中から,教育課程の編成及び他の教員の指導を行う教員を主任教員として定めていること。
イ 教育課程の編成及び他の教員の指導を行うのに必要な知識及び能力を有すること。
ロ 留学告示別表第1の1の表若しくは別表第1の2の表,別表第2又は別表第3に掲げる日本語教育機関の常勤の日本語教員として3年以上の経験を有する者であること。

(校長に関して)
十 校長が,次のいずれにも該当すること。
イ 日本語教育機関の運営に必要な識見を有し,かつ,教育に関する業務に原則として5年以上従事した者であること。
ロ 他の日本語教育機関の校長を兼ねる場合には,それぞれの日本語教育機関に副校長(前記イを満たす者に限る。)を置いていること。ただし,隣地に立地する日本語教育機関の校長を兼ねる場合は,この限りでない。


したがって、正解は1になります。




問3 「日本語教育施設の運営に関する基準」を運用する団体として適当なものを選ぶ問題
 
📖赤本(第4版)関連箇所:〚日本語教育学会〛P380、〚国際協力機構(JICA)〛P365中段、〚日本語教育振興協会〛P364
    

赤本には、選択肢1の日本国際協力センター以外は、一応、出てます。しかし、それぞれの組織の目的や事業概要が載っているわけではないので、正解することが難しい問題だと思います。


正解は4の「日本語教育振興協会」です。。


赤本には、上海事件との関連で出てきます(P364)。


いずれにしても、こういう問題は、問題文の文脈からどうなるものではありません。知っているかいないかだけです。選択肢をパッと見てわからなかったら、考えてどうなるものでもないので、適当に選択肢を選んで、他の問題のために時間を無駄にしないことが大切です。

        
なお、それぞれの選択肢の組織の概要は以下の通りです。


1 日本国際協力センター

(一般財団法人 日本国際協力センター ホームページより)
JICE 一般財団法人 日本国際協力センター
一般財団法人日本国際協力センター(JICE)は、1977年3月25日に、日本国外務省とJICA(国際協力事業団、現・独立行政法人国際協力機構)が実施する開発途上国への国際協力(ODA)に、民間機能を発揮して協力することを目的に設立されました。現在、世界各国・地域からの人材に対する実施事業は、日本の大学院等で学位を取得するための支援を行う留学生受入支援事業、海外から研修生や視察者を招いて行う国際研修事業、青少年などを対象とした国際交流事業のほか、日本語講習・教材開発に係る日本語教育事業や多言語に対応した通訳派遣事業など多岐にわたります。

2 日本語教育学会

(公益社団法人 日本語教育学会 ホームページより)
http://www.nkg.or.jp/gakkai/mokuteki
公益社団法人日本語教育学会は、日本語を第一言語としない者に対する日本語教育の研究促進と振興を図り、もって我が国の教育・学術の発展並びに我が国と諸外国との相互理解及び学術の交流に寄与することを目的としています。

このような目的を達成するために次の事業を行っています。
  • 日本語教育の学術研究を牽引し、研究者を育成する。
  • 日本語教育の実践の創造と深化を共有し、実践者の育成を図って、学習環境を整備する。
  • 日本語でコミュニケーションと相互理解を深め、人生を豊かにする。
  • 日本語でともに生きる豊かな社会を創造する。

3 国際協力機構(JICA)

(独立行政法人 国際協力機構 ホームページより)
https://www.jica.go.jp/about/index.html


独立行政法人国際協力機構(JICA/ジャイカ(注))は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。
(注)JICA/ジャイカはJapan International Cooperation Agencyの略称です。
主な業務内容
  • 開発途上国への技術協力
    • 研修員受入
    • 専門家派遣
    • 機材供与
    • 技術協力センター設置・運営
    • 開発計画に関する基礎的調査
  • 有償資金協力
    • 円借款
    • 海外投融資
  • 無償資金協力
    ※外交政策の遂行上の必要から外務省が自ら実施するものを除く。
  • 国民等の協力活動の促進
  • 海外移住者・日系人への支援
  • 技術協力のための人材の養成及び確保
  • 調査および研究
  • 緊急援助のための機材・物資の備蓄・供与
  • 国際緊急援助隊の派遣

4 日本語教育振興協会

(一般財団法人 日本語教育振興協会 ホームページより)
https://www.nisshinkyo.org/about/index.html

〔設置目的〕
我が国における日本語教育機関の質的向上を図るため,必要な事業を実施し,もって主として外国人に対する日本語教育を振興し,国際間の相互理解の促進に寄与することを目的とする。
〔事業概要〕
1.日本語教育機関の質保証のための評価事業の推進
2. 日本語教育機関の水準向上のための研修会・研究会等の開催
3.日本語教育機関の支援事業
(1) 新型コロナウイルス感染症への対応
(2)日本語教育機関への留学生等の適正な受入れの促進・在籍管理

(3)日本語教育機関及び日本語教育に関する情報提供
(4)日本語教育機関に関する調査・研究・開発
(5)日本語教育機関と大学,専門学校,企業,地方公共団体,関係機関等との連携協力の推進
(6) 維持会員活動等に対する支援
4. その他目的を達成するために必要な取組み




問4 「法務省告示日本語教育機関の留学生数」の多い出身国・地域の組み合わせとして適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚日本学生支援機構(JASSO)〛P381


日本学生支援機構については赤本にも記載がありますが、概要は以下の通りです。

(独立行政法人 日本学生支援機構 ホームページから)
 https://www.jasso.go.jp/about/organization/rinen.html

 JASSOの2つのS、“Student Services”を我々の活動の原点として、学生がどんなときでも安心して学ぶことができるよう、必要なサービスを提供していくことを組織の目的に掲げ、我が国の将来を担う若者たちの学びと成長を見守っていきます。
具体的には、奨学金、留学生支援、学生生活支援の3つの支援事業を行い、我が国の学生の学びを支える重要なインフラを提供する学生支援のナショナルセンターとして、次代の社会を担う人材の育成に貢献します。


留学生数はJASSOのウェブサイトに掲載されています。5位までの順位と人数は以下の通りです。
日本語教育機関における留学生受入れ状況 - JASSO

1位 ベトナム 30,271人
2位 中国   28,511人
3位 ネパール   9,002人
4位 スリランカ  3,900人
5位 ミャンマー  2,543人

したがって、正解は2になります。




問5 留学生の「アルバイト」に関して、資格外活動としてアルバイトに従事できる時間として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚国内の日本語学習者〛P364~


赤本には留学生のアルバイトに関する規則のことまで載っておりませんが、日本語教師を目指すならそれぐらい把握しておくべきということなのでしょう。


出入国在留管理庁に以下のように記載されています。

(出入国在留管理庁ウェブサイトからの抜粋)
資格外活動の許可(入管法第19条) | 出入国在留管理庁

資格外活動の許可は,証印シール(旅券に貼付)又は資格外活動許可書の交付により受けられます。証印シール又は資格外活動許可書には,「新たに許可された活動内容」が記載されますが,
①雇用主である企業等の名称,所在地及び業務内容等を個別に指定する場合,
原則1週に28時間以内であること及び活動場所において風俗営業等が営まれていないことを条件として企業等の名称,所在地及び業務内容等を指定しない場合,
③地方公共団体等において雇用されている「教育」,「技術・人文知識・国際業務」又は「技能(スポーツインストラクターに限る。)」の在留資格をもって在留する外国人が,1週に28時間以内であること及び地方公共団体等との雇用契約に基づいて,在留資格「教育」,「技術・人文知識・国際業務」又は「技能(スポーツインストラクターに限る。)」に該当する活動を行うことを条件として,勤務先の名称,所在地及び業務内容等を指定しない場合
(②及び③の場合を「包括的許可」といいます。)があります。


したがって、正解は4になります。

2020年6月22日月曜日

赤本P363最新データ 「日本語教師数」「日本語教育機関・施設等数」「日本語学習者数」

赤本P362 (※5~7)教師数・教育機関数


 日本語教師数や日本語教育機関・施設等数も、過去20年余、おおむね増加の傾向を示している
(傾向は赤本(第4版)から変わらず)。

 日本語教師数は、増減を繰り返しながらも全体として増加してきている(赤本(第4版)から変わらず)。勤務形態の内訳別に見ると、2015年2018年においては、常勤、非常勤、ボランティアの割合はおおよそ1:2.5:51:2.3:4となっており、日本国内の日本語教育の担い手の大部分を非常勤とボランティアが占めていることが分かる。また、年代別に見ると、70代が全体の9.8%、60代が全体の23.2%21.9%、50代が18.2%17.7%を占めている。

 学習者数を学習機関別に見てみると、大学等機関(大学、短大、高等専門学校)は全体の約30%25%弱、いわゆる地域の日本語教室(地方公共団体、国際交流協会)は約20%25%強である。日本語学校を含むその他の割合は相対的に減少傾向にあるが、依然として全体の40%以上50%弱(約48%)を占めている。




文化庁「日本語教育実態調査等」のデータを元に作成


文化庁「日本語教育実態調査等」のデータを元に作成

 

参考データ

文化庁「日本語教育実態調査等」https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題14の解説

問1 日本が、外国人の看護師候補者と介護福祉士候補者を受け入れている経済連携協定(EPA)締結国の3か国の適当な組み合わせを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P371


EPA、特定技能に関する基本的な問題です。赤本にも記載されていますし、よくTVニュースや新聞などでも取り上げられることなので、常識問題として確実に正解しておきたい問題です。


正解は3インドネシア、フィリピン、ベトナムです。


☞超重要絶対暗記 《外国人看護師候補者と介護福祉士候補者の受入れ》
⦿日本は、インドネシア、フィリピン、ベトナムそれぞれの国との二国間経済連携協定に基づき、3か国から看護師候補者介護福祉士を受け入れている。


(参考)厚生労働省ホームページ
インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて |厚生労働省




問2 外国人の看護師候補者と介護福祉士候補者に与えられる在留資格として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚在留資格〛P369


こういった最新情報は赤本(第4版)には掲載(反映)されておりませんので、検定に臨む前に、法務省や厚生労働省のウェブサイトで最新の情報を確認しておくことが必要です。


正解は2「特定活動」です。


☞超重要絶対暗記 《在留資格「特定活動」》
⦿特定活動:法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動。外交官等の家事使用人,ワーキング・ホリデー,経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者など。

(参考)
法務省ホームページ
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_HENKO/zairyu_henko10_21_08.html

厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000639886.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000485526.pdf




問3 外国人の看護師候補者と介護福祉士候補者への「日本語研修」が行われる時期について適当なものを選ぶ問題


この問題も知っているかいないか(だけ)です。検定に出題されるということは、日本語教師になるからには知っていないといけない、または知っているべき事柄ということなのでしょうから、分からなかった人は、厚生労働省「経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ概要」を見て勉強しておきましょう。


それによると、インドネシア・フィリピンは訪日前日本語研修(6か月)、訪日後日本語研修(6か月)、ベトナムは訪日前日本語研修(12か月)、訪日後日本語研修(2.5か月)となっておりますので、


正解は4になります。


(参考)厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000639886.pdf




問4 看護師・介護福祉士候補者が受験できる国家試験に関し適当なものを選ぶ問題


この問題も知っているかいないかの問題です。文脈から・・・・論理的に考えて・・・・残念ながら答えを知っていなければどうにもなりません。頑張って勉強しましょう。


厚生労働省ホームページ「経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ概要」PDFの2頁目に記載してあります。


看護師候補者は上限3年の在留期間中、毎年受験できます。一方、介護福祉士候補者は上限4年の在留期間の最終年(4年目)に受験することができます。


したがって、正解は1になります。


(参考)厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000639886.pdf




問5 「(外国人)候補者に配慮した試験の見直し」の内容として不適当なものを選ぶ問題


この問題も知っていないと、どうしようもありません。


平成25年2月15日に厚生労働省から発表された以下の資料をご覧ください。

(参考)厚生労働省ホームページ
第102回看護師国家試験で経済連携協定(EPA)に基づく外国人候補者への特例的な対応をします |報道発表資料|厚生労働省



1 厚生労働省の発表資料に「全ての漢字に振り仮名を付けた問題用紙を配布」とあるので、選択肢1の内容は適当と言えます。

2 厚生労働省の発表資料に以下の記載があるので、選択肢2の内容は正しいです。
〇試験時間を一般受験者の1.3倍に延長
  一般受験者   午前・午後 各2時間40分(合計5時間20分) 
  EPA候補者   午前・午後 各3時間30分(合計7時間)
3 厚生労働省の発表資料では「疾病名には英語を併記する」というだけで、問題文に英語を併記するということではありません。よって、選択肢3の内容は不適当と言えます。

4 厚生労働省の発表資料に「難解な用語・表現は言い換える」とあるので、選択肢4の内容は適当と言えます。


したがって、正解は3になります。 

2020年6月21日日曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題13の解説

問1 ハイムズのコミュニケーション理論に関する空欄補充問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚コミュニカティブ・コンピテンス〛P192、〚コミュニケーション能力〛P319~322


この問題は超重要かつ基本的なことなので、選択肢を見た瞬間に2の「伝達能力」を選べるようにしておきたいです。


赤本P319~322の「言語コミュニケーション」で言っていることは、要するに、語彙や文法だけでは円滑なコミュニケーションを図ることはできませんよ、ということです。


(赤本P319からの抜粋)
ハイムズは伝達能力コミュニカティブ・コンピテンス、いわゆるコミュニケーション能力)を提唱し、コミュニケーションには、正しい文を組み立てるだけではなく、いつ、どこで、誰にその正しい文を使ったらよいかという知識が不可欠であることを主張した。

ハイムズコミュニカティブ・コンピテンスについて
(赤本P192からの抜粋)
言語習得には言語形式に関わる知識だけでなく、言語をどのように使うかという言語運用能力を身に付けることが不可欠だという理論。


したがって、正解は2になります。


☞超重要絶対暗記 《伝達能力(コミュニカティブ・コンピテンス)》
⦿伝達能力(コミュニカティブ・コンピテンス):社会言語学者のハイムズは、言語能力には、言語形式に関わる知識だけでなく実際にどのように使うかという言語運用能力も含まれるとし、その総体を伝達能力(コミュニカティブ・コンピテンス)とした。


また、カナル&スウェインによる伝達能力の4領域も合わせて覚えてしまいましょう。

☞超重要絶対暗記 《カナル&スウェインによる伝達能力の4領域》
⦿カナル&スウェインは、伝達能力は文法能力、社会言語学的能力、ストラテジー能力、談話能力から成っているとした。
文法能力:文法、語彙、音声、表記など。
社会言語学的能力:相手や時と状況によって言い方を変えるなど、社会習慣に基づいて言語を使用できる能力。
ストラテジー能力:たとえば、言葉を忘れたときにどうやって対処するとか、自分が言いたいことが相手に伝わらないときでもコミュニケーションを終わらせないためにどうすればいいかといった、コミュニケーションを円滑に行うために必要な能力。
談話能力:会話の切り出し方や会話の終わらせ方、間のつなぎ方といった会話を円滑に進めていくために必要な能力。




問2 「詩的(poetic)機能」の例として不適当なものを選ぶ問題


ヤコブソンコミュニケーションの詩的機能について、赤本には記載されていないので推測するしかありません。


問題文の内容はコミュニケーションについてです。


選択肢を見てみると、しり取りしゃれ早口言葉は言葉遊びというもので複数人で楽しむものです。しり取りはボキャブラリーの量を競う言葉のキャッチボールのようなものだし、しゃれは相手を笑わせたり楽しませるものだし、早口言葉も言えるかどうか披露し合ったり競ったりするものです。しかし、独り言だけ相手の有無に関わらず一人でブツブツ、またはボソッとつぶやくことであり、コミュニケーションの要素がまったくありません。


したがって、正解は3になります。


ちなみに、ヤコブソンの詩的機能について調べてみると、「具体的な内容を伝達することよりも、メッセージそのもの(音の響き、リズム、形態、統辞、語彙など)に着目した機能」で、言葉遊びや俳句、ラップなどを指すようです。

(参考)https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/056/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/03/07/1367879_3.pdf




問3 ブラウン&ユール「交渉会話」の例として適当なものを選ぶ問題


ブラウン&ユールの「交渉会話」と「交流会話」については赤本には載っていませんが、それを知らなかったとしても、漢字の意味から「交渉会話」がどのような会話なのか推測することはできるし、正解を選ぶこともできる問題だと思います。


「交渉会話」を文字通り、“交渉のための会話”と捉えれば・・・・


正解は2になります。


選択肢1、3、4はただ質問してるだけで交渉とは言えません。


それに対して、選択肢2は、食事に誘っている、つまり、一緒にご飯を食べに行くことを交渉している会話と捉えることができます。



なお、「交渉会話」と「交流会話」は、以下のような会話をいいます。

・交渉会話:分からないことを尋ねたり、何かを依頼したり、勧誘したり、交渉したり、何らかの目的を成し遂げるためにする会話。
・交流会話:話すこと自体に意義がある会話。日常の雑談など。


(参考)
http://www.arts.chula.ac.th/~east/japanese/houkokusyo/houkokusyo_20.pdf#search=%27%E4%BA%A4%E6%B8%89%E4%BC%9A%E8%A9%B1+%E4%BA%A4%E6%B5%81%E4%BC%9A%E8%A9%B1+%E5%B0%BE%E5%B4%8E%E6%98%8E%E4%BA%BA%27




問4 「スピーチレベルシフト」に関して、基本的に普通体が用いられている会話の中で丁寧体にシフトしたときの効果の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚待遇表現〛P347


このような問題は、具体的な例を挙げて考えてみるのがいいと思います。


1 たとえば「気にしないで」よりも「気にしないでください」の方がよそよそしさが感じられます。また、「気にしないで」よりも「気にしないでください」の方が怒りを表わすことができると思います。「勝手にしてください」や「ほっといてください」なども丁寧体で怒りが表されている分かりやすい例だと思います。よって、選択肢1は適当そうです。

2 たとえば「そうだね」と「そうですね」を比べてみると、「そうですね」の方が強い共感している示しているわけではないことが分かると思います。「おれもそう思う」と「私もそう思います」で考えてみても、丁寧体の方が強い共感を示しているわけではないことが分かります。よって、選択肢2は適当ではありません。

3 たとえば「マジで?」と「本当ですか?」で考えて見れば、一時的に会話を和らげるのは、丁寧体ではなく普通体の方であることが分かると思います。「そうだね」と「そうですね」や「いいね!」と「いいですね!」でも同様だと思います。よって、選択肢3は適当ではありません。

4 そもそも「丁寧語」とは相手に対して丁寧に述べる表現方法なので、「話し手自身に向けた発話」ではありません。よって、選択肢4は適当ではありません。


したがって、正解は1になります。


なお、待遇表現に関して、赤本には以下のように記載されていますので、確認しておきましょう。


(赤本P347からの抜粋)
敬語(尊敬語・謙譲語・丁寧語)は、年齢や地位の上下といった“目上/目下”という上下関係によって使い分けられるが、これに加え、“親しい/親しくない”といった親疎関係も関わってくる。(中略)さらに、社内では上司に対して尊敬語を使う(例:山田部長はいらっしゃいません)が、社外の人に対しては同じ事柄を表わすのに謙譲語を使う(例:山田はおりません)ことから、“身内/身内以外”といったウチとソトの違いも敬語の使用に関わってくる。




問5 「フィラー」に関する記述として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚フィラー〛P144中段欄外※45、P320下段欄外※10、〚ターン・イールディング〛P144、〚プロミネンス〛P434、〚エンブレム〛P318


「フィラー」は、会話の中で、間を埋めるために発せられる言葉です。具体的な例としては、「えーと」「あのー」「そうだなー」「なんていうか」などがあります。


1 フィラーは婉曲的に表現することではありません。「聞き手に発話の機会を与えたりする」のは、ターン・イールディング(話の順番譲り)です。よって、適当ではありません。

2 フィラーは発音を際立たせたり、強弱をつけることではありません。選択肢2の説明はプロミネンスについてのものだと思います。

3 フィラーがもたらす効果についての記述です。

4 フィラーは、話を聞いていることや理解を示すものではありません。選択肢4の説明は相槌、または、ノンバ―バール・コミュニケーション(非言語行動)エンブレムなどについてのものだと思われます。


したがって、正解は3になります。



☞超重要絶対暗記 《フィラー》
⦿フィラー:会話の切り出しや、間を埋めるために発せられる語。「えー」「あのー」「うーん」など。


☞超重要絶対暗記 《ターン・イールディング》
⦿ターン・イールディング:話し手が聞き手に発話の順番を譲ること。話の順番譲り。


☞超重要絶対暗記 《プロミネンス》
⦿プロミネンス:文中の特定の部分を他の部分よりも際立たせて伝えるために、その部分を他の部分よりも強く発音したり弱く発音したり、話すスピードを上げたり落としたりすること。

2020年6月20日土曜日

赤本P362最新データ 「国内の日本語学習者数」

赤本P362 (※3)国内の日本語学習者数


国内の日本語学習者数(概数)

1986年 3.5万人
1989年 7.2万人
1990年  6万人
2000年  9.5万人 
2005年 13.6万人
2010年 16.8万人
2011年 12.8万人
2015年 19.1万人
2016年 21.7万人
2017年 23.9万人
2018年 25.9万人


 国内の学習者を出身国別に見てみると、2015年2018年は、中国、ベトナム、ネパール、韓国、フィリピンの順となっている。韓国からの学習者は減少しているが2015年まで減少し続けたが2016年から上昇に転じている。韓国以外の上位の国・地域からの学習者は(2011年は東日本大震災で減少したが2012年以降は)増加している。

 地域別では、アジア地域の占める割合が圧倒的に高く、近年は全体の8割ほど8割強を占めている。



【2008年以降の国内の学習者の出身国別順の推移】

2008年 中国、韓国、ブラジル、アメリカ、台湾、フィリピン
2009年 中国、韓国、ベトナム、日本、ブラジル、アメリカ
2010年 中国、韓国、ベトナム、ブラジル、アメリカ、台湾
2011年 中国、韓国、ベトナム、ブラジル、フィリピン、台湾
2012年 中国、韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジル、台湾
2013年 中国、ベトナム、ネパール、韓国、フィリピン、台湾
2014年 中国、ベトナム、ネパール、韓国、台湾、フィリピン
2015年 中国、ベトナム、ネパール、韓国、フィリピン、台湾
2016年 中国、ベトナム、ネパール、韓国、台湾、フィリピン
2017年 中国、ベトナム、ネパール、韓国、フィリピン、台湾
2018年 中国、ベトナム、ネパール、韓国、フィリピン、台湾



2013年以降、中国、ベトナム、ネパール、韓国のトップ4は変わっていません。ベトナムは2009年に急激に順位を上げ、ネパールは2013年に急激に順位を上げていることが分かります。




【国内の日本語学習者数の推移(国別)】


文化庁「日本語教育実態調査等」のデータを元に作成















【国内の日本語学習者・アジア地域出身者の割合の推移】

2008年 74.0%
2009年 81.7%
2010年 82.2%
2011年 81.3%
2012年 80.4%
2013年 80.5%
2014年 82.3%
2015年 82.8%
2016年 83.7%
2017年 84.4%
2018年 83.2%

 



参考データ

文化庁「日本語教育実態調査等」https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題10の解説

問1 エラーとミステイクの説明の組み合わせとして適当なものを選ぶ問題   📖赤本(第4版)関連箇所:P281 ミステイクとエラー、さらにエラーの下位分類であるグローバル・エラーとローカル・エラーは、超重要ワードなので、もし、それらの違いをきちんと理解できていないのであ...