2020年7月24日金曜日

2018年度(平成30年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題7の解説

問1 「ニーズ調査・分析(needs analysis)」に関する記述として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P196-199


ニーズ調査・分析とは、学習者の学習目的を調査することです。学習者が学生などの場合、親が学費を出すことが多いため、ニーズ調査・分析は、学習者にだけでなく、親などの経費支弁者にも行う必要があります。


1 学習者の学習目的が分かればいいわけですから、アンケート用紙である必要はありません。電話など口頭でのインタビューやメールでもいいのではないでしょうか。よって、選択肢1の記述は適当とは言えません。

2 学生の場合は、親が学費を出していることが多いため、親にも子供に学習させる目的を聞くべきでしょう。よって、選択肢2の記述は適当と言えます。

3 入門者レベルであっても、学習者にはそれぞれの学習目的があるはずなので、レベルに関わらず、すべての学習者に調査を行うべきです。よって、選択肢3の記述は適当ではありません。

4 始めは「日常会話ができるようになりたい」という理由であっても、勉強していくうちに「日本語能力試験N1を取りたい」とか「コンビニで働いてみたい」という風に、学習の目的が途中で変わることもあるので、調査は開始前だけではなく、コースの途中でも行う必要があります。よって、選択肢4の記述は適当ではありません。


したがって、正解は2になります。






問2 「レディネス調査・分析(readiness analysis)」で行う質問として不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P196-199


「レディネス」は英語ready(準備ができて)を名詞にしたものなので、準備が出来ている状態を意味します。

なので、レディネス調査・分析とは、学習者の学習に対する準備の状態を調査・分析することを言います。

具体な調査項目としては、
①外的な条件:年齢、職業、国籍、母語、経済的条件、時間的条件、学習環境、生活環境など
②内的な条件:外国語学習経験の有無、日本語既習者に対しては学習総時間数や使用した教科書、学習スタイル、習得レベル

などがあります。


1 学習にどれだけお金をかけられるかは、レディネス調査・分析の外的条件に当たるものです。
2 外国語の学習経験は、レディネス調査・分析の内的条件に当たるものです。
3 既習者がどのような教科書を教科書したのかは、レディネス調査・分析の内的条件に当たるものです。
4 どのような場面で日本語を使うかは、レディネス調査・分析ではなく、ニーズ調査・分析になります。


したがって、正解は4になります。






問3 「様々なシラバス」に関する記述として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚シラバスの分類〛P200


シラバスは、そのコースで教える教授項目のことで、構成方法によって主に次の6つに分類されます。

⦿構造シラバス:文型・文法・語彙の観点から整理されたシラバス。言語形式を重視して、基礎的なものから複雑なものへ積み上げ式に配列される。

⦿場面シラバス:学習者が遭遇するであろう場面を想定し、そこで必要となる表現や語彙、決まり文句などを中心に集めたシラバス。「道を尋ねる」「美容院に行く」「駅で電車の切符を買う」など。

⦿機能シラバス:「依頼する」「交渉する」「誘う」「謝る」「断る」など、言語のコミュニケーション上の働き(機能)に注目し、それを中心に教えていくシラバス。

⦿話題シラバス:学習者の興味や関心事など、学習者が必要としている話題に関する文型、語彙、表現を集めたシラバス。トピックシラバスともいう。


⦿技能シラバス:「聞く」「話す」「読む」「書く」という言語の4技能のそれぞれの熟達を目指すシラバス。スキルシラバスともいう。
⦿課題シラバス:目標言語を使ったコミュニケーションに必要なタスクをリストアップしたシラバス。タスクシラバスともいう。

では、選択肢を見ていきましょう。

1 「機能シラバス」は、「依頼する」「交渉する」「誘う」「謝る」「断る」など、言語のコミュニケーション上の働き(機能)に注目したシラバスなので、「文と意味・使用目的を結びつけて学習できる」という選択肢1の記述は適当と言えます。

2 四技能のうち一つに特化して学びたい人に向いているのは、「機能シラバス」ではなく「技能シラバス」です。

3 「構造シラバス」は、言語形式を重視した積み上げ式のシラバスなんで、「難易度に関係なく学習できる」という記述は適当ではありません。

4 観光で短期間日本に滞在する人に向いているのは、「場面シラバス」です。構造シラバスは語彙、文法、文型など積み上げていく形式なので、短期間だけ日本語が必要な人向きではありません。


したがって、正解は1になります。





📡関連する過去問
2019年度 試験Ⅰ 問題5 問1
https://kenteigoukaku.blogspot.com/2020/06/20195.html




問4 「カリキュラムデザイン」で決定することとして不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:201


カリキュラム・デザインは、シラバスをどのように教えていくか、時系列に沿って具体的に計画することです。

決めるべき項目の主なものは以下の通りです。

✔到達目標
✔時間割
✔クラスサイズ
✔教授法
✔教室活動
✔教材・教具
✔担当教師

など。


選択肢を見ていくと、「教室活動の内容」「コースの進度(時間割)」「各課の目標」を決めるのは「カリキュラムデザイン」ですが、「学習項目のリスト」は「シラバスデザイン」で決めるものです。

シラバスは、教授項目(学習項目)を意味するので、シラバスデザインは、教授項目(学習項目)をデザインして決定する、ということです。


したがって、正解は3になります。






問5 「適当な教材の選定」に関する記述として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:


1 問題文にも書かれている通り、まず「コースデザイン」を行い、その次に「シラバスデザイン」を行います。「シラバス」は教授項目(学習項目)のことでそれを決めるのが「シラバスデザイン」です。つまり、「コースデザイン」の段階ではまだ教授項目(学習項目)が決まっていないわけですから、選択肢1の記述は適当ではありません。

2 コースデザインで、学習者のニーズ調査・分析とレディネス調査・分析を行ってからシラバスを決めます。使いたい教科書にシラバスを合わせるのであれば、ニーズ調査・分析とレディネス調査・分析を行う必要はありません。学習者のニーズとレディネスに合ったシラバスを決定し、そのシラバスに合う教材を検討すべきです。よって、選択肢2の記述は適当ではありません。

3 選択肢3の記述は選択肢2と対立する内容になっています。ということはどちらかが間違いでもう一方が正解ということになります。選択肢3の記述は、まさに選択肢2で説明した内容であり適当です。

4 生教材は、レベルに合った内容であればどのレベルでも使うことができます。よって、選択肢4の記述は適当ではありません。


したがって、正解は3になります。


📡関連する過去問 (生教材)
2019年度 試験Ⅰ 問題5 問5
https://kenteigoukaku.blogspot.com/2020/06/20195.html

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