2020年7月17日金曜日

2018年度(平成30年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題3Dの解説

D 【日本語の歴史】

(16)日本語の大きな2つの区分に関する空欄補充問題


問題文の空欄を含む一文にある「キ・ケリ・ツ・ヌ」と「テイル・タ」だけでも正解を選べるかもしれませんが、その後の文に「中世を境としたこの大きな変化」とあることから、空欄に入る言葉は、時代による区分を表したものであることが分かります。


1 「口語」と「文語」は、会話で使う言葉と書き言葉の違いなので、空欄に入れる言葉として適当ではありません。

2 「上方語」と「江戸語」は、地域による言葉の違いなので、空欄に入れる言葉として適当ではありません。

3 「古語」は、今は使われなくなった古い言葉で、「新語」は、新しく作られたり使われだした言葉(新造語)のことです。「古語」も「新語」も「中世を境とした」ものではありませんので、空欄に入れる言葉として適当ではありません。

4 言語における一般的な時代区分は、上代(奈良時代)、中古(平安時代)、中世(鎌倉、室町、安土桃山時代)、近世(江戸時代)、近代(明治時代~1945年)、現代(1945年以降)の6分類になりますが、古代(鎌倉以前)と近代(室町以降)と大きく2つに分けることもあります。よって、選択肢4は、空欄に入れる言葉として適当と言えます。


したがって、正解は4になります。







(17)「終止形と連体形の合流や二段動詞の一般化」の例に関する問題


この問題は、「終止形と連体形の合流」や「二段動詞の一段化」について理解していないと正解を選ぶことが難しいと思いますので、まず最初に「終止形と連体形の合流」や「二段動詞の一段化」について確認しておきましょう。


中世の時代(鎌倉・室町時代など)に文法の活用体系に大きな変化がありました。そのひとつが、連体形で終わることが一般的になったということです。

本来、連体形は終わるときの形ではありません。連体形で終わらせるのは、係り結びの法則や余韻を残す場合など特別な場合だけに限られていました。

しかし、中世になると、特別な場合でもないのに、連体形で終わらせる現象が一般化していきました。

たとえば、二段動詞の「受く」は平安時代の文法では、

(未然形)受け (連用形)受け 終止形(受く) 連体形(受くる) 已然形(受くれ) 命令形(受けよ)

でしたが、連体形で終わる現象が広まると、

 
(未然形)受け (連用形)受け 終止形(受くる) 連体形(受くる) 已然形(受くれ) 命令形(受けよ)
 
となりました(「終止形と連体形の合流」)。さらに未然形「受け」の「け」の部分を、終止形、連体形、已然形でわざわざ「く」に変えないでそのまま「け」を使う単純化の現象が起こり、

(未然形)受け (連用形)受け 終止形(受ける) 連体形(受ける) 已然形(受けれ) 命令形(受けよ)


となり、もともと二段動詞だったものが一段動詞化しました。これが「二段動詞の一段化」ということになります。


選択肢を見てみると、3つの活用形が→で結ばれていますが、まず、3つ目の活用形が一段動詞の活用形になっていない選択肢3と4は消去できます。

次に、選択肢1と2の1つ目と2つ目の活用形を見たときに、「食ぶ」が終止形で、「食ぶる」が連体形であることが分かると思います。


したがって、正解は1になります。




(18)(係)助詞に関する問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚助詞〛P39-42


係助詞とは、平叙文や疑問・反語の文などの文中または文末に用いられて、問題点、強調点、疑問点などを示すもので、「は・も・ぞ・なむ・や・か・こそ」などがあります。

文中に「ぞ・なむ・や・か」または「こそ」があるときは、それを受けて結ぶ活用語が、それぞれ連体形、已然形になります(係り結びの法則)。


⦿文中に係助詞「ぞ・なむ・や・か」のいずれかが使われる → 結びが「連体形」になる。
例) (無助詞)涙落つ。 → (係助詞「ぞ」が使われる) 涙ぞ落つる。

⦿文中に係助詞「こそ」が使われる → 結びが「已然形」になる。
例)(無助詞)涙落つ。 → (係助詞「こそ」が使われる)涙こそ落つれ。


では、それぞれの選択肢を見ていきましょう。


1 「か」はもともと係助詞と呼ばれていたものであり、現在は接続助詞ではなく、並列助詞として使用されています。よって、選択肢1は下線部Bの例として適当ではありません。

2 「も」はもともと係助詞と呼ばれていたものであり、現在は取り立て助詞として使用されてます。よって、選択肢2は下線部Bの例として適当と言えます。

3 「は」はもともと係助詞と呼ばれていたものであり、現在は格助詞ではなく、取り立て助詞として使用されています。よって、選択肢3は下線部Bの例として適当ではありません。




4 「ぞ」はもともと係助詞と呼ばれていたものでありまずが、現在では助詞として使用されていません。よって、選択肢4は下線部Bの例として適当ではありません。



したがって、正解は2になります。


この問題は、選択肢に用意されている助詞「か」「も」「は」「ぞ」はすべてもともと係助詞と呼ばれていたものであり、もともと係助詞と呼ばれていたものとそうでないものを判別する必要がなかったため、係助詞に関する知識はまったく必要ない問題でした。




(19)「くれる」と「やる」の対立に関する問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚授受表現〛P69


やりもらい、あげもらいなど、物や動作の授受を表す表現は授受表現と呼ばれ、、「あげる(やる)」「くれる」「もらう」は、立場や視点の違いによって適切な動詞が決まります。


したがって、正解は2になります。


📡関連する過去問
(授受表現)2019年度 試験Ⅲ 問題5 問5
https://kenteigoukaku.blogspot.com/2020/06/20195_28.html




(20)「日本語内部における変化」に関する問題
 

1 敬語が相対敬語として使用されるようになったのは、「日本語内部における変化」のようですが、そのことがどこに書いてあるのか等のエビデンスの所在は分かりません。

2 ラ行音で始まる単語が使用されるようになったのは、「日本語内部における変化」ではなく「外国語の影響による変化」です。

3 閉音節とは子音で終わる語のことで、逆に母音で終わる語のことを開音節といいます。つまり、閉音節とは英語のdogやcatなどのことです。もともと日本語には閉音節はなかったそうです。ということは「ん」で終わる語はすべて外来語ということなのでしょうか・・・・

4 漢語が使用されるようになったのは、「日本語内部における変化」ではなく「外国語の影響による変化」です。


したがって、正解は1になります。


この問題は間違ってしまってもしょうがないかもしれません。ただ、これを機会に選択肢の4つの内容をすべて覚え、今後に活かすことが大事なことだと言えるでしょう。

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