2020年6月26日金曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題3の解説

この問題3は良くない問題だと思います。

なぜならば、




問題文のなかで様態副詞を、「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表す」と説明しています。


これは、「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表わさないものは様態副詞ではない」と言っていることと同じです。


しかし、三省堂の大辞林(第3版)には、様態副詞には「ぬるぬる」や「しばらく」、「わざと」、赤本(第4版)には「キンキン」、「つるつる」なども含まれると記載されています。

「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表す」ものではない、「ぬるぬる」や「しばらく」、「わざと」、「キンキン」、「つるつる」などが様態副詞だとすれば、

問題文の「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表す」という説明は間違いということになると思うからです。


問1 「事態の開始とともに発生し、修了とともに消えるさまを表わす」様態副詞の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚情態副詞〛P35


情態副詞(赤本P35からの抜粋)
主として動詞にかかり、動作や作用の様子を説明するものである。その様子を感覚的に音声化した擬態語や、音をまねた擬声語や擬音語、同じ音を繰り返す畳語に多く見られる。文法書によって、状態副詞様態副詞とも呼ばれる。

「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさま」というのは、「ぱちぱち」は、「手を叩く」という事態(動作)の開始とともに発生し、「手を叩く」という事態(動作)が終了するとともに消える(なくなる/終わる)ということであり、

選択肢の中でそれと同じような副詞は・・・・


1 「びしょびしょに濡れた」の「びしょびしょに」は、それがかかる動詞「濡れた」がある程度継続的な状態を表わすことからも分かるように、「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表わす」ものではありません。

2 「からからに乾いた」の「からからに」は、それがかかる動詞「乾いた」がある程度継続的な状態を表わすことからも分かるように、「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表わす」ものではありません。

3 「まるまると太った」の「まるまると」は、それがかかる動詞「太った」がある程度継続的な状態を表わすことからも分かるように、「事態の開始とともに発生し、終了とともに消えるさまを表わす」ものではありません。

4 「ちらちらと舞った」の「ちらちら」は、舞っている間だけの状態で、舞い終わると同時に「ちらちら」という状態は修了してしまうので、選択肢4は適切な例と言えます。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《情態副詞》
⦿情態副詞:主として動詞を修飾し、動作の変化の仕方、出来事の在り方を表す。状態副詞、様態副詞とも言われる。その様子を感覚的に表わす擬態語や、音をまねた擬声語や擬音語、同じ音を繰り返す畳語などに多く見られる。




問2 「漸次的な変化を表す動詞」の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚程度副詞〛P35


程度副詞(赤本P35からの抜粋)
述語が表す動作や状態の程度を表わす。程度副詞は、動詞や形容詞だけでなく、名詞や副詞を修飾するものがある。「きわめて」「とても」「たいへん」「ずいぶん」「かなり」「すこぶる」「多少」「わりと」「けっこう」「ずっと」など。

「漸次」とは、しだいに、だんだんとという意味なので、「漸次的な変化」とは、“時間をかけてゆっくり変化すること”なので、選択肢4の「痩せる」が最も適当と考えられます。

選択肢の1、2、3は、動詞の後ろに「瞬間」という語を付けることができる(「喜ぶ瞬間」「眠る瞬間」「生まれる瞬間」)ことからも、それぞれの動詞が「漸次的な変化」を表わすものではないことが分かります。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《程度副詞》
⦿程度副詞:述語が表す動作や状態の程度を表す。動詞や形容詞だけでなく名詞や副詞を修飾するものもある。「たいへん」「すごく」「とても」「きわめて」「ずいぶん」「かなり」「けっこう」「そうとう」「だいぶ」「もっと」「ずっと」「はるかに」「ますます」「いよいよ」「わりと」「多少」「すこぶる」「よけいに」など。




問3 「程度副詞様態副詞と共起する」例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P36「陳述副詞」


1 「どうか」は文末の「~してください」と呼応する陳述副詞です。

陳述副詞(赤本P36からの抜粋)
述語の陳述(文のまとまり)を表す。「肯定」「打ち消し」「推量」「仮定」「疑問」「比況」などの表現で、文末と呼応するのが特徴である。「きっと」「たぶん」「なぜ」「もし」「まるで」など。

なお、「ゆっくり」は、動詞「進む」と結びつく様態副詞だと思います。よって、選択肢1は程度副詞と様態副詞が共起した例ではありません。

2 「かなり」は「きっぱりと」を修飾する程度副詞だと思います。「きっぱりと」は「断る」にかかる様態副詞だと思います。よって、選択肢2は程度副詞と様態副詞が共起した例として適当だと思います。 

3 「けっこう」は「すぐに」を修飾する程度副詞だと思います。「すぐに」は様態副詞だと思いますが、問題文の説明(「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」)に沿って考えれば、「すぐに」は「事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」ものではないので様態副詞とは言えないことになります。よって、選択肢3は程度副詞と様態副詞が共起した例ではないということになります。

4 「だんだん」は様態副詞だと思いますが、問題文の説明(「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」)に沿って考えれば、「だんだん」は「事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」ものではないので様態副詞とは言えないことになります。

「ぽかぽか」も様態副詞だと思いますが、問題文の説明(「様態副詞は、(中略)事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」)に沿って考えれば、「ぽかぽか」は「事態の開始とともに発生し、終了ととも消えるさまを表わす」ものではないので様態副詞とは言えないことになります。

いずれにせよ、問題文の説明に従えば、両方とも様態副詞ではないことになるので、選択肢4は程度副詞と様態副詞が共起した例ではないということになります。


 したがって、正解は2になります。


☞超重要絶対暗記 《陳述副詞》
⦿陳述副詞:述語の陳述の仕方を表す副詞。「推量」「打ち消し(否定)」「仮定」「疑問」「比況」などの表現で、文末と呼応するのが特徴。たとえば、推量を表す「きっと(~だろう)」、打ち消し(否定)を表す「全然(~ない)」、仮定を表す「もし(~なら)」、疑問を表す「なぜ(~か)」、比況を表す「まるで(~ようだ)」など。




問4 「他の品詞から転成した副詞」に関する記述として適当なものを選ぶ問題


普段からどれだけ語彙の品詞や意味に関心を払っているかという問題ですね。


1 「図らずも」は選択肢1の記述の通り、動詞から転成した副詞のようです。
2 「さん然と」は、ナ形容詞「さん然」の活用形だと思います。
3 「とも」には接尾辞の用法はありますが、接頭辞の用法はなさそうです。
4 「たやすく」は、イ形容詞「たやすい」の活用形だと思います。


 したがって、正解は1になります。




問5 「雨が急遽降りだした」の「急遽」の誤用の要因として適当なものを選ぶ問題


1 マイナスのイメージの「雨」で使ったから間違えているというのならば、プラスのイメージの「晴れ」の文なら間違いではないということになります。しかし、「空が急遽晴れた」というのも正しい使い方とは言えません。つまり、誤用の要因はプラスマイナスのイメージとは関係ありません。

2 「急遽」は、硬い書き言葉だけでなく、普段の会話の中でも使う言葉だと思います。

3 この説明の通り、「急遽」は突然の事態に対応する様子を表わすので、「雨が降る」という文には使うことができません。

4 「急遽」は、突発的な様子を表わすもので、漸次的な変化を表わすものではありません。


したがって、正解は3になります。

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