2020年6月23日火曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題15の解説

問1 「法務省告示日本語教育機関」の2018年8月現在の数として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P363


この問題に関しても、赤本(第4版)(2017年発行)の情報は最新のものではないので、赤本の特設サイト(赤本P21参照)や関係省庁のウェブサイトにより、情報を最新のものにしておく必要があります。

平成30年度国内の日本語教育の概要 | 文化庁


文化庁が発表している「平成30年度国内の日本語教育の概要」によると、平成30年11月時点での「法務省告示機関」の数は506となっています。


したがって、正解は2になると思いますが、日本語教育能力検定試験のウェブサイトでは正解は3となっています。2018年8月現在の数として「約700」が正解であるのならば、3か月の間に約200の機関が閉鎖されてなくなった、ということなのでしょうか?よく分かりません。


それに個人的には「2018年8月現在の数」という問題もちょっとどうかと思います。この問題を作成したときは「2018年8月」が最新かもしれませんが、試験が実施された2019年10月でもこの数字が最新のデータだったのかどうか・・・・


いずれにしても、なぜ正解が「約700」となるのか、その根拠も含めよく分からない問題でした。




問2 法務省による「日本語教育機関の告示基準」における「教員等の基準」に関する記述として適当なものを選ぶ問題


この問題はかなり難しい問題ではないでしょうか。

日本語教育能力検定試験の合格ラインは7割ぐらいですので、逆に考えれば3割は間違えてもいいわけですから、難しい1つの問題に拘りすぎることがないようにしましょう。


文化庁のホームページの「日本語教育機関の法務省告示基準第1条第1項第13号に定める日本語教員の要件について」の中の、「日本語教育機関の告示基準」(PDF)には「主任教員」と「校長」に関して次のように記載されてあります。

日本語教育機関の法務省告示基準第1条第1項第13号に定める日本語教員の要件について | 文化庁


(主任教員に関して)
十五 次のいずれにも該当する専任教員の中から,教育課程の編成及び他の教員の指導を行う教員を主任教員として定めていること。
イ 教育課程の編成及び他の教員の指導を行うのに必要な知識及び能力を有すること。
ロ 留学告示別表第1の1の表若しくは別表第1の2の表,別表第2又は別表第3に掲げる日本語教育機関の常勤の日本語教員として3年以上の経験を有する者であること。

(校長に関して)
十 校長が,次のいずれにも該当すること。
イ 日本語教育機関の運営に必要な識見を有し,かつ,教育に関する業務に原則として5年以上従事した者であること。
ロ 他の日本語教育機関の校長を兼ねる場合には,それぞれの日本語教育機関に副校長(前記イを満たす者に限る。)を置いていること。ただし,隣地に立地する日本語教育機関の校長を兼ねる場合は,この限りでない。


したがって、正解は1になります。




問3 「日本語教育施設の運営に関する基準」を運用する団体として適当なものを選ぶ問題
 
📖赤本(第4版)関連箇所:〚日本語教育学会〛P380、〚国際協力機構(JICA)〛P365中段、〚日本語教育振興協会〛P364
    

赤本には、選択肢1の日本国際協力センター以外は、一応、出てます。しかし、それぞれの組織の目的や事業概要が載っているわけではないので、正解することが難しい問題だと思います。


正解は4の「日本語教育振興協会」です。。


赤本には、上海事件との関連で出てきます(P364)。


いずれにしても、こういう問題は、問題文の文脈からどうなるものではありません。知っているかいないかだけです。選択肢をパッと見てわからなかったら、考えてどうなるものでもないので、適当に選択肢を選んで、他の問題のために時間を無駄にしないことが大切です。

        
なお、それぞれの選択肢の組織の概要は以下の通りです。


1 日本国際協力センター

(一般財団法人 日本国際協力センター ホームページより)
JICE 一般財団法人 日本国際協力センター
一般財団法人日本国際協力センター(JICE)は、1977年3月25日に、日本国外務省とJICA(国際協力事業団、現・独立行政法人国際協力機構)が実施する開発途上国への国際協力(ODA)に、民間機能を発揮して協力することを目的に設立されました。現在、世界各国・地域からの人材に対する実施事業は、日本の大学院等で学位を取得するための支援を行う留学生受入支援事業、海外から研修生や視察者を招いて行う国際研修事業、青少年などを対象とした国際交流事業のほか、日本語講習・教材開発に係る日本語教育事業や多言語に対応した通訳派遣事業など多岐にわたります。

2 日本語教育学会

(公益社団法人 日本語教育学会 ホームページより)
http://www.nkg.or.jp/gakkai/mokuteki
公益社団法人日本語教育学会は、日本語を第一言語としない者に対する日本語教育の研究促進と振興を図り、もって我が国の教育・学術の発展並びに我が国と諸外国との相互理解及び学術の交流に寄与することを目的としています。

このような目的を達成するために次の事業を行っています。
  • 日本語教育の学術研究を牽引し、研究者を育成する。
  • 日本語教育の実践の創造と深化を共有し、実践者の育成を図って、学習環境を整備する。
  • 日本語でコミュニケーションと相互理解を深め、人生を豊かにする。
  • 日本語でともに生きる豊かな社会を創造する。

3 国際協力機構(JICA)

(独立行政法人 国際協力機構 ホームページより)
https://www.jica.go.jp/about/index.html


独立行政法人国際協力機構(JICA/ジャイカ(注))は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。
(注)JICA/ジャイカはJapan International Cooperation Agencyの略称です。
主な業務内容
  • 開発途上国への技術協力
    • 研修員受入
    • 専門家派遣
    • 機材供与
    • 技術協力センター設置・運営
    • 開発計画に関する基礎的調査
  • 有償資金協力
    • 円借款
    • 海外投融資
  • 無償資金協力
    ※外交政策の遂行上の必要から外務省が自ら実施するものを除く。
  • 国民等の協力活動の促進
  • 海外移住者・日系人への支援
  • 技術協力のための人材の養成及び確保
  • 調査および研究
  • 緊急援助のための機材・物資の備蓄・供与
  • 国際緊急援助隊の派遣

4 日本語教育振興協会

(一般財団法人 日本語教育振興協会 ホームページより)
https://www.nisshinkyo.org/about/index.html

〔設置目的〕
我が国における日本語教育機関の質的向上を図るため,必要な事業を実施し,もって主として外国人に対する日本語教育を振興し,国際間の相互理解の促進に寄与することを目的とする。
〔事業概要〕
1.日本語教育機関の質保証のための評価事業の推進
2. 日本語教育機関の水準向上のための研修会・研究会等の開催
3.日本語教育機関の支援事業
(1) 新型コロナウイルス感染症への対応
(2)日本語教育機関への留学生等の適正な受入れの促進・在籍管理

(3)日本語教育機関及び日本語教育に関する情報提供
(4)日本語教育機関に関する調査・研究・開発
(5)日本語教育機関と大学,専門学校,企業,地方公共団体,関係機関等との連携協力の推進
(6) 維持会員活動等に対する支援
4. その他目的を達成するために必要な取組み




問4 「法務省告示日本語教育機関の留学生数」の多い出身国・地域の組み合わせとして適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚日本学生支援機構(JASSO)〛P381


日本学生支援機構については赤本にも記載がありますが、概要は以下の通りです。

(独立行政法人 日本学生支援機構 ホームページから)
 https://www.jasso.go.jp/about/organization/rinen.html

 JASSOの2つのS、“Student Services”を我々の活動の原点として、学生がどんなときでも安心して学ぶことができるよう、必要なサービスを提供していくことを組織の目的に掲げ、我が国の将来を担う若者たちの学びと成長を見守っていきます。
具体的には、奨学金、留学生支援、学生生活支援の3つの支援事業を行い、我が国の学生の学びを支える重要なインフラを提供する学生支援のナショナルセンターとして、次代の社会を担う人材の育成に貢献します。


留学生数はJASSOのウェブサイトに掲載されています。5位までの順位と人数は以下の通りです。
日本語教育機関における留学生受入れ状況 - JASSO

1位 ベトナム 30,271人
2位 中国   28,511人
3位 ネパール   9,002人
4位 スリランカ  3,900人
5位 ミャンマー  2,543人

したがって、正解は2になります。




問5 留学生の「アルバイト」に関して、資格外活動としてアルバイトに従事できる時間として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚国内の日本語学習者〛P364~


赤本には留学生のアルバイトに関する規則のことまで載っておりませんが、日本語教師を目指すならそれぐらい把握しておくべきということなのでしょう。


出入国在留管理庁に以下のように記載されています。

(出入国在留管理庁ウェブサイトからの抜粋)
資格外活動の許可(入管法第19条) | 出入国在留管理庁

資格外活動の許可は,証印シール(旅券に貼付)又は資格外活動許可書の交付により受けられます。証印シール又は資格外活動許可書には,「新たに許可された活動内容」が記載されますが,
①雇用主である企業等の名称,所在地及び業務内容等を個別に指定する場合,
原則1週に28時間以内であること及び活動場所において風俗営業等が営まれていないことを条件として企業等の名称,所在地及び業務内容等を指定しない場合,
③地方公共団体等において雇用されている「教育」,「技術・人文知識・国際業務」又は「技能(スポーツインストラクターに限る。)」の在留資格をもって在留する外国人が,1週に28時間以内であること及び地方公共団体等との雇用契約に基づいて,在留資格「教育」,「技術・人文知識・国際業務」又は「技能(スポーツインストラクターに限る。)」に該当する活動を行うことを条件として,勤務先の名称,所在地及び業務内容等を指定しない場合
(②及び③の場合を「包括的許可」といいます。)があります。


したがって、正解は4になります。

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