📖赤本(第4版)関連箇所:〚自動詞と他動詞〛P58~、〚補語〛P47中段欄外※27
それぞれの選択肢がどういうことを言っているのか、いまいちピンと来ない人は、実際に自分で他動詞文を作ってみて確認してみるのがいいと思います。
1 たとえば[トランプさんが 炉端焼きを 食べた]という他動詞文を考えてみましょう。この場合、動作主は「トランプさん」で、動作対象は「炉端焼き」になります。動作主である「トランプさん」が、「炉端焼き」を食べることによって変化を加えるわけですから、選択肢1の内容は適切と判断できます。
2 動作主の「トランプさん」が、対象の「炉端焼き」に働きかけるのであって、「炉端焼き」が「トランプさん」に働きかけることはありません。よって、選択肢2の内容は不適切と判断できます。
3 選択肢3の内容が適当かどうか判断するためには、「補語」をきちんと理解しておく必要があります。
まず、文型とは、「述語」と「その述語に必要不可欠な成分(必須成分)」との組み合わせのことを言います。
たとえば、[トランプさんが 安倍さんと 六本木で 炉端焼きを 食べた]という文の場合、
「食べた」が述語、述語に必要不可欠な成分である「トランプさんが」と「炉端焼きを」が必須成分となります。
そして、必須成分のうち、ガ格成分の「トランプさん」が主語、その他の成分の「炉端焼き」が補語となります。
選択肢の内容「補語にヲ格ではなく二格名詞をとる」が適切だとすると、[トランプさんが 安倍さんと 六本木で 炉端焼きに 食べた]というおかしな文になってしまうので、選択肢3は不適切と判断できます。
なお、文の構造において、必ずしも必要とされるわけではない成分を付随成分と言います。先の例文でいうと「安倍さんと」「六本木で」などの修飾語や状況語がそれに当たります。
4 これは普通に名詞文(名詞述語文)の説明なのではないでしょうか。「トランプさんは大統領だ」など。
したがって、正解は1になります。
☞超重要絶対暗記 《必須成分と随意成分》
⦿必須成分:文の基本的構造において、述語とともに必要不可欠な成分。たとえば、[今日 安倍さんが 国会で 布マスクを つけていた]という文の場合、「安倍さんが 布マスクを つけていた」が必須成分となる。そして、必須成分の中で、ガ格成分を「主語」、その他の成分を「補語」という。
⦿随意成分:文の基本的構造において、必ずしも必要とされるわけではない成分。[今日 安倍さんが 国会で 布マスクを つけていた]という文の場合、「今日」「国会で」が随意成分に当たる。随意成分の中で、時(「今日」)」や場所(「国会で」)などを表す成分を「状況語」、副詞などの成分を「修飾語」という。
問2 「迷惑受身(間接受身)」の例として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚受身〛P62
受身文には、直接受身文と間接受身文(迷惑受身文)と持ち主の受け身文の3種類があります。
・直接受身文
[トランプさんが キムさんを 挑発した]を受身文にすると、[キムさんは トランプさんに 挑発された]となります。
主語と目的語を入れ替え、動詞を受身形にすることで能動文を受身文(受動文)にすることができます。逆の作業をすれば受身文から能動文への言い換えも可能です。
この文では「トランプさん」の「挑発する」という動作の対象は「キムさん」です。トランプさんが、キムさんに対して、キムさんをターゲットに、キムさんに狙いを定めて、「挑発する」という動作を行うわけです。このように、動作主が対象に対して直接的に影響を及ぼしている受身文を「直接受身文」といいます。
・間接受身文(迷惑受身文)
しかし、対応する能動文がない、つまり受身文から能動文へ言い換えられない受身文が存在します。
たとえば、[(私は) 雨に 降られた]です。この文の能動文は存在しません。なぜなら、「降る」は目的語をとらない自動詞であり、[雨が 私に 降った]などとはならないからです。
キムさんを挑発するトランプさんとは違って、「雨」は、私に対して降ってきているわけでも、私に向けて、私を狙って、私めがけて降ってきたわけでもありません。つまり、動作主の動作と対象との間に直接的な関係はないわけです。このような受身文を「間接受身文」といいます。
間接受身文は、「雨に降られた」「赤ちゃんに泣かれた」「妻に先立たれた(死なれた)」など、迷惑を被る場合が多いため、「迷惑受身文」ともいわれます。個人的には、「自意識過剰受身文」と思っています。
1 直接受身文。能動文は「先生が私に掃除を頼んだ」になります。
2 直接受身文。能動文は「知人が夫を批判した」になります。
3 間接受身文。能動文を作ることはできません。
4 直接受身文。能動文は「若者が私に席を譲った」になります。
したがって、正解は3になります。
☞超重要絶対暗記 《迷惑受身(間接受身)》
⦿迷惑受身(間接受身):能動文の出来事から間接的に影響を受ける人を主語にする受身文。直接受身のように、能動文の対象(目的語)を主語にするわけではないので、自動詞文からも受身を作ることができる。多くの場合、マイナスの影響を受けるため、迷惑受身文とも呼ばれる。
なお、受身文のもうひとつの種類である「持ち主の受身文」については、赤本P63で確認しておきましょう。
問3 「自動詞」に関する記述として不適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚意志動詞と無意志動詞〛P75、P78「表1-1-32 日本語の動詞分類」
1 問2で問題となった「迷惑受身(間接受身)」のことを言っているのだと思います。「雨に降られた」「赤ちゃんに泣かれた」「妻に先立たれた/死なれた」など迷惑受身(間接受身)文は、対応する能動文がないため、「降られる」「泣かれる」「先立たれる(死なれる)」などは、動詞の受身形というより自動詞として機能していることが分かります。
2 動詞の分類のひとつに「意志動詞」と「無意志動詞」の分け方があります。自動詞についても、意志的な意味を持つものに「遊ぶ」「歩く」「泣く」「眠る」など、非(無)意志的な意味を持つものに「落ちる」「燃える」「倒れる」「壊れる」などがあります。よって、選択肢2の記述は適当と言えます。
3 選択肢を読んでもピンと来ない人は、実際に対応する他動詞をもつ自動詞を考えてみましょう。
(自動詞)-(他動詞)
落ちる - 落とす
燃える - 燃やす
倒れる - 倒す
壊れる - 壊す
消える - 消す
曲がる - 曲げる など。
「落ちる」「燃える」「倒れる」「壊れる」「消える」「曲がる」のいずれも、主体の変化を表わすものと言えるので、選択肢3の内容は適当と言えそうです。
4 3で挙げた自動詞を見てみると、語末の形態が「-asu」となるものはひとつもないことが分かります。逆に他動詞には、「燃やす」や「壊す」など、語末の形態が「-asu」になるものが散見されます。いずれにしても、選択肢4の記述が適当ではないことが分かると思います。
したがって、正解は4になります。
☞超重要絶対暗記 《意志動詞と無意志動詞》
⦿意志動詞:意志的な動作を表す動詞。命令形と意向形を持つ。たとえば、「遊ぶ」であれば「遊べ」(命令形)、「遊ぼう」(意向形)、「見る」であれば「見ろ」、「見よう」など。
⦿無意志動詞:意志のない動作を表す動詞。命令形と意向形を持たない。たとえば、「光る」、「飽きる」など。
問4 「文法カテゴリー」に関する記述として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:P116最下段「格とは、名詞や代名詞が・・・」
P62~「5 ヴォイス(態)」
P72~「6 アスペクト」
P78~「7 テンス」
P84~「8 モダリティ」
「文法カテゴリー」とは、述語にくっついて文法的な意味を付加するもので、「ヴォイス」「アスペクト」「テンス」「モダリティ」の4つの種類があります。文に現れる順番は、必ず「ヴォイス」→「アスペクト」→「テンス」→「モダリティ」の順で述語に続いていきます。
それぞれの文法カテゴリーについて簡単に説明すると以下の通りです。
☞超重要絶対暗記 《文法カテゴリー》
⦿ヴォイス | 受身、使役、使役受身、可能、自発などの「態」を表わしている部分。 |
⦿アスペクト | 動き始めなのか(開始)、動きが進行している最中なのか(継続)、動き終わったのか(完了)など、動作のどの局面かを表わしている部分。 |
⦿テンス | 過去、未来などの「時制」を表わしている部分。 |
⦿モダリティ | 「(明日は寒い)みたい/ようだ/そうだ/に違いない/はずだ」など、話し手の主観を表わしている部分。 |
1 条件を表わすレバ節には、「読み始めれば」「読み続ければ」「読み終われば」のように、ヴォイスだけでなく、アスペクトも出現させることができるので、選択肢1の記述は適当とは言えません。
2 [昨日は一日中怒られながら、仕事したよ]などのように付帯状況のナガラ節にヴォイス(例文では受身)は出現させることができます。しかし、✕読み終わりながら、✕読み続けながら、などのようにアスペクトを出現させることはできません。✕読んだながら、✕読むながら、などテンスも不可、✕読むはずながら、✕読むだろうながら、のようにモダリティも出現させることはできません。よって、選択肢2の記述は適当と言えます。
3 文法カテゴリーは、必ずヴォイス→アスペクト→テンス→モダリティの順番で現れるので、モダリティがヴォイスに先行することはありません。よって選択肢3の記述は適当ではありません。
なお、「読ませていただろう」を文法カテゴリーに分けると、「読ま」(語幹)+「せ」(モダリティ)+「てい」(アスペクト)+「た」(テンス)+「だろう」(モダリティ)となります。
4 選択肢3同様、文法カテゴリーの順番において、テンスがヴォイスに先行することはないので、選択肢4の記述も適当ではありません。
したがって、正解は2になります。
☞超重要絶対暗記 《文法カテゴリーの文に現れる順番》
⦿文法カテゴリーが文に現れる順番は、必ず「ヴォイス」→「アスペクト」→「テンス」→「モダリティ」の順。
問5 「話し手が何を主語にするかは談話の中での視点の統一にも関わっている」に関する記述として適当なものを選ぶ問題
この問題も、自分で例文を作ってみて、それぞれの選択肢の内容が適当かどうか検証していくのがいいと思います。
1 たとえば、[2020年6月19日にジャニーズ事務所を退所した元NEWSの手越祐也(32)が会見を開いた。手越は、冒頭で「これまで事実と違う報道が多すぎた。自分の口から真実を伝えたい」とコメントした]というように、1文目で既に出てきている情報であっても、2文目で「手越」を主語にできるので、選択肢1の記述内容が適当でないことが分かる思います。
2 たとえば、無生物の名詞である地震が津波を引き起こした場合、地震を主語にして「地震が津波を発生させた」という言い方よりも、津波を主語にした「地震によって津波が発生した」という方が自然だと思います。よって、選択肢2の記述は適当でないと思います。
3 迷惑受身(間接受身)の「雨に降られた」「赤ちゃんに泣かれた」「妻に先立たれた(死なれた)」を考えてみれば、「聞き手に視点から述べられている」とする選択肢3の内容が適当ではないことが分かります。
4 たとえば、「勝った/負けた」の表現をする場合、伝統の巨人阪神戦で、巨人ファンは「巨人が阪神に勝った」「巨人が阪神に負けた」と表現しますが、巨人ファンが「阪神が巨人に負けた」とか「阪神が巨人に勝った」ということはありません。
「結婚する」などの場合も同様です。世間的には「山里亮太と蒼井優が結婚した」となりますが、芸人仲間であれば「山ちゃんが蒼井優と結婚した」。蒼井優の友だちであれば「優ちゃんが山里と結婚した」となるでしょう。
このように、巨人ファンなら巨人側の視点、芸人なら山ちゃん側の視点、蒼井優の友だちなら優ちゃん側の視点で語られるので、選択肢4の記述内容は適当であると言えます。
したがって、正解は4になります。
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