2020年6月29日月曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題7の解説

問1 「プレゼンテーションを行う際の留意点」として適当なものを選ぶ問題


この問題はプレゼンのテクニックに関するものなので、日本語教育というよりも、大学や仕事でプレゼンをすることに慣れている人にはそんなに難しくない問題だと思います。


1 制限時間を超過しそうな場合は、スピードを上げて全てを伝えようとするのではなく、重要度の低い箇所をとばし、主張したい大事な部分の時間を確保するようにすることが大切です。

2 プレゼンテーションの大まかな内容や話の展開が分からなければ、聞き手は落ち着いて聞くことが出来ません。最初に概要や構成を伝えることは、聞き手の理解を助けるためのプレゼンテーションの重要なテクニックと言えます。

3 強く主張したい部分は、声のボリュームを上げる、ゆっくり話すなど声のトーンやテンポを変え、抑揚をつけて話すことが大切です。

4 プレゼンテーションの内容が聞き手に伝わらなければ意味がありません。できるだけ分かりやすい言葉を使用することが大切です。


したがって、正解は2になります。




問2 「ルーブリック」に関する記述として適当なものを選ぶ問題


ルーブリックに関して赤本には記載されていませんが、重要ワードなのでインターネット検索などで、その内容を把握しておきましょう。




1 ルーブリックは、評価の項目ごとに達成度レベルをチェックする配点表であり、ルーブリックを用いた評価をパフォーマンス評価とも言います。よって、選択肢1の内容は適当と言えます。

2 これは項目応答理論に基づくテスト形式のことを言っているものと思われます。

3 ルーブリックは、評価の項目ごとに達成度レベルをチェックする配点表であり、各項目にコメントを書く欄はありません。

4 ルーブリックは、自由記述による評価方法ではありません。


 したがって、正解は1になります。


☞超重要絶対暗記 《ルーブリック》
(参考)ルーブリックとは?新しい学習評価の実態と評価表の作り方│Ritori

⦿ルーブリック:学習の達成度を表を用いて測定する評価方法。これまでのペーパーテストは、学習者が主体となって能動的に学習するアクティブラーニングの評価に適していないため、アクティブラーニングに適した新たな評価方法として近年注目されている。

ルーブリックの特徴
⦿ディスカッションやグループワークなどで学習する「技能」「表現力」「思考力」「判断力」といった実演でのパフォーマンスを評価できる。
⦿「興味・関心」「意欲」「態度」などの課題への取り組み姿勢を評価できる。
⦿評価する対象や内容に合わせて、評価基準と評価の項目数を調整することができるため、様々な学習の場に適した評価基準を設定することができる。
⦿学習者の評価基準を開示することで、学習者が「いま自分がどの項目をどれくらいできているのか?」という自己評価を実施しやすくなる。など




問3 「情報の示し方」として不適当なものを選ぶ問題


 この問題も、パワーポイントなどでプレゼン用の資料を作成するときのテクニックに関するものですが、板書などにも共通するところが多い内容です。


1 一つの文に多くの情報を盛り込んでも、聞き手が一度ですべての情報を把握することは困難です。よって、情報ごとに文を分けるということは「情報の示し方」として適当と言えます。

2 アニメーションや効果音には確かに聴衆を引き付ける効果がありますが、それらの多用は内容に対する聞き手の注意力を散漫にさせます。アニメーションや効果音を使用する場合は、強調すべき大事なところのみに使用するのが効果的と言えるでしょう。よって、選択肢2の内容は適当とは言えません。

3 出典の情報を示さずに、スライドの中で図や表を引用すれば、著作権法の侵害になります。よって、選択肢3の内容は適当と言えます。

4 スライドの文字数が多いと、聞き手は読むことに集中してしまい、発表者の声が耳に入らなくなってしまいます。スライドの文字数を減らし、読まなくても見てわかるスライドが理想的と言えます。よって、選択肢4の内容は適当と言えます。


したがって、正解は2になります。




問4 「プレゼンテーションの練習」の際に、学生が用いた表現とその言語現象の組み合わせとして適当なものを選ぶ問題

 📖赤本(第4版)関連箇所:〚「ら抜き言葉とさ入れ言葉」〛P71


1 「分かんない」は「分からない」の「ら」が撥音化したものであるため、この言語現象は「ら抜き言葉の使用」ではありません。

2 「いかれません」はもともとは正しい表現です。しかし、「れる/られる」には、自発、可能、尊敬、受身の意味があり、どの意味で使っているのか紛らわしいため、可能の意味を表わすときには、一般的には可能動詞の「いける(行ける)」を使用します。この可能動詞は五段活用の動詞から作ることができます。

一方、「ら抜き言葉」というのは、「食べられる」を「食べれる」、「着られる」を「着れる」としたものです。下一段活用の「食べる」や上一段活用の「着る」からは可能動詞をつくることはできないにも関わらず、可能動詞のように「食べれる」「着れる」と使ってしまうことが少なくありません。このように下一段活用や上一段活用の動詞を可能動詞のように使ってしまっている言語現象を「ら抜き言葉(の使用)」といいます。

よって、選択肢2は「ら抜き言葉の使用」ではないため、適当ではありません。

3 正しくは「終わらせようと・・・」であり、「終わらせようと・・・」と言う言語現象は「さ入れ言葉の使用」と言えます。

4 「分析させていただきました」が「さ入れ言葉の使用」だとすれば、正しくは「分析せていただきました」になってしまいます。


 したがって、正解は3になります。




問5 「質疑応答」に関して、発表者に対する指導として不適当なものを選ぶ問題


これもプレゼンテーションにおける質疑応答のテクニックに関する問題ですが、授業にのぞむ教師の姿勢にも共通する部分が少なくありません。


1 質問が出た際に、その質問に関するスライドをすぐに表示し、その内容を全員で共有できるできるようにする必要があります。よって、スライドの画面は消さずにつけておくことが適切と言えるでしょう。

2 分からないことを適当に答えてはいけません。よって、選択肢2は「質疑応答」に関する発表者への指導として適切と言えます。

3 考察が及んでいる内容に関する質問に対しては、簡潔に分かりやすく応答できるように、質問事項をあらかじめ予想し、回答や資料を準備しておくことが必要です。

4 どのような内容であれ、プレゼンテーションを初めて聞く聞き手が、その内容を一度で完璧に理解することは簡単なことではありませんし、聞き手はあらかじめ質問内容を準備しているわけでもありません。選択肢4の内容の通り、発表者には質問者の意図を読み取る謙虚な姿勢が求められます。


したがって、正解は1になります。

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