A【アクセント】
(1)アクセントの機能に関する問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚アクセントの機能〛P428
(ア)は、日本語教育の知識というより、日本語の語彙力の問題です。「区別」と「弁別」は類義語なので、(ア)で選択肢を1か2の二択に絞れるのではないでしょうか。
(イ)については、「指示」というのは読んで字のごとく指し示すことで、「指示機能」は「こそあど」(指示代名詞)が持つ機能のことです。
「統語機能」の「統語」は、言語学で「統語論」という分野がありますが、語の配列やまとまりを示す働きのことを言います。
したがって、正解は2になります。
具体的には、アクセントの弁別機能とは、「雨」と「飴」、「箸」と「橋」、「牡蠣」と「柿」などのようにアクセントの違いによって言葉が区別(識別)されることで、
アクセントの統語機能とは、たとえば「今日麩の味噌汁」と「恐怖の味噌汁」は、両方とも同じ音「きょうふのみそしる」ですが、アクセントに違いによって「きょ(高)う(低)ふ(高)」=「今日麩」なのか「きょ(高)う(低)ふ(低)」=「恐怖」なのか理解することができます。このように、どこまでがひとまとまりの語なのかを示す働きをアクセントの統語機能といいます。
ちなみに、赤本には「にわとり」(「2羽鳥」と「鶏」)の例が挙げられています。他にどういうものがあるか自分で考えてみるとよろしいかと思います。
(2)アクセントの「超分節的特徴」に関する問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚イントネーション〛P434
難しい知識に関する問題です。問われている用語「超分節的特徴」も難しいし、正解となる選択肢の「フォルマント」も難しい・・・・
で、フォルマントの意味を調べてみると、以下のようにさっぱり意味が分かりません。
(世界大百科事典 第2版より)
声道(声門から上の咽頭、口腔、鼻腔を含む部分)内の空気の共鳴周波数に対応する倍音群。母音や鼻音、流音は舌や顎を移動させて声道の形を変えることにより独自の共鳴室をつくる。こうした共鳴室に応じて母音は三つの固有の倍音すなわちフォルマントをもつ。音声分析装置ソナグラフにより図示されたソナグラムには、周波数の縦軸に沿って3本の濃い線が現れる。これを下から第1、第2、第3フォルマントと呼ぶ。重要なのは第1フォルマント(F1)と第2フォルマント(F2)であって、これらが母音の音質を決定する。
どうやら音声学の用語らしいですが、この問題の狙いは、「フォルマント」という言葉の意味を知っていないといけないというより、その他の選択肢(イントネーション、リズム、ポーズ)が「超分節的特徴」であることを知っていないといけない、つまり消去法で「フォルマント」を選ぶ、そんな感じなのではないでしょうか。
で、「超分節的特徴」とは、子音や母音などの分節音とは異なり、語に付属して決まるアクセントや、文に付属して決まるイントネーションのように、個々の分節音を超えた音連続に関係する特徴のことで、アクセントやイントネーションの他、リズム、ポーズ、速さ、プロミネンスなどを指すようです。
説明を読んでも、分かったような分からないような・・・・いずれにしても難しい問題です。
ちなみに、他の選択肢については以下の通りです。
📌攻略のポイント
⦿私の中ではこの問題は捨て問題です。日本語教育能力検定試験の合格ラインは7割です。マークシートだけで220問あるので、60問は間違えられます。100点を採る必要はありません。
つまり、全ての問題を理解しようとする必要はないということです。
僅かな難しい問題や苦手な項目の勉強に頭を悩ませて時間を割くぐらいなら、苦手意識が少なく勉強しやすい項目を優先的に勉強して確実に得点できるようになることを心がけましょう。
(3)「強弱アクセント」の言語に関する問題
問題文にあるように、アクセントは「高低アクセント」と「強弱アクセント」に大別されます。
で、選択肢の中で強弱アクセントなのはポルトガル語なので、
正解は4になります。
この問題は知っていない正解できません。では、世界中のすべての言語について高低アクセントか強弱アクセントかを知っていなければならないかと言えば、そうではないでしょう。
日本語教師になるうえで、知っておかなければならない言語の特徴だけ押さえておけばよろしいのではないでしょうか。
たとえば、今回問われたポルトガル語は、日本に多く住んでいる日系ブラジル人の母語として出題されたものかと思われます。
2019年度の試験Ⅰの問題3Aの(5)では、ベトナム語を選ぶ問題も出題されていますが、それはベトナムが近年では最大の送り出し国であり、日本語学習者の数も増えているからだと考えられます。
ということは、2020年度はネパール語が問われるかもしれません。ネパール語の特徴を押さえておくことをオススメします。
(4)「標準語(全国共通語)のアクセント」に関する問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚日本語のアクセントの特徴〛P427~433
この(4)と次の(5)はともにアクセントの型に関する問題です。「型」というのは分かりやすく言い換えると「パターン」のことで、日本語には4つのアクセントの型がありますが、その前に「アクセントの滝」と「アクセントの核」について確認しておきましょう。
では、それぞれの選択肢の内容を見ていきましょう。
1 漢語名詞のアクセントは語末から3拍目で下がることが多いのかどうか、実際にいくつかの漢語名詞を挙げて検証してみましょう。ちなみに、3拍目で下がるということは、アクセントの型でいうところの中高型になります。
・勉強・・・べ(低)、ん(高)、きょ(高)、う(高) → 平板型で3拍目で下がらない。
・日本・・・に(低)、ほ(高)、ん(低) → 中高型で3拍目で下がる。
・日本語・・・に(低)、ほ(高)、ん(高)、ご(高) → 平板型で3拍目で下がらない。
・中華・・・ちゅ(高)、う(低)、か(低) → 頭高型で2拍目で下がる。3拍目では下がらない。
・中華料理・・・ちゅ(低)、う(高)、か(高)、りょ(高)、う(低)、り(低) → 中高型で5拍目で下がる。3拍目では下がらない。
・教科書・・・きょ(低)、う(高)、か(高)、しょ(低) → 中高型でも3拍目では下がらない。4拍目で下がる。
・黒板・・・こ(低)、く(高)、ば(高)、ん(高) → 平板型で3拍目で下がらない。
以上のことから、選択肢1の記述は適当ではないことが分かります。
2 複合名詞のアクセント型が後部要素によって決まることが多いのか、実際にいくつかの複合名詞を挙げて検証してみましょう。
・雨具・・・あ(低)、ま(高)、ぐ(低) → 中高型
・雨戸・・・あ(低)、ま(高)、ど(低) → 中高型
・雨樋・・・あ(低)、ま(高)、ど(高)、い(高) → 平板型
・雨粒・・・あ(低)、ま(高)、つ(高)、ぶ(低) → 中高型
・雨空・・・あ(低)、ま(高)、ぞ(高)、ら(高) → 平板型
・雨傘・・・あ(低)、ま(高)、が(高)、さ(高) → 平板型
・雨雲・・・あ(低)、ま(高)、ぐ(高)、も(高) → 平板型
・雨乞い・・・あ(低)、ま(高)、ご(高)、い(高) → 平板型
・雨降り・・・あ(低)、め(高)、ふ(高)、り(低) → 中高型
・雨粒・・・あ(低)、め(高)、つ(高)、ぶ(低) → 中高型
・雨風・・・あ(低)、め(高)、か(低)、ぜ(低) → 中高型
前部要素の「雨」は「あま」でも「あめ」でもすべて低高。一方の後部要素は、「空」は単独では「そ(高)、ら(低)」なのに「雨空」になると「ぞ(高)、ら(高)」、「傘」は単独では「か(高)、さ(低)」なのに「雨傘」になると「が(高)、さ(高)」となるなど、複合名詞になると後部要素のアクセントが変わることがあるので、
選択肢2の記述は適当と言えそうです。
今回は、前部要素が「雨」の複合名詞しか取り上げていませんが、他の複合名詞でも同じことが言えるのか確認しておくべきでしょう。
3 たとえば「気」と「木」で考えてみると、「気が付く」は「き(低)、が(高)」で平板型ですが、「木が(倒れる)」は「き(高)、が(低)」で頭高型になるので、選択肢3の記述は適当ではないと判断できます。
4 平板型は転ぶ、燃やす、変える、消える、など。中高型は、食べる、歩く、走る、泳ぐ、など。頭高型は、通る、通す、入る、帰る、返す、など。以上、3拍動詞の辞書形のアクセント型は3種類だけのようです。
したがって、
正解は2になります。
(5)「日本語の方言」のアクセントに関する問題
この問題は分かりません。
正解が4ということなので、無アクセントは東北・関東・九州などの一部地域に分布しているということらしいです。
1 近畿地方では語頭が高高で始まるアクセント型の名詞は存在するそうです。
2 一つの語に複数のアクセント型を有する方言もあるそうです。
3 名詞のアクセント型の種類数は方言間で異なっているそうです。
私の中でこの問題は捨て問題です。間違ってもいい問題数、安全を見て60問のうちの1問です。
こういう問題があと60問あっても合格することができるわけですから、楽勝です。