2020年7月15日水曜日

2018年度(平成30年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題3Cの解説

C 【言語表現のあいまいさ】

(11)「足」という言語表現の漠然性を表す例を選ぶ問題


問題文によると、左右や数、部位などが特定されていない使われ方をしている「足」の例を選べばいいことが分かります。


1 「タコには足が8本ある」の「足」は足全体のことを指し、特定の足や部位を指しているわけではないので、「あいまいさ」があるわけではありません。

2 「彼は足を組んで座った」の「足」は足全体のことを指し、足を組む動作は両方の足を使って行うことで左右を特定する必要もないので、「あいまいさ」があるわけではありません。
 
3 「彼は足を怪我した」の一般的な解釈は、「足首を捻った」とか「膝を擦りむいた」など足のどこかの部位を怪我したというものであり、両方の「足」を全体的に怪我したわけではありません。よって、選択肢3の表現は「あいまいさ」があると言えます。

4 「馬は足が速い」の「足」は歩くことや走ること、またはその能力の意味であり、人間や動物のからだの部位を意味するものではないので、左右や数、部位などと関係するものではありません。


したがって、正解は3になります。




(12)程度副詞「ちょっと」の例として不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚程度副詞〛P35


問題文中での説明にある、物の数量や程度を表す「ちょっと」などの副詞は、程度副詞と呼ばれるものです。


1 「ちょっと田中さん」の「ちょっと」は呼びかけで使われており、物の数量や程度を表わしているわけではありません。

2 「もうちょっと給料が上がったら・・・」の「(もう)ちょっと」は「(もう)少し」の意味で、物の数量や程度を表わしています。

3 「ちょっとだけ飲ませて・・・」の「ちょっと(だけ)」は「少し(だけ)」の意味で、物の数量や程度を表わしています。

4 「いつもよりちょっと寒かった」の「ちょっと」は「少し」の意味で、物の数量や程度を表わしています。


したがって、正解は1になります。



 

(13)「構造的曖昧性」の例を選ぶ問題


まずは問題文を読んで、「語彙的曖昧性」と「構造的曖昧性」の違いをよく理解してから選択肢に臨みましょう。

⦿語彙的曖昧性:語が本来持っている辞書的意味に関する曖昧性
⦿構造的曖昧性:語形成のレベルや文のレベルで生じる構造の曖昧性


1 「10名くらい」というのは曖昧な表現ですが、これは「くらい」という語が本来持っている辞書的意味に関する曖昧性なので、選択肢1は「語彙的曖昧性」の例と言えます。

2 「ざっと1000人ばかり」というのは曖昧な表現ですが、これは「ざっと」や「ばかり」という語が本来持っている辞書的意味に関する曖昧性なので、選択肢2は「語彙的曖昧性」の例と言えます。

3 曖昧な表現は確認できません。

4 「昨日大学で友だちが財布を落としたという話を聞きました」は、財布を落としたのが昨日なのか、話を聞いたのが昨日なのか、大学で財布を落としたのか、大学で話を聞いたのかなど、解釈の可能性が複数存在し、そのいずれの解釈であるのかが確定することができません。これは文のレベルで生じる構造による曖昧性なので、選択肢4は「構造的曖昧性」の例として適当と言えます。


したがって、正解は4になります。




(14)言語情報が不足していることによって解釈が決定できない例を選ぶ問題


1 「山田さんも誘う?」「いいよ」というメールのやり取りでは、「いいよ」の意味が「(誘っても)いいよ」なのか「(誘わなくて)いいよ」なのかが分かりません。

これがメールではなく口頭でのやり取りであれば、上がり調子で言えば「(誘っても)いいよ」だし、下がり調子で言えば「(誘わなくて)いいよ」というように語調によって「いいよ」の意味を判別することができます。

よって、選択肢1は、「語調」という言語情報が不足していることによって解釈が決定できないケースの例として、適当と言えます。

2 「仕事が早く終われば」の後に続くのは「行く」であり、解釈で迷うことはありません。

3 「結構ですよ」は「(資料を)差し上げられますよ」の意味であり、解釈で迷うことはありません。

4 二人のやり取りには、解釈で迷っているところはありません。


したがって、正解は1になります。




(15)授業後に学習者が教師に向かって「先生、私には妹がいます」と言った場合のあいまいさの説明を選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚命題とモダリティ〛P51,84


命題とは、文の中心的な骨格となる部分のことです。たとえば、「雨が降るかもしれない」という文であれば、「雨が降る」が命題で、それに命題の内容を発話者がどのように捉えているかを表すモダリティ「かもしれない」から成り立っています。

もし発話者が「雨が降る」という命題に対して強い自信を持っていれば「雨が降るに違いない」「雨が降るはずだ」などの表現になるわけです。


1 「先生、私には妹がいます」の命題は「私には妹がいる」であり命題は解釈可能です。文法性の判断がつかないところはありません。

2 文法性の判断がつかないところはありません。

3 命題は解釈できても、脈絡もなく「私には妹がいます」と言われると、どういうつもりでそれを言ったのか、なんのつもりで言ったのか理解することができません。よって、「命題は解釈可能でも、発話者の意図がはっきりしない」という選択肢3の内容は適当と言えます。

4 発話者の意図ははっきりしませんが、命題は解釈可能です。


したがって、正解は3になります。

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