2020年6月12日金曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題5の解説

 問1 技能シラバスの教材の目次として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚シラバスの分類〛P200


技能シラバスとは、赤本P200の「表2-1-3 構成方法による分類」には以下のように書かれています。
「聞く」「話す」「読む」「書く」という4技能のそれぞれのマイクロスキルと呼ばれる下位技能を伸ばすことを集めたシラバス
 例:発表の仕方・論文の書き方 

分かりにくいですよね。

要するに、「聞く」技能、「話す」技能、「読む」技能、「書く」技能、それぞれ技能ごとに習熟を目指すシラバスで、

例えば、「話す」技能であれば、「簡単な自己紹介をする」「図書館までの行き方を説明する」「面接の自己PRをする」「プレゼンテーションをする」など、「話す」技能に特化したシラバスのことです。


1 「書く」技能に特化した内容なので、技能シラバスと言えます。
2 場面を想定した内容なので、場面シラバスと言えます。
3 謝り方・断り方・依頼の仕方という、言語機能の側面に着目した内容なので、機能シラバスと言えます。
4 話題(トピック)に関する内容なので、話題シラバスと言えます。


したがって、正解は1になります。

選択肢のシラバスの他に、構造シラバス、課題シラバスもあるので、併せて確認しておきましょう。


☞超重要絶対暗記 《構成方法によるシラバスの分類》
⦿構造シラバス:文型・文法・語彙の観点から整理されたシラバス。
⦿場面シラバス:学習者が遭遇するであろう場面を想定し、そこで必要となる表現や語彙、決まり文句などを中心に集めたシラバス。
⦿機能シラバス:依頼や謝罪、申し出、誘い、断りなど、言語のコミュニケーション上の働き(機能)に注目したシラバス。
⦿話題シラバス:学習者の興味や関心事など、学習者が必要としている話題に関する文型、語彙、表現を集めたシラバス。トピックシラバスともいう。
⦿技能シラバス:「聞く」「話す」「読む」「書く」という言語の4技能のそれぞれの熟達を目指すシラバス。スキルシラバスともいう。
⦿課題シラバス:目標言語を使ったコミュニケーションに必要なタスクをリストアップしたシラバス。タスクシラバスともいう。


📡関連する過去問
2018年度(平成30年度) 試験Ⅰ 問題7 問3
https://kenteigoukaku.blogspot.com/2020/07/2018307.html




問2 教材の構成要素のうち、最も時世の影響を受けにくいものを選ぶ問題


問われていることは、「時世の影響を受けないもの」ではなく、「最も時世の影響を受けにくいもの」なので、「どれも少なからず時世の影響は受けるが、その中でも、最も影響の少ないものを選べ」という問題です。


1 祖父母の時代や両親の時代と比べて、生活様式だけでなく価値観やモラルなども大きく変わっているのではないでしょうか。たとえば〇〇ハラスメントなどは、昔では当たり前のように行われていたことで、いまは迷惑行為として禁止されていることも少なくありません。通信手段にしても、個人として何も持っていなかった時代から、ポケベル→ガラケー→スマホへと進化しています。読み物のトピックには流行や時事的な話題、その時の生活環境に即した内容が多いため、時世の影響を受けにくいとは言えないと思います。

2 コンビニエンスストアや娯楽施設等、会話が行われる場面も、時代や世代によって変化するものと思います。特に自分と両親/祖父母の世代で、会話の場面が変わっていないということは考えずらいのではないでしょうか。

3 文法が両親や祖父母世代と異なるということは、ほとんどないのではないでしょうか。

4 新語・流行語大賞などというものがあるように、毎年、新しい語彙が生まれいます。若い世代と年配の世代では使っている語彙にも違いが見られると思います。語彙についても、早ければ数年単位で影響を受けるものと考えられます。


したがって、正解は3になります。




問3 初級のモデル会話を作成する際の留意点として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚初級・中級・上級レベルの特徴〛P220、〚レベル別言語技能の指導〛P221


1 学習者のレベルに合わせた教材を使用する必要があります。赤本P220「6.3 各レベルの特徴」の「初級レベル」にも、「<言語技能面>短くて単純な情報の聞き取りや発話・・・・」とあります。選択肢1の内容は、上級レベル向けと言えるのではないでしょうか。

2 自分の言いたい表現に置き換えることができなければ、そのモデル会話は、実際のコミュニケーションでまったく役に立たないものになってしまいます。自分の言いたい表現に置き換えて、日常生活の中で応用して使えるモデル会話にすることが重要です。

3 日本語母語話者の会話を簡素化せずにそのまま使えるのは上級レベルです。初級レベルでは簡素化した単文で短い文を使用すべきなので、選択肢3の内容は適当ではありません。

4 話の内容や展開が不自然だと、間違って解釈したり、実際の会話で使うことができないので、選択肢4の内容は適当とは言えません。


したがって、正解は2になります。




問4 中級の聴解教材を作成する際の留意点として不適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚中級レベルの特徴〛P220、〚レベル別言語技能の指導〛P221、〚タスク中心の教授法〛P193


1 初級の目標は、個人的な情報や基本的で日常的、具体的なことについての言語活動ができるようになることなので、語彙もおのずと基本的で日常的、具体的なものに偏ったものになりますが、中級は、具体的な話題に加え抽象的な話題についての言語活動ができ、多少複雑な内容も理解できるようになる必要があるため、幅広い様々なトピックから偏りのない語彙と知識を学習する必要があるでしょう。よって、選択肢1の内容は適当と言えます。

2 正確さを重視した初級に対し、中級では流暢さを重視します。タスク中心の教授法の長所に「流暢さと正確さの両面を扱える」(赤本P193)とあることからも、流暢さを重視する中級の教材にタスクを取り入れることは適切と考えられます。

3 談話の文型や長くて複雑な情報の聞き取りを扱うので、論理的で一貫性のあるテクストを選ぶことは適切と言えます。

4 中級ではインフォーマルな聞き取りや表現を学習するので、モダリティなどの心的態度を表わす表現も扱っていくべきでしょう。


したがって、正解は4になります。


☞超重要絶対暗記 《「学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」(CEFR)》
国際交流基金の以下のサイトにあるA1~C2の内容をよく理解しておきましょう。
https://jfstandard.jp/pdf/whole_standard.pdf




問5 生教材の扱い方として真正性が保たれている例を選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚教材・教具〛P202、〚真正性〛P211※32


オーセンティシティとは、赤本によると以下の通りです。(赤本P211からの抜粋)
学習内容やテスト内容などが学習者にとって、より現実性を持っているかを指す。

赤本の説明はいまいち分かりづらいものが多いですが、一言で分かりやすく言うと、どれだけ実際の使い方に即しているかということです。


1 スーパーのちらしは、その店の商品や価格を把握したり、お買い得品を把握するためのものです。文字種の使い分けに気づかせるという使い方は、スーパーのちらしの実際の使い方に即していないので、選択肢1は真正性が保たれているとは言えません。

2 食品表示には、賞味期限や食材が記載されているものなので、菓子類の食品表示を用いて、賞味期限やアレルギー食材を確認させる選択肢2の内容は真正性が保たれていると言えます。

3 駅のアナウンスは、列車の運行状況や次の駅、到着時間等を案内するためのものです。敬語表現に気づかせるという使い方は、駅のアナウンスの実際の使い方に即していないので、選択肢3は真正性が保たれているとは言えません。

4 折り紙の本は、折り紙を折るためのものです。表現や文型を確認させるという使い方は、折り紙の本の実際の使い方に即していないので、選択肢4は真正性が保たれているとは言えません。


したがって、正解は2になります。


☞超重要絶対暗記 《真正性(オーセンティシティ)》
⦿真正性(オーセンティシティ)とは、学習内容やテスト内容などが、学習者にとって、どれだけ現実性を持っているかどうか。どれだけ実際の使い方に即しているかということ。


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