問1 「言語に関わる能力」に関する記述として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:P300,P301
BICSとCALPはカミンズが提示した言語能力の2つの概念です。
BICS(ビックス)はBasic Interpersonal Communicative Skillsの略で、日本語では生活言語能力と言います。生活場面で必要とされる言語能力で、文脈(コンテクスト)の支えがあるため、認知的な負担は小さく、2年ほどで修得可能だとされています。
CALP(カルプ)はCognitive Academic Language Proficiencyの略で、日本語では学習言語能力と訳されます。学習場面で必要とされる言語能力で、分析・統合・評価といった高度な思考技能が必要とされます。文脈(コンテクスト)の支えが少ないため、認知的に負担が大きく、習得には5~7年以上必要だと言われています。
1 BICSとCALPという概念は、言語能力を生活の場面に関わる能力と学習の場面に関わる能力という切り口によって分けた概念であり、母語/第一言語と二言語間の関係性に関わった分類ではありません。よって、選択肢1の内容は適当ではないと言えます。
2 BICSは生活場面で必要とされる言語能力なのでコミュニケーションを介して発達するのは間違いないものと思いますが、果たして、分析・統合・評価といった高度な思考技能であり低コンテクストの状況で働くCALPも、コミュニケーションを介して発達するものなのでしょうか?ちょっと、私には分かりません。
選択肢2は保留にしておいて、他の選択肢がすべて適当な内容でなければ、この選択肢を答えとして選ぶのがよろしいのではないでしょうか。
3 生活場面に依存しているのは学習言語能力(CALP)ではなく、生活言語能力(BICS)なので、適当な内容とは言えません。
4 文脈に支えられていない学習言語能力の方が認知的に負担が大きいため習得に時間がかかると言われています。よって適当な内容ではありません。
正解は2になります。
☞超重要絶対暗記 《BICSとCALP》
⦿生活言語能力(BICS):Basic Interpersonal Cummunicative Skills。生活場面で必要とされる言語能力で、文脈(コンテクスト)の支えがあるため、認知的な負担は小さく、2年ほどで修得可能だとされる。
⦿学習言語能力(CALP):Cognitive Academic Language Proficiency。学習場面で必要とされる言語能力で、分析・統合・評価といった高度な思考技能が必要とされる。文脈(コンテクスト)の支えが少ないため、認知的に負担が大きく、習得には5~7年以上必要だと言われている。
問2 「フィードバック」の一つである「リキャスト」の例として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚明示的フィードバック・暗示的フィードバック〛P229、〚リキャスト〛P223、P277
学習者の誤用をはっきり示す明示的フィードバックに対し、自然な応答の中でさりげなく示す訂正方法を暗示的フィードバック(リキャスト)と言います。
例えば、「寒くになりました」に対して、「そうだね。寒くなったね」と応答することで、指摘することなく間違いに気付かせる訂正方法が暗示的フィードバック(リキャスト)です。
1 誤用をそのまま繰り返すことは、学習者に誤用の存在をはっきり提示することになるので、明示的フィードバックに当たります。
2 正しく言い直すことを要求することは、学習者に誤用の存在をはっきり提示することになるので、明示的フィードバックに当たります。
3 誤用の部分の前まで繰り返すことは、その後に誤用があることをはっきり提示することになるので、明示的フィードバックに当たります。
4 会話の自然の流れの中で、学習者の間違いをはっきり提示することなく、正しい表現の修得を促すものであり、暗示的フィードバック(リキャスト)の例として最も適切と言えます。
したがって、正解は4になります。
☞超重要絶対暗記 《明示的フィードバックと暗示的フィードバック(リキャスト)》
⦿明示的フィードバック:学習者に間違いの存在をはっきり示すフィードバック。
⦿暗示的フィードバック:自然な応答の中でさりげなく訂正する方法。リキャストとも呼ばれる。
📡関連する過去問
2018年度(平成30年度) 試験Ⅰ 問題4 問4
https://kenteigoukaku.blogspot.com/2020/07/2018304.html
問3 「児童生徒の不安を軽減するような適切な対応や指導」の際の留意点として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚日本におけるバイリンガル教育〛P303~
1 日本に暮らす日本語を母語としない児童生徒にとって、不自由な言語使用によって自分の意思や気持ちがうまく伝えられない状況が、不安な状況であることは容易に想像することが出来ます。文法が出来るようになれば意思を伝えられなくてもいいという指導は、児童生徒の人権を軽んじた指導と言えるのではないでしょうか。よって、「文法などの正確さよりも意思を伝えられるようになることを優先する」という選択肢1の内容は適切であると考えます。
2 日本語指導が必要な児童生徒には、取り出し授業や入り込み授業、JSLカリキュラムなどが用意されています。選択肢2は「特別の教育課程」と矛盾する内容であり、適切ではないと判断することができます。
3 不自由な言語使用によって自分の気持ちや要望をうまく伝えられないことはなによりも不安で、大きなストレスであることは容易に想像できます。「日本語の運用能力の向上」を優先して、「母語を使わないようにする」ことは、「児童生徒の不安を軽減するような適切な対応」とは言えません。
4 文化や規範の押し付け、強要は、多文化共生社会の構築の観点や、子どもの権利の観点から適切な対応・指導とは言えません。
したがって、正解は1になります。
☞超重要絶対暗記 《取り出し授業と入り込み授業》
⦿取り出し授業:日本語指導が必要な児童生徒を対象にした、日本語指導を行うための特別授業。通常授業を受ける代わりに別室で提供する特別プログラム。取り出し指導。
⦿入り込み授業:日本語指導が必要な児童生徒が通常授業を受ける際に、日本語指導者や支援者がクラスに入り込み、その児童生徒の授業理解を助けるやり方。入り込み指導。
⦿JSLカリキュラム:日本語指導が必要な外国人児童生徒を対象にした教育の指針。日本語指導と教科指導とを統合的に捉え、学習活動に参加するための力の育成を目的としている。
問4 「第二言語の習得が進むにつれ、母語が失われていくことがある」に関して、喪失されやすい順序として適当なものを選ぶ問題
すみません。分かりません。赤本にも母語が喪失順序の記述はありません。こういった問題は少し考えて分からなかったら、時間がもったいないので、開き直ってとっとと次の問題に移ることが重要です。
ちなみに、私なら、他の選択肢と最も共通する部分の多い選択を選びます。この問題の場合、1番目を文法にしているのは選択肢1と3、2番目を語彙としているのが選択肢1と2、3番目を音声にしているのが選択肢1と4であるので、他の全ての選択肢と共通する部分を持ち合わせている選択肢1を選びます。
が、正解は4のようです。
問5 「母語保持」に関する記述として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚イマージョン・プログラム〛P302,303、〚取り出し授業〛P305
1 イマージョン教育は、学校の教科内容を第二言語で指導することを言います。例えば、日本の小学校で、理科の授業を英語で行うなど。第二言語の習得を促進させるものであり、留学生などの母語を保持するためのプログラムではありません。
2 取り出し授業は、日本語指導が必要な児童生徒向けに用意された、日本語指導をするための特別な授業のことを言います。したがって、取り出し授業は、母語を保持するためのものではなく、第二言語を習得するための授業と言えます。
3 一般的に考えて、母語の知識や使用期間が短い年少者の方が、年長者に比べ、母語の使用期間も短いし定着も十分ではないということが言えると思いますが、この選択肢を正解とする根拠となるエビデンスがどこにあるのかは分かりません。
4 この選択肢に関しても、内容の正誤を判断するエビデンスがどこにあるのか分かりません。
このような問題は、選択肢を絞れるところまで絞って、あとは感覚で選ぶしかありませんね。3割間違っても合格できるので、分からない問題で悩んで時間を使うぐらいなら、分かる問題を確実に得点にするために時間を使いたいですね。
正解は3のようです。
0 件のコメント:
コメントを投稿