📖赤本(第4版)関連箇所:P125
プロトタイプとは(赤本P128からの抜粋)
こうしたカテゴリー成員の中で、より中心的な典型をプロトタイプという。つまり、プロトタイプは、①すぐに思い描ける、②長期的に安定的に記憶されている、③多くの人が同じように認定できる、④小さい頃から慣れ親しんでいる、というような性質を持つ。
たとえば、「鳥」を例にとると、日本人が鳥といって思い浮かべるのは、普段の生活の中で身近に目にすることができるスズメやハトやカラスではないでしょうか。ダチョウやペンギン、孔雀などの鳥を真っ先に思い浮かべる人は少ないと思います。もちろん、動物園でペンギンの飼育係の人などは真っ先にペンギンを思い浮かべるかもしれませんが、それは一般的とは言えません。つまり、日本人にとって、スズメやハトやカラスなどが鳥のプロトタイプに当たるものと言うことができるでしょう。
「落とす」という言葉にもたくさんの意味があります。「命を落とす」という使い方をすれば「死ぬ」という意味になるし、「面接で落とす」は「不採用にする」という意味だし、「容疑者を落とす」は「自白させる」、オークションなどでは「落札する」という意味でも使われます。しかし、それらの意味はいずれも「落とす」の典型的な意味とは言えません。「落とす」という言葉が持つ典型的な意味は、「物体が上から下へ落下すること」です。
国語辞典でも“物理的な落下”を表わす意味が一番目に記載されていると思います。
(大修館書店『明鏡国語辞典(第二版)』からの抜粋)
おと-す【落とす(▵墜とす・▵堕とす)】〘他五〙①上から下へ物の重みで物を移動させる。「シャベルで屋根の雪を──」「ブランデーを紅茶に──(=垂らす)」「突き──・蹴──」[語法]意図的でない行為にもいう。「うっかり本を床に──」「野手がフライを──(=受け損なう)」
また、スリーエーネットワーク『みんなの日本語 初級』で「落とす」が最初に出てくるのは第29課の「財布を おとして しまいました」という例文です。そのことからも学習者が最初に覚える「落とす」の意味は、物理的な上下の移動であることが分かります。
つまり、「スコップで屋根の雪を落とした」が、「落とす」という語を最もプロトタイプ的に用いている例と言えます。
したがって、正解は3になります。
☞超重要絶対暗記 《プロトタイプ》
⦿プロトタイプ:カテゴリーの事例のなかで、そのカテゴリーを代表する中心的な典型例。プロトタイプはそのカテゴリーの特徴のすべてを備えており、小さい頃から慣れ親しんでいて誰もがすぐに思い描けて、長期的に安定的に記憶されているものという性質を持つもの。
問2 「メンタル・レキシコン(心的辞書)」に関する記述として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚初級・中級・上級の違い〛P220
「メンタル・レキシコン(心的辞書)」というような難解な用語は赤本には載ってません。でも、だからと言って「メンタル・レキシコン(心的辞書)」という用語を見た瞬間に「あーーこの問題は分からないな」と諦めてしまってはいけません。
なぜなら、他の受験者もみんな知らない用語だからです。
ということは、この問題も、その用語を知っているかいないかといった知識を問うことがその目的ではないということです。
問題文の基本的な理解と基礎的な知識があれば十分に対処することができます。
では、選択肢を吟味して行きましょう。
まず、問題文から、メンタル・レキシコンは「脳のなかにある」もので「心的辞書」と言われるもの、つまり語彙に関する知識や記憶であることが分かります。
選択肢2や4は紙の辞書に関わる内容であることが分かると思うのですぐ消去できるのではないでしょうか。頭の中で語が50音順に並んでいるわけではないですし、記憶や知識はその都度、書き換えられますからね。それ以前に、選択肢4にある「改訂」という言葉は、書物や文書に対して使われる言葉なので、その観点からも適当ではないと判断できると思います。
(以下、大修館書店『明鏡 国語辞典』より)
かい-てい【改訂】〘名・他サ変〙書物・文書などの不備な点を改めて正すこと。「教科書を──する」「──版」(大修館書店『明鏡 国語辞典』)
次に、選択肢3に関して、日本語母語話者の語彙数を把握している人は少ないかもしれませんが、赤本にも記載してある基本事項である日本語学習者の語彙数から考えれば、選択肢3の内容が適当であるかどうか容易に判断することができます。
日本語学習者の上級レベルの語彙数が「約10,000語程度」(赤本P220「表2-1-10 初級・中級・上級のレベル」参照)ですから、選択肢3の「成人日本語母語話者の語彙数が5,000語前後」は少なすぎるということがすぐに分かるわけです。
ということで、正解は1になります。
ちなみに、日本語母語話者の理解語彙の数については、赤本に以下の記述があります。
(赤本P110からの抜粋)
日本語母語話者の理解語彙は、成人で40,000~50,000語程度だとされる。
※日本人母語話者の使用語彙数については記載がありません。
以上のように、「メンタル・レキシコン(心的辞書)」の用語を知らなくても、冷静に選択肢を吟味すれば正解を導き出すことができるので、分からない用語が出てきても焦らないことが大切です。
☞超重要絶対暗記 《初級・中級・上級の違い》
⦿初級レベル:学習時間300時間程度、語彙1,500~2,000語程度、漢字500字程度
⦿中級レベル:学習時間600時間程度、語彙5,000~7,000語程度、漢字1,000~1,500字程度
⦿上級レベル:学習時間900時間程度、語彙10,000語程度、漢字2,000~2,500字程度
問3 「『このハンガーに服を付けてください』のような誤り」に欠如している知識として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:P34「ダイクシス(deixis)」
P124上段(ダイクシスの記述)
P113「4.3 語構成」
「このハンガーに服を付けてください」というのは、文法的には間違っていませんが、日本語ではそういう言い方はしないという言葉の使い方や言い回しに関する誤りです。
日本語では、「ハンガー」に対しては「かける」という動詞を使います。
(✕)ハンガーに服を付ける→(〇)ハンガーに服をかける
このような語と語の関係性を「コロケーション」といいます。
したがって、正解は2になります。
この問題は、「コロケーション」の意味を分かっているかどうかを問う問題ですが、もちろん、コロケーションという用語を知らなくても、それ以外の3つの用語の意味を理解していれば、消去法から正解することもできます。
1 ダイクシスは、言葉の意味が発話の状況に大きく依存する表現のことをいいます。たとえば「昨日」という語が意味するものは、それが12月25日に発話されれば12月24日のことを指すし、7月1日に発話されれば6月30日のことを指します。「今日」「明日」「右」「左」なども同様です。このように発話の状況によって指示する内容が決定されるものがダイクシスです。よって、選択肢1は下線部Cのような誤りとは関係ありません。
3 語構成は、その語がどのように組み立てられているのか、単純語なのか、合成語なのか、合成語であれば複合語なのか派生語なのか畳語なのかといったことです。下線部Cの誤りは、語の組み立て方といったこととはまったく関係ないことが分かると思います。
4 試験Ⅰ問題1の(6)は転成名詞に関する仲間外れ問題が出題されましたが、転成とは、もともとの語が、品詞を変えて別の語になることを言います。話す→話(はなし)、笑う→笑い、釣る→釣り、攻める→攻め、守る→守り、泳ぐ→泳ぎ、など。よって、下線部Cの誤りは、転成とはまったく関係ないことが分かります。
☞超重要絶対暗記 《コロケーション》
⦿コロケーション:連語関係とも言うもので、共起しやすい語と語の関係のこと。たとえば、文法的には間違ってなくても「傘を使う」という言い方はしません。「傘を差す」と言います。この場合、「傘」は「差す」と共起するといい、「傘」と「差す」の関係をコロケーションと言います。
☞超重要絶対暗記 《ダイクシス》
⦿ダイクシス:言葉の意味が発話の状況に大きく依存する表現のこと。「今日」「明日」「右」「左」など。
問4 「キーワード法」の方法として適当なものを選ぶ問題
「キーワード法」は赤本には載っていません。文脈から推測することも難しいです。直感で選ぶと「連想」と「結びつけて覚える」という選択肢2を選んでしまいそうですが、正解は1だそうです。
出来なかった人は、キーワード法は「音声的に類似した母語の言葉のイメージを関連づけて覚える」方法ということを覚えてしまいましょう。
問5 読解の授業における新出語の扱い方として不適当なものを選ぶ問題
この問題は、選択肢をひとつずつ吟味していけば解けるのではないでしょうか。
1 内容理解に重要で意味の推測が難しい語は、学習者の認知的負荷が大きいため、事前に指導して学習者の認知的負荷を軽減する必要があるのでしょう。よって、選択肢1の内容は適当と判断できます。
2 意味を推測しやすい語であれば、学習者の認知的に負荷は低いと考えられます。予測や推測をしながら読むことは、トップダウンの言語処理方法でもあり重要なことです。よって、選択肢2の内容は適当と判断できます。
3 内容理解に重要でなく、覚える必要のない語を事前に説明することは、学習者の認知的負荷を大きくするだけなので、「省く」とする選択肢3の内容は適当と判断できます。
4 内容理解に重要でない語を事前に説明することは、学習者の読解における認知的負荷を大きくするだけです。よって、選択肢4の内容は不適当と判断できます。
したがって、正解は4になります。
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