問1 「指示詞からの転用によってできたもの」の例として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:〚代名詞〛P32~
人を指し示すときに使うのが人称詞(人称代名詞)で、もの・場所・方角を指し示すときに使うのが指示詞(指示代名詞)です。
問われていることは、人称詞のなかで、もともとはもの・場所・方角を指し示すときに使われていたものはどれかということですが、この問題は知っていないと正解を選ぶことが難しい問題ですね。
正解は1で、「あなた」は、もともと「彼方」と書き、離れた場所などを表わす言葉だったようです。
☞超重要絶対暗記 《人称代名詞と指示代名詞》
⦿人称代名詞:人物を指し示す名詞。指し示す相手によって、一人称[自称](「わたし」、「わたくし」、「オレ」、「僕」など)、二人称[対称](「あなた」、「きみ」、「おまえ」、「あんた」など)、三人称[他称](「彼」、「彼女」、「あいつ」、「やつ」など)に分類される。
⦿指示代名詞:事物、場所、方角などを指し示す名詞。「こそあど」や「指示詞」とも呼ばれる。名詞的用法(「これ」、「ここ」など)、連体詞的用法(「この」、「こんな」など)、副詞的用法(「こう」など)に分類される。
問2 「敬意が低減(逓減)した人称詞」に関する記述として適当なものを選ぶ問題
1 「お前」は今でこそ相手を罵るときに用いられていますが、かつては「御前」であり相手に敬うときに用いられていた言葉でした。「貴様」も同様です。よって、選択肢1は「敬意が低減した人称詞」に関する記述として適当と言えます。
2 かつては宮中の女房達の自称詞「てまえ」は自分をへりくだった言い方(謙譲語)として使われていました。それが、現在では対等または目下の相手への対称詞(「てめえ」)として用いられるようになったということは、指し示す相手(対象)が変わったのであり、敬意としては低減していません(変わっていません)。よって、選択肢2は「敬意が低減した人称詞」に関する記述として適当とは言えません。
3 「わたくし」が「かつては自分を尊大に表現する自称詞だった」のかどうは分かりませんが、現在、「へりくだって話す自称詞として」用いられているわけではありません。へりくだった自称詞は、主にビジネスにおける書き言葉として使われることがある、下名や小生、小職、弊職などでしょうか。よって、選択肢3は「敬意が低減した人称詞」に関する記述として適当とは言えません。
4 「俺様」が、かつてどういう使われ方をされていたのかは分かりかねますが、「現在ではへりくだって話す自称詞として用いられる・・・」という記述が間違いであることは明白です。よって、選択肢3は「敬意が低減した人称詞」に関する記述として適当とは言えません。
したがって、正解は1になります。
問3 主語が一人称に制限される例として適当なものを選ぶ問題
📖赤本(第4版)関連箇所:P29~「感情形容詞と属性形容詞」
この問題は、それぞれの選択肢の文に、二人称もしくは三人称の主語を付け加えて確認してみればいいと思います。
1 「{彼女は}怒りのあまり、彼を殴っただろう」。文として問題ないと思います。主語が一人称に制限される例とは言えません。
2 「{あなたは/彼女は}寝不足で、きっと頭が痛いはずだ」。文として問題ないと思います。主語が一人称に制限される例とは言えません。
3 「{あなたは/彼女は}昨日食べたすき焼き、また食べたい」。文として違和感があります。赤本P29-30にある通り、「楽しい」「悲しい」「不安だ」「心配だ」「楽だ」など心の内面を表わす感情形容詞や、「~たい」「~てほしい」などの述語は一人称の表現に限られます。よって、選択肢3が、主語が一人称に制限される例として適当と言えます。
4 「{彼女は}来年、東京の大学を受験するらしい」。文として問題ないと思います。主語が一人称に制限される例とは言えません。
したがって、正解は3になります。
☞超重要絶対暗記 《主語が一人称に制限される述語》
⦿「楽しい」「悲しい」「不安だ」「心配だ」「楽だ」など心の内面を表わす感情形容詞や、「~たい」「~てほしい」などの述語は一人称の表現に限られる。
問4 「親族間の人称詞には、人間関係を反映した一般的な用法がある」に関する記述として適当なものを選ぶ問題
親族名称とは、「父」「母」「兄」「姉」「弟」「妹」など。
「お父さん」「お母さん」「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」などは親族名称ではなく、親族呼称というらしいです。
たとえば磯野かつおの立場で考えてみましょう。
1 かつおにとって年上の親族は、父の波平、母のふね、姉のサザエなどです。父の波平や母のふねに対して自分のことを「息子」とか「長男」というのは一般的ではありません。姉のサザエに対して自分のことを「弟」というのも一般的ではありません。かつおはわかめちゃんの「兄」でもありますが、波平、ふね、サザエに対して、自分のこと「兄」というのも一般的ではありません。よって、選択肢1は適当な記述とは言えません。
2 1と同様にかつおの立場で考えてみると、年上の親族である父の波平や母のふね、姉のサザエに対して、「あなた」「君」という言い方は一般的ではありません。よって、選択肢2は適当な記述とは言えません。
3 かつおにとって年下の親族のひとりは妹のわかめちゃんです。わかめちゃんに対して自分のことを「かつお」と言うのはあまり一般的ではありません。同様に、波平はふねやサザエに対して自分のことを「波平」とは言わないでしょう。
もちろん、親族間でそういう呼び方をしている家庭もあるかもしれませんが、日本においては、年下の親族に対して自分のことを名前で言うことは一般的とは言えません。よって、選択肢3は適当な記述とは言えません。
4 波平がかつおに対して「お前」と言ったり、ふねがサザエに対して「あなた」と言ったり、実際の漫画やアニメでそういっているかどうかは分かりませんが、親が子どもに「おまえ」と言ったり、兄が弟に「おまえ」と言うことは一般的と言えます。よって、選択肢4が最も適当な記述と言えます。
したがって、正解は4になります。
問5 「人称詞の指導」の際の留意点として不適当なものを選ぶ問題
1 「あなた」は親しい間柄の人には他人行儀に聞こえるし、目上の人には失礼になる場合があるので、「さん」付けで呼ぶように指導することが適当と言えます。
2 「私」は男でも女でも共通して使う言葉ですし、特にビジネスの場においては、「僕」や「俺」は相応しくなく、「私」を使うべきです。よって、選択肢2の内容は不適当と言えます。
3 自称詞としての「自分」は、上下関係や規律が厳しい組織(軍隊など)の響きがあります。[自分は、〇〇であります!]みたいに。また、地域によっては、「自分」を対称詞として使うこともあるので、「自分」と「私」の意味・用法に注意するという選択肢3の内容は適当と言えます。
4 社長や上司・先生や先輩に「彼」「彼女」を使うのは失礼に当たるので、選択肢4の内容は適当と言えます。
したがって、正解は2になります。
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