2020年6月7日日曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題1(6)~(10)の解説

(6)転成名詞の意味に関する仲間外れ問題


「転成名詞」については赤本には記載がなく、初めて聞く言葉かもしれませんが、慌てることはありません。なぜならば、この問題は「名詞の意味」の観点から仲間外れを探せばいいからです。「転成名詞」は何かを知らなくても、それぞれの選択肢の言葉の意味を考えれば、正解にたどり着くことができます。


1 「かばん持ち」は、「かばんを持つ人」のこと。
2 「所帯持ち」は、「所帯を持っている人」のこと。
3 「金持ち」は、「金を持っている人」のこと。
4 「心持ち」は、「心の持ち方」のこと。「心を持っている人」のことではありません。
5 「力持ち」は、「力を持っている(力がある)人」のこと。


したがって、正解は4になります。


ちなみに、転成名詞とは、もともと動詞や形容詞として使われていた語が、転じて名詞に成った語のことを言うそうです。
例)話す→話、笑う→笑い、釣る→釣り、攻める→攻め、守る→守り、泳ぐ→泳ぎ、など。




(7)デ格の意味に関する仲間外れ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P48


格助詞の「で」が表わす主なものは次の4つです。


☞超重要絶対暗記 《デ格の用法》
場所   :学校勉強する。
手段・方法:電車通勤する。 
原因・理由:風邪会社を休む。
主体   :警察調査する。(「調査する」の主体が「警察」)


1 「はしか」は、「休む」ための原因・理由
2 「メール」は、「送る」ための手段・方法
3 「日本語」は、「話す」ための手段・方法
4 「遠近法」は、「描く」ための手段・方法
5 「新幹線」は、「行く」ための手段・方法


したがって、正解は1になります。 




(8)補助動詞に関する仲間外れ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P78「表1-1-32 日本語の動詞分類」


補助動詞とは、動詞のテ形に接続し、本来の意味を失い補助的な意味で用いられる動詞のことです。補助動詞に対して、その動詞本来の意味で用いられる動詞を本動詞と言います。

本動詞    :問題の解答を見る
補助動詞:問題を解いてみる ・・・「(目で)見る」という動詞本来の意味が失われ、
                      補助的な意味で使われている。


1 「みる」は本来の意味を失い、補助的な意味で使われている。
2 「ゴミを持って家に帰る」という意味で、「かえる」は本来の意味が失われていない。
3 「ある」は本来の意味を失い、補助的な意味で使われている。
4 「しまう」は本来の意味を失い、補助的な意味で使われている。
5 「くる」は本来の意味を失い、補助的な意味で使われている。


したがって、正解は2になります。


選択肢3の「ある」は本来の意味を失っていないような気もしますが、大修館書店『明鏡 国語辞典』(第二版)には以下のように記載されています。

🉂〘補動〙①《「~て(で)──」の形で、他動詞の連用形を受けて》変化した動作の結果が現在まで維持されている意を表す。「壁に絵がかけて──」「机に本が置いて──」「荷物が乱雑に積んで──」



つまり、選択肢3の「ある」は、存在を表す本来の意味が失われ、変化した動作の結果が現在まで維持されていることを表す補助的な意味で使われていると理解することができます。


☞超重要絶対暗記 《補助動詞》
⦿補助動詞とは、動詞のテ形に接続し、本来の意味を失い補助的な意味で用いられる動詞のこと
 (例)問題を解いてみる・・・・この「みる」は、「(目で)見る」という動詞本来の意味が失われ、補助的な意味で使われている。




(9)指定文と措定文に関する仲間外れ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P38,39


指定文(していぶん)とは、主語と述語名詞が同じものであることを表わす文のことを言います。主語と述語名詞がイコールの関係(主語=述語名詞)になります。

措定文(そていぶん)とは、述語名詞が主語の属性・性質などを表わす文のことを言います。主語が述語名詞に含まれる関係(主語<述語名詞)になります。


指定文:メキシコの首都はメキシコシティだ。(メキシコの首都=メキシコシティ)
措定文:ミル・マスカラスはメキシコ人だ。(ミル・マスカラス<メキシコ人)


簡単に判別する方法としては、主語と述語名詞を入れ替えてみるという方法があります。指定文は主語=述語名詞なので、主語と述語名詞を入れ替えても意味が通じますが、措定文は主語と述語名詞がイコールではないため、主語と述語名詞を入れ替えると意味が通じない文になってしまいます。


・メキシコシティはメキシコの首都だ。(指定文は主語と述語名詞の入れ替えが可能)
・メキシコ人はミル・マスカラスだ。(措定文は主語と述語名詞の入れ替えが不可能)


1 「男の人」は「私の先生」の属性・性質を表わすもので、「私の先生」<「男の人」の関係になるので、措定文。
2 「医師」は「山田さん」の属性・性質を表わすもので、「山田さん」<「医師」の関係になるので、措定文。
3 「冷淡」は「あの人」の属性・性質を表わすもので、「あの人」<「冷淡(な人)」の関係になるので、措定文。
4 「有能」は「議長」の属性・性質を表わすのもので、「議長」<「有能(な人)」の関係になるので、措定文。
5 「院長」と「あの人」はイコールの関係で、主語と述語動詞を入れ替えて、「あの人は院長だ」と言い換えることができるので、指定文。


したがって、正解は5になります。


☞超重要絶対暗記 《指定文と措定文》

⦿指定文:主語と述語名詞が同じものであることを表わす文のこと。主語=述語名詞。主語と述語名詞の入れ替えが可能。
⦿措定文:述語名詞が主語の属性・性質などを表わす文のこと。主語<述語名詞。主語と述語名詞を入れ替えると意味が通じなくなる。





(10)直接受身文における動作主の表示形式に関する仲間外れ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P62
 

直接受身文とは、能動文の対象(目的語)が主語となる受身文のことで、対象(目的語)が動作主から直接影響を受けることから、直接受身文と呼ばれます。


能動文:高木さんは西片をからかう。
受身文:西片は高木さんにからかわれる。(直接受身文)


直接受身文を作るとき、動作主は「高木さん」から「高木さん」となるように、助詞が「に」に変化するのが普通ですが、動詞によっては「によって」や「から」が使われるものもあります。

どのような動詞に「~によって」や「~から」が使われるのかは、赤本P62※52を読んで確認しておきましょう。


各選択肢の動詞を、具体的な例文に当てはめて考えてみると、

1 トヨタ生産方式は、大野耐一(△に/〇によって/✕から)生み出された。
2 東大寺は、聖武天皇(△に/〇によって/✕から)建てられた。
3 シャープペンシルは、日本人(△に/〇によって/✕から)作られた。
4 娘は、はたを織る姿をおじいさん(〇に/✕によって/✕から)見られた。
5 『ゲルニカ』は、ピカソ(△に/〇によって/✕から)描かれた。


1,2,3,5は動作主を「によって」で表示できますが、4は「によって」を用いることができません。
したがって、正解は4になります。

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