2020年6月16日火曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題8の解説

問1 「コミュニケーション・スタイルの特徴や傾向」に関して、日本的な特徴として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚コミュニケーションスタイル〛P316
  

コミュニケーションスタイルとは(赤本P316からの抜粋)           
相手に何かを伝えようとするとき、お互いの了解事項はできるだけ言語化しないようにするやり方と、伝えるべき内容を正確に言語化しようとするやり方がある。これをコミュニケーションスタイルと呼ぶ。

「お互いの了解事項はできるだけ言語化しないようにするやり方」を高コンテクスト(高文脈)・コミュニケーションといい、
「伝えるべき内容を正確に言語化しようとするやり方」を低コンテクスト(低文脈)・コミュニケーションといいます。

日本人のコミュニケーションスタイルは、よく “察する文化”と言われるように典型的な高コンテクスト文化であると言えます。




1 選択肢1の内容は高コンテクスト/低コンテクストの話ではありませんが、日本人は、選択肢1の内容とはまったく逆で、最初に理由などを説明し、意見や結論は最後に持ってくるスタイルです。

2 たとえば手紙やメールなどを考えてみても、日本人は選択肢2の内容とはまったく逆で、時候のあいさつであったり、決まり切った言い回しなど前段が長く、なかなか本題に入らないのが特徴と言えます。

3 「婉曲的に話す螺旋的なスタイル」とは、いきなり核心を突かずに、遠いところから徐々に核心部に近づけていく様子を表わしているものだと考えられます。よって日本人のコミュニケーションスタイルとして適当な選択肢だと言えるでしょう。

4 敬語などを考えてみれば、「年齢差や社会的立場の違いを感じさせない」という内容が適当ではないことが分かります。


したがって、正解は3になります。


☞超重要絶対暗記 《コミュニケーションスタイル》
⦿高コンテクスト(高文脈)・コミュニケーション:相手との間で了解事項が多い社会の中でのコミュニケーションスタイル。お互いが分かっていることをいちいち言語化することを好まないスタイル。

⦿低コンテクスト(低文脈)・コミュニケーション:相手との間で了解事項が少ない社会の中でのコミュニケーションスタイル。ほとんどのメッセージをはっきり言葉で伝えないと相手に正確に伝わらないため、はっきり言うスタイル。




問2 「バーバル・コミュニケーション」に分類されるものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚ノンバーバル・コミュニケーション〛P317、〚対人距離〛P318、〚パラ言語〛P319
 

赤本には「ノンバーバル・コミュニケーション」は出てきますが、「バーバル・コミュニケーション」は索引を見ても載っていません。しかし、ノンバーバル・コミュニケーションが「非言語的伝達手段」となっているので、ノンバーバル・コミュニケーションが「言語的伝達手段」であることは理解できると思います。


つまり、言語を使った伝達方法を選べばいいわけなので、正解は1になります。


2 パラ言語は、声の高さ、大きさ、出し方などといった言語の周辺要素のことをいいます。たとえば、「おはよう」と言うのでも、明るく元気に「おはよう」というのと、低く沈んだ声で「おはよう」と言うのでは、言語的にはどちらも「おはよう」で変わりませんが、相手に与える印象は全く違うものになるでしょう。このようにパラ言語は、言語そのものではなく、言語の周辺要素(言語外)のことなので、ノンバーバル・コミュニケーション(非言語的伝達手段)に分類されます。

3 ジェスチャーは、身振り手振りなどの身体の動きなので、ノンバーバル・コミュニケーションに分類されます。

4 相手との距離も、ノンバーバル・コミュニケーションに分類されます。


☞超重要絶対暗記 《ノンバ―バル・コミュニケーション》
⦿ノンバーバル・コミュニケーション:言語を使用しないコミュニケーション。身体動作(身振り、手振り、表情、視線など)や対人距離、パラ言語など。

☞超重要絶対暗記 《パラ言語》
⦿パラ言:声の強さ、高さ、大きさ、スピードなどの非言語的な要素。ため息も含まれる。




問3 「エポケー」の説明として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚エポケー(判断保留)〛P251


エポケーとは(赤本P251からの抜粋)
エポケー:自分が理解できないことに接したときに一時的に判断を停止、留保すること。

エポケーは判断留保です。これも超重要ワードなので絶対暗記しておきましょう。


正解は2です。


💡解法のポイント
⦿もし、「エポケー」を知らなかった場合に、文脈から読み解くことができるかというと、価値観の違う異文化コミュニケーションについてということで、選択肢1の「自分の過去の体験や価値観」が参考になることはないだろうし、選択肢3の「相手の立場や物の見方で捉えること」も難しいことも分かると思います。よって、「エポケー」を知らなかったとしても、選択肢2か4の2択にまでは絞れるのではないかと思います。


ちなみに、自分が理解できないことに接し、どう対応していいか分からくなって混乱している状態をアノミーといいます。つまり、“エポケーでアノミーを回避する”ということです。セットで覚えておくといいと思います。


☞超重要絶対暗記 《エポケー》
⦿エポケー:判断保留。自分が理解できないことに接したときに一時的に判断を停止、留保すること。

☞超重要絶対暗記 《アノミー》
⦿アノミー:これまでとは全く価値観の違う異文化に接したときに、どう対応してよいか分からず混乱状態に陥ること。




問4 「アサーティブ・コミュニケーション」を行ううえで重要なこととして適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P250「1.2 自己開示」


アサーティブ・コミュニケーションについて赤本には以下のような記述があります(赤本P250からの抜粋)。
異文化に適応するためには、(中略)認知的にも感情的にも異文化に対して共感(エンパシー)を持つことが大切である。(中略)これは、自分の権利を主張すると同時に、相手の権利も尊重するという相互尊重のコミュニケーション(アサーティブ・コミュニケーション)につながる。

つまり、アサーティブ・コミュニケーションとは、日本語では相互尊重のコミュニケーションというもので、自分の権利を主張すると同時に、相手の権利も尊重するという考え方・姿勢のことなので、


正解は1になります。


💡解法のポイント
⦿この問題についても、「アサーティブ・コミュニケーション」という用語を知らなくても、ある程度は正解を絞り込むことができるものと思います。


問題文は、「互いの文化を認め合うことが重要で」そのためには「エポケー」と、さらに「アサーティブ・コミュニケーション」が必要という文脈です。

つまり、「アサーティブ・コミュニケーション」を行ううで重要なことは「お互いの文化を認め合うこと」に他なりません。「お互いの文化を認め合うこと」は、自分は相手の文化を認めるし、相手には自分の文化を認めてもらうことです。

「相手の意見に合わせる」(選択肢2)や「相手との意見の相違を避ける」、「相手が察してくれるのを待つ」のではありません。相手の文化を認めたうえで、相手には自分の文化を認めてもらうことが重要なわけです。


☞超重要絶対暗記 《アサーティブ・コミュニケーション》
⦿アサーティブ・コミュニケーション:自分の権利を主張すると同時に、相手の権利も尊重するという相互尊重のコミュニケーション。




問5 「カルチャー・アシミレーター」の説明として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P252


カルチャー・アシミレーターとは(赤本P252からの抜粋)
異文化コミュニケーションで生じた問題のエピソードを読み、その原因となるものを選択肢の中から選び、解答を読むという手法である。

したがって、正解は4になります。


この問題は、カルチャー・アシミレーターを知っていなければ、正解することは難しい問題だと思います。

まず選択肢1は、身振り、手振りのジェスチャーをしたところで、互いの文化を理解することも認め合うこともできないと思いますので、まっ先に消去できると思います。

選択肢2はバファバファの説明だと思われるので、バファバファを知っていれば選択肢を2つにまで絞ることはできるでしょう。


いずれにしても、それだけ「カルチャー・アシミレーター」は重要ということなのでしょう。


☞超重要絶対暗記 《カルチャー・アシミレーター》
⦿カルチャー・アシミレーター:異文化トレーニングのひとつの手法。ケース・スタディ。異文化コミュニケーションで生じた問題(誤解や摩擦)のエピソードを読み、その原因を考え選択肢の中から選びぶ手法。


☞超重要絶対暗記 《バファバファ》
⦿バファバファ:異文化体験ゲームのひとつ。参加者を2つのグループに分け、お互いに違った習慣や価値観を与える。その後、互いに交流し異文化との交流を疑似体験するもの。

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