2020年6月19日金曜日

2019年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題11の解説

問1 「職業による集団語」の例として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:P340


「職業による集団語」は要するに、「業界用語」とか「(その職業における)専門用語」というものですね。


1 「チャレンジする」は、ある特定の業界で使われている言葉ではなく、一般的に使われている外来語です。

2 「言い間違える」を意味する「噛む」は、誰もが使う一般的な言葉になりつつありますが、お笑い芸人などが使う集団語です。松本人志によって広められたとする説もあるようです。ちなみに『明鏡国語辞典(第二版)』では「俗語」となっています。

3 「衣紋掛け(えもんかけ)」は、最近ではあまり使われない言葉ですが、ハンガー(外来語)の和語です。ある特定の職業や業界で使われる言葉ではありません。

4 「ご不浄」は「便所」の婉曲語です。「お手洗い」「化粧室」などと同様です。ある特定の職業や業界で使われている言葉ではありません。


したがって、正解は2になります。




問2 「若者言葉」に関する記述として不適当なものを選ぶ問題


1 問題文に「話者の年齢を反映した言葉として若者言葉・・・」とある通り、学生であっても社会人であっても、若い人が使っている俗語やスラングはすべて若者言葉になります。

2 「リア充」とか「メンヘラ」とか。「パリピ」などもそうかもしれません。もっと他にいい例があることと思いますが、SNS上で使用される言葉が若者の口頭表現に取り入れられることは少なくありません。

3 私も含め多くの受験者は戦後生まれだと思うので、「アルバイト」が戦前の学生言葉だったのかどうか分かる人は少ないことと思います。この選択肢は△にしておいて、選択肢4を見て判断しましょう。

4 正解は4ですね。「T」を「テー」と発音する傾向があるのは若者ではなく年配の方です。年配の方が「ディズニーランド」を「デズニーランド」と発音するのも同様です。


したがって、正解は4です。


なぜ、年配の方の発音にはこのような傾向があるのか、インターネットで調べてみると以下のことが分かりました。

昔の人が「T」を「テー」、「D」を「デー」と発音するのは、もともと日本語には「ティー」「ディー」の発音がなかったからなんだとか。文明開化などによって外国の文化が入ってくることで、「ティー」「ディー」といった発音も日本語に取り入れられていったようです。


たとえば、「team」は日本語では「チーム」ですが、そのうち、“発音を英語に近づけよう”などといった活動が起こって「これからは「ティーム」と発音することにしよう」となれば、数十年後には、きっと私たちが「昔の人はなんで「チーム」って発音するの?」と言われるようになることでしょう。


☞超重要絶対暗記 《若者言葉》
⦿若者言葉:若者の間で使用されるスラングや俗語。一時的に流行ってすぐに消えてしまうものも、他の年齢層や世代にも浸透し一般的な言葉になっていくものもある。




問3  「ネオ方言」の説明として適当なものを選ぶ問題


赤本には「ネオ方言」に関する記載がありません。このような用語を問う問題は、問題文の文脈から解けるような形になっています。

ですので、知らない用語が問われたら落胆せずにチャンスと思いましょう。他の受験者が動揺して浮足立っているところを確実に得点していくことで合格までの距離はグッと縮めることができるのです。


💡解法のポイント

⦿問題文を見ると、「明治時代以降、伝統的な地域方言は衰退したが、近年はネオ方言が見られるようになった」。つまり、「伝統的な方言はなくなって、新しい別の方言が発生した」ということですから、

そのような説明になっているのは、「~生まれた言葉」としている選択肢の3だけです。他の選択肢の内容は、どれも「最近新しく発生した」という要素ゼロです。


したがって、正解は3になります。


「ネオ方言」という用語を知らなくても、問題文の読解力で解ける問題です。

ちなみに、ネオ方言とは、選択肢3の説明の通り、共通語と地域方言が混じり合って出来た言葉です。

(参考)方言コスプレ、新方言、ネオ方言… 平成になって復権した理由とは? | withnews(ウィズニュース) | 気になる話題やネタをフカボリ取材(ウニュ)


☞超重要絶対暗記 《ネオ方言》
⦿ネオ方言:共通語と地方方言が混じり合って出来た言葉。




 問4 「言葉の男女差が年齢層によって違う」ということに関する記述として適当なものを選ぶ問題


常識的に考えれば比較的イージーな問題だと思います。


1 女性の「~わ」「~わよ」という言い方は、いまでは昔ほど使用しなくなっていると思います。よって、20代女性は50代女性ほと使用しないという選択肢1の内容は適当だと考えられます。

2 年代にかかわらず、男性で「降るわよ」という言い方はしないと思います。オネエ系は別ですが。

3 年代にかかわらず、女性で「雨だぜ」っていう人はあんまりいないと思います。

4 ロックな感じのオヤジですね、永ちゃん的な。「雨だぜ」という言い方は、50代男性よりも20代男性の方が多いのではないでしょうか。


したがって、正解は1になります。




問5 「役割語」に関する記述として適当なものを選ぶ問題

📖赤本(第4版)関連箇所:〚役割語〛P341上段欄外


役割語とは、特定の人物像を思い起こさせる言語表現のことです。

たとえば「拙者は・・・・」や「・・・・でござる」なんて台詞は侍を思い起こさせるし、「わしは・・・・」や「・・・・じゃ」は老人とか仙人、「・・・・ざます」はお金持ちを想起させます。これらの言語表現が役割語になります。


1 役割語は、主人公でなくとも用いられます。

2 逆です。ステレオタイプを言語表現にしたようなものです。

3 その登場人物のキャラクターをイメージしやすく、分かりやすくするために用いられるものなので、選択肢3の内容は適当と言えます。

4 架空の人物にこそ、イメージしやすくするため、役割語は有効な手段だと思います。


したがって、正解は3になります。


☞超重要絶対暗記 《役割語》
⦿役割語:特定の人物像を思い起こさせるような言語表現。たとえば「わしは・・・・」や「・・・・じゃ」は老人や仙人、「・・・・でありんす」は江戸時代の遊女を想起させる役割語といえる。

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